ツナガレ介護福祉ケア

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韓国の児童養護施設とは?「ママがいない乳児たち」(取材リポート)~ツナガレケア

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韓国での出会い

この子たちの右手は、どんな未来を掴むのだろうか――。韓国で出会った2人の乳児。その光景は今も心から離れない。今回は韓国の児童福祉施設を訪れたときの報告をしたい。

 

 

韓国の児童福祉への取組み

北海道よりも少し広い面積の韓国には、約5000万人の人々が暮らしている。その中で貧困、虐待、未婚の母の出産、父母の離婚等により国の保護が必要な児童は、毎年約9000人水準で持続的に発生している。

韓国では2005年末、全国282か所の児童福祉施設に2万人近くの児童が生活していた。最近では、施設保護を中心とする政策から脱皮し「家庭委託」「国内養子縁組」「共同生活家庭」などの家庭形態の児童保護政策を推進している。

韓国の児童養護施設へ

介護福祉の交流で訪れた韓国。日本と同じように全国民に加入が義務付けられている国民健康保険制度があり共通点は多いが、福祉の分野はどうなのだろう。バスの中でぼんやり、そんなことを考えていた。

重そうな雲が広がる田舎町。ドラマに登場するような児童養護施設に案内されると、室内は清潔感にあふれて、和やかな雰囲気に包まれていた。

大きな家族

およそ20名のスタッフが働く養護施設では、これまでに600名以上が巣立っている。食堂には大きなテーブルが置かれ、子どもの笑い声があちこちから聞こえてくる。園長先生とともに子供部屋を見学させてもらった。そこでは若い女性職員と遊ぶ、子ども達の姿があった。それはまるで大きな家族のようだった。

乳児との出会い

そんな時、出会ったのが歩行器に乗った2人の乳児だった。普通の子どもと変わらない笑顔。しかし小さな右手には布のようなものが巻かれていた。僕がスタッフの若い女性に聞くと「おしゃぶりをやめさせるためにミトンをしている」と教えてくれた。

子供を捨てた母親

なぜ僕は違和感を覚えたのだろう。施設から戻っても、そのことばかり考えていた。そして園長先生の言葉を思い出した。

「韓国では施設を訪ねてくるママは少ないんですよ」

若くして子どもを預けた母親は、再婚すると新しい家族になる。家族をなにより大切にする韓国では、別れた夫(昔の家族)について隠す傾向が強いという。そして前の夫との間にできた子どもに会うことに負い目を感じて施設を訪ねる回数は減っていく。

新しい家族と子ども

それも厳しい現実だ。身勝手な大人の犠牲になる子どもは少なくない。自分の利益や都合だけを考えて責任を放棄する親もいる。社会はこうした子どもを救うために様々な支援策を講じている。母親の愛情さえ知らずにおしゃぶりを続けている乳児がいることを、どれだけの人が知っているのだろう。

幸せをつかむ手

小さな幼児の右手。その手からミトンが外されたとき、自由になった手は何を求めるのだろう。当たり前じゃない現実、当たり前じゃない家族。日本だけでなく海外にもそうした子供たちがいる。それでも彼らの手は、幸せをつかむためにある。

 

【引用文献】
世界の厚生労働(2007),厚生労働省