カサンドラ症候群と育児うつ
カサンドラ症候群とはアスペルガー症候群のパートナーを持つ女性が、精神的苦悩や疲弊を抱え、自らの精神的なサポートが必要になる状態のことです。
一般的にアスペと呼ばれる男性には、次のような特徴があります。
- 自分の興味のあることに没頭
- 感情よりも、論理的思考を優先
- コミュニケーション能力は極めて低い
- 自己中心的な人
3つ以上当てはまったら要警戒です。
カサンドラと父親不在の孤独
困ったことにアスペルガー男は、自分の興味のあることには努力を惜しまないのでエリートコースを歩んでいる人が少なくありません。
しかし、こうしたエリートにハマって結婚したアスペルガーの妻は「相手とのコミュニケーションがうまく取れない」「何を考えているのかわからない!」と嘆く方も少なくありません。
また悩みを周りに相談しても夫が優秀であるがゆえ、理解されずに心身に不調をきたしたり、ストレスで押しつぶされたり。悲劇に陥るケースが増えているのです。
カサンドラ症候群の意味とは
元の英語は「Cassandra Affective deprivation Disorder」。
アスペルガー症候群のパートナーもつ女性が陥りやすい、精神的な抑うつ状態のことをさします。
カサンドラ愛情剥奪症候群やカサンドラ愛情剥奪症候群と訳されることもありますが、ここでは、カサンドラと呼んでいきます。
実はカサンドラに関する論文はまだまだ少ないのです。
ここでは、様々な視点で記されている書籍などから、なぜカサンドラ症候群に陥るのか?ドラマ風にまとめてみました。
本来、「カサンドラ」とは人の名前です。
起源はギリシャ神話にまで遡ります。
このギリシャ神話に沿いながら、現代風のストーリーを作ってみると、共感性が欠如した夫がなぜ非難されず、逆に「カサンドラ」妻が悲劇に陥るワケが見えてきます。
現代版カサンドラとアポロン
時は令和・・・。
大手外資系コンサルタント会社のエリート社員であるアポロンは、美しい女性、カサンドラと出会います。
アポロンといえば絶世の美男子で、一流大学出身。
実家もお金持ちで年収2000万円を稼ぐイケイケの神。
エリート限定の婚活パーティーに友人と参加していたカサンドラに一目惚れしたアポロンはオシャレなbarカウンターでワインを傾け、こうささやきます。
アポロン「きみは、なんてステキな人なんだ。一生、大切にしたい」
才気あふれるアポロンの告白を断れる女性がいるでしょうか。
カサンドラはアポロンと結婚しました。
アポロンの実家が所有する高級マンションで新婚生活をスタートさせた二人。
アポロンとの間には子どもも授かりカサンドラは幸せでした。
カサンドラの辛い日々
多忙なアポロン、育児は全てカサンドラ任せでした。
たまに家にいても自分の部屋に閉じこもり趣味に没頭するばかり。
しかも子供に軽い障害があると分かると「おまえの遺伝子が悪い」とキレ、カサンドラを責めはじめました。
あまりに『人と違う』アポロンの言動に不審を抱いたカサンドラは姑に相談します。
しかしアポロの母親は息子の非を認めません。
それどころか、カサンドラの怒りを収めようと使い放題のブラックカードを渡しました。
カサンドラとアポロンの呪い
カサンドラは孤独でした。
こんな結婚生活を夢見ていたわけではありませんでした。
自慢の夫、金持ちの姑、ありあまる財産。
しかし日ごとにカサンドラの闇は深くなっていきます。
このままでは死んでしまう。
カサンドラはある日、姑から渡されたブラックカードを使い、ある特別な魔法を手に入れました。それは「予言の力」でした。
カサンドラ「私たち夫婦にどんな未来が待っているのか。予言の力で将来をみよう」
自らの未来を透視したカサンドラ。
そこで見たのはアポロンが自分と子供を捨てて去っていく姿でした。
カサンドラ「このままでは全員が不幸になるわ。あの人に変わってもらうしかない」
不幸な未来を予知したカサンドラは、夫のアポロンにアスペルガーを治療するためにカウンセリングを受けてほしいとお願いしました。
しかしアポロンは聞き入れません。
それどころか逆切れしたアポロンは、周囲にこう言い触れ回ったのです。
アポロン「カサンドラがおかしくなった」
対外的にはエリートとして多くの人々に尊敬されるアポロン。
その夫の言葉を誰もが信じました。
カサンドラは周囲の人々から冷たい目で見られはじめます。
カサンドラの闇はますます深くなり、疲れ果て偏頭痛や抑うつ、無気力、自律神経失調症など心身に不調をきたすようになったのです。
カサンドラ症候群の治療
アスペルガー症候群の夫やパートナーとのコミュニケーションがうまくいかない。
世間的には完璧な彼らの不満を口にしても誰も理解してもらえない。
こうした葛藤から精神的、身体的苦痛が生じるのがカサンドラ症候群です。
深刻なのは夫の方が世間の評価が高いために、妻は「わがまま」と言われてしまう事です。
こうした状態に置かれた妻は自己評価が消失し、心が折れてしまうことも多くあります。
まず心理カウンセラーへの相談や、同じような悩みを抱える自助グループに参加して心の悩みを解き放つことが何より大切です。
そして、こうした悲劇を繰り返さないためには、恋愛時代に恋人の肩書や年収だけで判断するのではなく、個人の特性を見抜くことが重要です。
そのためにも身近に信頼して相談できる年上の友人をつくることをおすすめします。
参考文献
熊野宏昭:21世紀の自分探しプロジェクト サンガ,2009
熊野宏昭:ストレスに負けない生活 ちくま新書,2007
熊野宏昭:新世代の認知行動療法入門 こころの科学,2010
A・スマナサーラ:自分を変える気づきの瞑想法 サンガ,2004
Hayes SC,Follette VW,Linehan MM:Mindfulness and Acceptance,Guilford,New York(2004)
(武藤 崇,伊藤義徳,杉浦義典(監訳)
マインドフルネス&アクセプタンス:
認知行動療法の新次元,ブレーン出版,2005)
・kabat-Zinn,J:Wherever you go,there you are:Mindfulness meditation in every-day life.New York:Hyperion.(1994)