介護福祉オンライン

高齢者・障がい者、子育ての現場から、介護福祉の楽しさや難しさ、問題点などを伝えるWebマガジンです。

おすすめ!重度障がい者の「歯磨き介助」上手な口腔ケアの方法

 

f:id:mamoruyo:20200711114827j:plain

 

パールクチュール

 

歯磨きがむずかしい

 

重度障がい者の訪問で大きな壁が立ちはだかりました。

 

これまで利用者さんの介護にはベテランスタッフが同行してくれました。しかし、とうとう独り立ちすることに。

 

手順は頭に入っていますがスムーズに行えるのか不安が襲ってきます。サービス時間数は重度訪問介護なので4時間と長めです。

 

最初の1時間30分くらいは食事介助です。筋ジストロフィーの利用者さんなので食べるのには時間がかかります。

 

ご家族の手作りの料理を温めて、食べやすい大きさにして口に運びます。

 

筋ジストロフィーと胃ろう

 

筋ジストロフィーは遺伝子異常により筋肉が破壊され、筋肉量が減少して筋力が衰える疾患です。

 

タンパク質がどんどん減少して、脂肪組織が増える傾向があります。

 

食事を取ることや飲み込みが難しい利用者に、食欲を失わせずに食事量を維持し、バランスよく食べてもらうにはそれなりのテクニックが必要です。

 

利用者には「胃ろう」といって、チューブで胃に直接栄養を送り込んでいる方もいます。

 

しかし美味しい食事は人生の楽しみでもあり、食べる行為は健康上も重要です。できる限り、口から食事をした方が良いのです。

 

担当するのは、お喋り上手な30代のマコトさん(仮名)です。

 

マコトさんはベッドで過ごすことが多く、手や足も不自由ですが頭はクレバーです。

 

政治や経済、映画などに詳しく、何より正義感の強い男性です。

 

マコトさんの気遣いもあり、食事はコミュニケーションをとりながらスムーズに終わりました。ところが次の「口腔ケア」が大変でした。

 

歯磨きひたすら40分

 

結論からいえば、マコトさんの歯磨き(口腔ケア)に40分かかりました。

 

重度訪問介護「あるある」だとは後になって知りましたが、当時は正直ショックでした。

 

歯磨きに40分……みなさんは経験あるでしょうか?

 

身も心もヘトヘトになります。

 

重度障がい者にとって歯磨き(口腔ケア)は重要です。

 

健常者よりも気を遣っています。マコトさんの場合でいえば、筋ジストロフィーは食べ物をかんだり飲み込んだりする力が落ちてきます。

 

ちなみに飲み込んだりすることを「嚥下」(えんげ)といいます。

 

この嚥下機能が落ちてくると食べたものや唾液が誤って気道に入り、誤嚥(ごえん)や窒息といったトラブルになります。

 

一般的に障害のある方は上肢の機能低下、人工呼吸器装着などで十分な歯磨きが出来ないため、口腔衛生を保つことが難しい場合が多くあります。

 

それだけにケアワーカーのスキルが試されるのです。

 

 

 

パールクチュール

 

 障害者「口腔ケア」の仕方

 

マコトさんの歯磨きでは歯ブラシ2本と、スポンジブラシを用意します。

 

そしてコップは2つ用意します。ひとつはモンダミンを入れた水。

 

もうひとつは洗浄用です。同時に歯磨き粉と保湿ジェルも用意します。

 

この時、大事なのは痰吸引器の準備です。

 

吸引器を利用して口腔内の唾液をだしていきます。

 

気管内にたまった痰は最近の培地になったり、窒息の原因になります。

 

自力で痰を出せない場合は、吸引を行います。吸引器は高いのですがレンタルもあります。

 

 吸引器は高いのですが、福祉補助制度が利用できます

 

価格は5万円台から20万円台と色々な種類があるので性能を確認してから購入しましょう。

 

ちなみに福祉補助金額は6万~7万円は出るとおもいますが、詳細は各市町村の福祉事務所に相談してください。あると便利です。

 

 

 

研修では教えてくれない「リアル歯磨き」

 

口腔ケアの仕方は初任者研修でもサラッとしか教えてくれません。

 

基本は鉛筆持ちで歯ブラシを持ちます。強く握ると磨く力が強くなるため軽く持つのがポイントです。

 

歯ブラシの当て方は、歯と歯肉の境目に毛先を当てて細かく動かします。

 

口の中の感覚が敏感な場合は柔らかい歯ブラシで優しく磨きます。

 

さて、ここからは研修では教えてくれない「リアルな口腔ケア」のやりとりです。

 

マコトさんは丁寧に話す方ですが、介助者の歯磨きが上手くいかないとだんだんと苛立つ気分を抑えられず口調も激しくなってきます。

 

 

マコト「 ゆっくりブラシを当ててください」

オレ「こうですか」

マコト「もっと上下に小刻みに磨いてくれますか」

オレ「こう?」

マコト「ちがいます。右側の犬歯です」

オレ「犬歯、右?これ??」

マコト「いや。ちがう。ブラシを当てて。ちょっとつよ、い」

 

 

途中、歯磨き粉と唾液のブクブクで声はとぎれとぎれに(やばっ、顔怒ってる)。

 

そんなこんなで口腔ケアの初体験は40分以上の格闘が続きました。

 

立ちっぱなので足はガクガク、腰も痛い。何よりマコトさんに大変な思いをさせてしまいました。反省。

 

 

上手な口腔ケアのやり方

 

今回の敗因はいろいとあります。

 

まず磨く力の加減が分からなかったコト。

 

上手に歯磨きをするには歯ブラシの毛先が広がらない程度の力加減が良いそうです。

 

無我夢中で口腔ケアをしていたから、きっと歯ブラシの毛先は広がりまくり。

 

マコトさんの磨いてほしい場所に届いていなかったのでしょう。反省。

 

その後、ベテランから歯磨きのテクニックを教えてもらいました。

 

まず歯磨きのテクニックとしては歯の外側(前歯部)は、口を閉じさせてみがきます。

 

磨くときは歯と歯肉の境目を中心にブラシを細かく動かすと良いそうです。

 

そして歯ブラシはよくゆすぐ。誤嚥防止のために歯ブラシの水気はよく切るとベスト。

 

歯の裏側は、横から歯ブラシを入れる。

 

グローブもしているので利用者が嫌がらない程度に唇を持ち上げると磨きやすいです。

 

 

歯磨き剤は歯ブラシの毛1~2センチが目安。

 

フッ素が配合されている歯磨き剤をよく利用者さんは使われています。

 

 

 

あれから

 

切ない想い出となった口腔ケア初体験。

 

あれから現在、8か月が過ぎました。

 

ベテランヘルパーさんからは「そのうち慣れますよ!」と励まされてもホントかよ!と落ち込んでいましたが。

 

今は、だいぶ慣れましたww

 

まだまだダメな部分も少なくないのですが、歯磨きの時間は15~20分ほどになりました。

 

マコトさんから注意されるコトも減ってきました。

 

失敗を繰り返して分かったのはコミュニケーションの大切さです。

 

実は日々、歯磨きの正解は変わります。

 

食事の材料によっても、利用者さんの体調によっても口腔ケアの仕方は変わります。

 

磨き残しをなくすことも大切ですが、利用者さんが安心して歯磨きをするためには介助者に遠慮なく自分の希望を伝えられる環境が必要です。

 

時間とともにマコトさんのニーズも分かり、お互いにスムーズな意思疎通ができると口腔ケアも早く終わります。

 

まだまだ勉強が必要ですが、ぜひ重度障がい者のケアをされている方はテクニックもそうですがコミュニケーションをスムーズに行えているかを確認してみると良いかもしれません。

 

本日もありがとうございました。

 

 

パールクチュール