子どもを育てるために、多くの親はお金と労力を惜しみません。
しかし、子どもの学習法は教師や塾任せ、あとは子ども次第という方も少なくありません。
賢く考え、知的に動ける子どもを育てるには、まず親が「効果の高い学習法」を知る必要があります。
今回は海外で評価され、国内の現場でも活用されている学習法を紹介します。
- デューイの問題解決学習とは?
- デューイ、学校と社会の要約
- 問題解決学習をわかりやすくいうと
- 問題解決学習のデメリットとは
- ブルーナーの教育、発見学習とは
- ブルームの「完全習得学習」とは
- 形成的評価の意味
- まとめ
デューイの問題解決学習とは?
経験、実験学校で知られるデューイ。
教育は「経験の意味を増加させ、引き続く経験の進路を方向づける能力を高めるような形での経験の再構成または再組織化」と説きました。
子どもには「経験」が大事だという学習法です。
カンタンに言うとこういう感じでしょうか。
子どもたちは、自分で発見したい、自分で作りたい、自分で表現をしたい、話をしたいといった欲求を持っている。それを、学習の中で活かすことが大事であり、それこそが民主主義の基本である
デューイ、学校と社会の要約
デューイの主な著作は『学校と社会』『民主主義と教育』なのがあります。
何がインパクトがあったのかといえば、これまで教育の中心だった教師や教科書を差し置いて、子どもを主人公にしたことです。
子どもの主体性ですね、これって認めるのはなかなか簡単ではありません。
「学校と社会」の一節を紹介しますね。
今日私たちの教育に到来しつつある変化は、重力の中心の移動に他ならない。
それはコペルニクスによって天体の中心が地球から太陽に移されたときと同様の変革であり革命である。
このたびは子どもが太陽となり、その周囲を教育の様々な装置が回転することになる。
子どもが中心となり、その周りに教育についての装置が組織されることになる。
デューイは今から100年以上前、子どもの経験活動を重視し、遊びと仕事の行われる環境を整備することを幼稚園の任務と主張しました。
そして1896年に実験学校を設立。
彼の教育法を実践するためにシカゴに建てられた「実験学校」は、後に「デューイスクール」と呼ばれるようになりました。
問題解決学習をわかりやすくいうと
問題解決学習は上から教え込むのとは違い、問題解決の過程を経験させる学習法です。
「日常生活の中で出会う具体的な問題」を子どもが自分で捉え、仮説を立て自分たちで能動的に解決しようと取り組みます。
問題解決の過程を通して、法則の理解や科学的思考の方法・能力の習得を図ります。
子どもたちが興味や関心を持って課題に取り組むことができる思考力、想像力、問題解決の力がつくなどの利点があります。
問題解決学習のデメリットとは
問題解決学習は、日常生活から離れた抽象的な内容について学習するときに困るなど、経験主義のカリキュラムでは、やはり限界があります。
また授業を考えるのが大変、授業の進みが遅いといった課題もありました。
デューイは活動的な仕事のさまざまな形態を学校に導入することに関して、留意すべき重大な事柄を挙げています。
これらの形態を通して、学校の全精神が一新されるということである。
学校は、将来営まれるべき、ある可能な生活と抽象的で、迂遠な関わりしかもたない学課を学ぶ場所ではなく、自らを生活と関連させ、子供が指導された生活を通じて学ぶ、子供の住みかになる機会をもつものとなる。
学校は小型のコミュニティ、胚芽的社会になる機会をもつ。これが基本的事実であり、ここから継続的で、秩序ある教育の流れが生ずる。
しかし彼の学習法に衝撃を与えた出来事がありました。
それはアメリカよりも先にソ連が人口衛星を打ち上げたことでした。
「おいおい、問題解決学習って大丈夫なん?この学習法では科学分野で宿敵ソ連に負けちゃうんじゃないの」という危機感が広がりました。
そんな時に登場したのが、ブルーナーの「発見学習」でした。
ブルーナーの教育、発見学習とは
2016年に100歳で亡くなったブルーナーは発見や構造で知られています。
彼は、どのような知的教科であっても方法次第で、発達のどの段階のどの子どもにも教えられるという仮説を提示しました。
学習優位説の考え方に「レディネス」というものがあります。
これは心理学用語のひとつで学習の準備段階のことです。レディネスができていれば学習も成立しやすくなるといいいます。
ブルーナーの「どの子どもにもどの教科を」という学習法は極端に言えば、方法次第で保育園児にも中学生の内容を教えられるということです。
彼はレディネスが形成されるのを待ってから教えるのではなく、学習によって積極的にレディネスを形成していこうとしました。
そこで重要視したのが学問の「構造」です。
つまり学習する事柄の本質、物事の関連性です。
実は勉強ができる子は「構造」を捉えるのがうまいのです。「構造」をうまく捉えることができれば、学習内容を理解することができると仮定しました。
そして構造を学ぶとき教師が教え込むのではなく、「発見」によって子ども自身が学び取ることが大事であるとブルーナーは考えました。
重要な要素は、発見をうながす興奮の感覚であるように思われる。
ここで発見というのは、以前には気づかれなかった諸関係のもつ規則正しさと、諸観念の間の類似性を発見するということであり、その結果、自分の能力に自信をもつにいたるのである。
科学や数学の教育課程を研究してきたいろいろなひとびとは、生徒が独力で発見する力がつくように導いてゆく胸をわくわくさせる順序で教えることによって、学問の基本的構造を生徒に提示することが可能であると主張している。
デューイの「問題解決学習」もブルーナーの「発見学習」も、ただ一方的に理論を教え込むのではなくその過程で発見や感動を伴った経験をさせることを重視しています。
子どもには詰め込みではなく、発見を誘導する先生が大事なのですね。
ブルームの「完全習得学習」とは
ブルーナーと同じ1960年代に活躍した人物にブルームがいます。
同じブルが付くのでちょっとややこしいです。ミキプルーンのブルームという感じで覚えるとよいそうですが、そもそもミキプルーンを知っている方がどれほどいるのか。
余談でした。
さてブルームはアメリカの教育心理学者です。
有名なのは完全習得学習(マスタリー・ラーニング)です。
彼は、これまでの教育が、生徒の3分の1程度の者しか十分な理解ができないということを前提に行われてきたことを批判しました。
そして、個々の生徒の学習状況を把握し、適切な指導を行うために診断的評価、形成的評価、総括的評価を提唱したのです。
これら3つの評価を適切に行い学習条件を整備すれば、多くの子どもにとって完全習得学習は可能であると考えました。
- 診断的評価~学習のはじめでの評価。これから学習する内容について、その準備(前段階)ができているかどうかをチェックし、その後の指導の計画を立てる。
- 形成的評価~学習の過程での評価。学習中の子どもの発言やノートなどから理解度を探ったり、小テストを行ってチェックしたりする。
- 総括的評価~一通りの学習が終わったあとのまとめの評価。単元テストや期末テストなど。
学力の全体的な底上げをするという点ではブルーナーと似ています。
ブルームは学習のそれぞれの過程で子どもたちの理解が十分か何度も「評価」し、指導に活かすことで、95%の子が達成に至ると考えたのです。
形成的評価の意味
ブルームは「形成的評価」を最も重視していました。
形成的評価は学習過程における学習の達成状況を評価するものです。
例えば学習活動において、即時的な評価活動(発言・挙手など)で学習者の理解度を把握することも形成的評価です。
この形成的評価を受けて学習活動と指導方法の軌道修正を行います。授業中の子どもの様子を見取って適切な言葉かけをしたり、授業の進め方を修正したり、さらには補充指導を行ったりします。
そして学習指導と学習評価は次のように行います。
- 指導計画等の作成(Plan)
- 指導計画を踏まえた指導の実施(Do)
- 児童生徒の学習状況や指導計画等の評価(Check)
- 授業内容や指導計画等の改善(Action)
このPDCAサイクルで繰り返し行われることが重要です。
このサイクルを機能させていくことが、指導目標の実現には欠かせません。
指導と評価の一体化を図るためには、評価の場面・方法や時期を工夫するとともに評価結果を学習指導の工夫・改善に生かすことが大切です。
まとめ
現在、我が国の学習には上記で解説した人物の学習法が色濃く反映されています。
その手法を知るだけでも、教師任せ、教科書任せにならずに個々の家庭で賢い子どもたちを育てることが出来ると思います。
大事なのは子供たちに対して一方的に教えるのではなく、ワクワクした発見をしてもらえる環境づくりのようにも思います。
賢人の知恵を活用して知的な行動のできる、未来を担う子供たちを育てたいですね。
本日もありがとうございました。