障がい分野のケアマネ
介護ではケアマネ(ケアマネジャー)という仕事は知られていますが、障害の分野にも同じような存在がいます。
それが「相談支援専門員」です。
相談支援専門員とは障害児・者のコーディネーター的な存在です。
障がい者の意向を聞き、自立した日常生活や社会生活の実現を目指します。
そして中立・公平な立場から、障害福祉サービス等の利用のための支援等を行います。
介護でいえばケアマネジャー的な存在ですが、意外と仕事内容は知られていないように感じます。
そして資格取得に関して、令和2年度から制度が大きく変更したんです。
相談支援専門員の求人とは?
相談支援専門員は、障害者に対して生活全般に係る相談や情報を提供します。さらにサービス利用計画の作成、モニタリング、関係機関との連絡や調整を行います。
相談支援専門員の求人ですが、多くは「指定相談支援事業所」に配置されます。
ちなみに「指定相談支援事業所」には指定特定・指定児童・指定一般相談支援事業所があります。
相談支援専門員は2012年(平成24年)に制定された障害者総合支援法によって新設された仕事です。
相談支援事業を実施する場合は、相談支援専門員を置かなければいけません。
令和2年からの変更点
相談支援専門員の資格を得るためには2つの要件をクリアする必要があります。
その2つが以下です。
①相談支援従事者研修の受講
②実務経験(3年、5年、10年)
このうち、①の「相談支援従事者研修」に関して相談支援の質の向上を目指すために、令和元年度から令和2年度にかけて制度が大きく変更になりました。
東京都の担当者に話を聞くと、国の研修制度改正を踏まえ以下の内容で実施するそうです。
令和2年度以降の初任者研修
従来:年2回6日間:講義/演習
変更:年1回7日間:講義/演習/実習
大きな変更点としては、年2回だった研修が年1回になり日数が1日増えました。さらに実習が加わりました。
個人的には今後、行政側はケアマネジャーのような相談支援専門員を養成していく方向のように思います。ですから関心のある方は資格取得が難しくなる前に受講することをおすすめします。
資格取得の流れ
相談支援専門員の資格を取得するまでの流れを簡単に説明します。
まず実務経験を有する方は、都道府県等の実施する相談支援従事者研修を受講することで相談支援専門員になることができます。
下記が簡単な流れです。
- 都道府県が実施する「相談支援従事者初任者研修」を受講。
- 講義2日と演習5日(演習の間に実習を含む)の合計7日間の全課程を修了
- 修了後、初任者研修修了証の発行
申し込みから修了証の発行まで約7か月かかるそうです。ながっ!
スケジュールを検証
申込みから修了証書交付まで、約 7 か月もかかる相談支援専門員の「相談支援従事者研修」。一体なにをするのでしょう。
東京都の資料をベースに申込みから修了までの流れをまとめてみました。
1.申込み
〇東京都心身障害者福祉センターのホームページから実施案内等をダウンロー ドして申し込む。
2.受講決定
〇受講決定通知と実習準備の詳細が事業所に届く。
〇選考の上、受講決定。不受講の場合はその旨の通知が届く。
〇研修受講に際し、実習協力者から同意を得る準備を始める。
3.研修1日目(講義)
4.研修2日目(講義)
○基礎的理論を学び、ミッションを知る。
5.研修3日目(演習)
6.研修 4 日目(演習)
○相談支援のプロセスを体験する。
7.実習(約1か月)
8.研修5日目(演習)
○地域で実践する。
○地域とつながる。
9.実習(訳1か月)
10.研修6日目(演習)
11.研修7日目(演習)
○実践研究
12.修了証書交付
実習の内容とは?
令和2年度からの研修では、研修4日目と5日目、研修5日目と6日目の間に実習に取り組むことになっています。
より実践的な支援を目指して行われるようですが、具体的な内容はあまりわかっていません。
ただ大きなポイントは「地域で生活している障害当事者の方に実習協力者になっていただく」ことです。
つまり実習に協力してくれる障がい者の方がいないと研修自体が成立しないことになります。
実習では協力者に生活状況等を伺うアセスメントを行い、実習後の演習において受講者同士でアセスメントを共有していくそうです。
こうしたことから、実際に障がい者をケアしていない方は相談支援員の資格をとることはより難しくなりそうです。
資格取得の4つの条件
東京都で研修を受けるためには、以下の4つの条件が必要です。
- 東京都内の事業所に所属している、又は所属する予定である。
- 指定相談支援事業所で相談支援専門員として従事する、又は指定重度障害者等包括支援事業所でサービス提供責任者として従事する。
- 事業所からの推薦がある。
- 実習に取り組むことができる。
これら4クリアして研修を受けることができます。さらに研修を修了しても実務経験の要件をクリアする必要があります。
実務経験の条件とは
実務経験の要件には3年、5年、10年があります。こちらの実務経験をクリアしなければ研修を修了しても相談支援専門員にはなれません。
実務経験の要件は以下になります。介護や福祉の資格取得には3年の壁が多くあります。石の上にも三年・・・という感じでしょうか。
- 第1の期間が通算して3年以上である者
- 第2、第3、第5及び第6の期間が通算して5年以上である者
- 第4の期間が通算して10年以上である者
- 第2から第6までの期間が通算して3年以上かつ第7の期間が通算して5年以上である者
ここから記すのが、第1条から第7条になります。
第1:平成 18 年 10 月1日において現にイ又はロに掲げる者が、平成 18 年9月 30 日までの間に相談支援の業務、その他これに準ずる業務に従事した期間
(イ )障害児相談支援事業、身体障害者相談支援事業、知的障害者相談支援事業の従事者
(ロ )精神障害者地域生活支援センターの従業者
第2:イからニに掲げる者が、相談支援の業務その他これに準ずる業務に従事した期間
(イ) 障害児相談支援事業、身体障害者相談支援事業、知的障害者相談支援事業その他これらに準ずる事業の従事者
(ロ) 児童相談所、身体障害者更生相談所、精神障害者地域生活支援センター、知的障害者更生相談所、福祉事務所、保健所、市町村役場その他これらに準ずる施設の従業者
(ハ)障害者支援施設、障害児入所施設、老人福祉施設、精神保健福祉センター、救護施設、厚生施設、介護老人保健施設その他これらに準ずる施設の従事者又はこれに準ずる者
(ニ) 保険医療機関の従業者又はこれに準ずる者
第3:イからハに掲げる者であって、社会福祉主事任用資格者等が介護等の業務につき、入浴、排せつ、食事その他の介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行う業務に従事した期間
(イ )障害者支援施設、身体障害者更生施設、身体障害者療護施設、身体障害者福祉ホーム、身体障害者授産施設、身体障害者福祉センター、精神障害者社会復帰施設、知的障害者デイサービスセンター、知的障害者更生施設、知的障害者授産施設、知的障害者通勤寮、知的障害者福祉ホーム、障害児入所施設、老人福祉施設、介護老人保健施設、療養病床その他これらに準ずる施設の従業者
(ロ )障害福祉サービス事業、障害児通所支援事業、老人居宅介護等事業その他これらに準ずる事業の従事者又はこれに準ずる者
(ハ )保険医療機関又は保険薬局、訪問看護事業所その他これらに準ずる施設の従業者
第4 :第3のイからハに掲げる者であって、社会福祉主事任用資格者等でない者が介護等の業務に従事した期間
第5:障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターにおいて、相談支援の業務その他これに準ずる業務に従事した期間
第6:特別支援学校、盲学校、聾学校及び養護学校その他これらに準ずる機関において、障害のある児童及び生徒の就学相談、教育相談及び進路相談の業務に従事した期間
第7:医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士(管理栄養士を含む。)又は精神保健福祉士が、その資格に基づき当該資格に係る業務に従事した期間
なお3年以上の実務経験とは、業務に従事した期間が通算して3年以上であり、かつ当該業務に従事した日数が540日以上となります。
今後、相談支援専門員はどうなる?
相談支援専門員の研修制度の見直しは、現行のカリキュラムの内容を充実させるものとして行われるようです。
実践力の高い相談支援員を要請することが狙いですが、ハードルは高くなったように思います。とくに実務経験のない国家資格取得者にとっては「実習」というカリキュラムが負担になるでしょう。
人手不足の業界でありながら「質の向上」にむけて制度を見直すのは良い面と悪い面、いうなれば「理想と現実」の闘いでもあります。
「相談支援の質の向上に向けた検討会ワーキンググループ」には17名の委員がいます。彼らの目指す先が正しいものとなるのか、現実乖離となるのか注視していきたいと思います。
本日もありがとうございました。
サトシ(@satoshi_Jp0415)でした。
参考文献