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インセンティブ交付金とは?重要視される評価指標や介護保険の使い道

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介護業界には大きな矛盾があります。

 

それは利用者さんの状態が良くなるほど、事業所の収入が減るという矛盾です。

 

通常の仕事であれば、スタッフが寝る間を惜しんで働いて、売上が伸びればボーナスや給与は上がります。

 

しかし介護ではその逆。むしろボーナスが削られることもあり得るのです。

 

こうしたおかしな状況を改善するために期待されているのが、「インセンティブ交付金」です。

 

 

 インセンティブ交付金とは?

 

インセンティブ交付金とは「保険者機能強化推進交付金・介護保険保険者努力支援交付金」と呼ばれるものです。

 

簡単にいえば、高齢者の自立支援や重度化防止につながる取り組みを積極的に行った都道府県・市町村を評価して自治体にお金(交付金)を支給する制度です。

 

 

インセンティブ交付金400億円

 

インセンティブ交付金の令和2年度の予算額は400億円とされています。

 

<内訳>

 

・保険者機能強化推進交付金 :200億円
・介護保険保険者努力支援交付金:200億円(社会保障の充実分)です。

 

この交付金を財源として確保するための理由。いわゆる支給の趣旨が以下となります。

 

 

平成29年地域包括ケア強化法において、高齢者の自立支援・重度化防止等に向けた保険者の取組や都道府県による保険者支援の取組が全国で実施されるよう、PDCAサイクルによる取組を制度化。


この一環として、自治体への財政的インセンティブとして、市町村や都道府県の様々な取組の達成状況を評価できるよう客観的な指標を設定し、市町村や都道府県の高齢者の自立支援、重度化防止等に関する取組を推進するための保険者機能強化推進交付金を創設。


令和2年度においては、公的保険制度における介護予防の位置付けを高めるため、保険者機能強化推進交付金に加え、介護保険保険者努力支援交付金(社会保障の充実分)を創設し、介護予防・健康づくり等に資する取組を重点的に評価することにより配分基準のメリハリ付けを強化

 

 

小難しい文言ですが、令和2年度で重要なのは最後に記されていた文言だと思います。

 

 

「公的保険制度における介護予防の位置付けを高めるため、保険者機能強化推進交付金に加え、介護保険保険者努力支援交付金(社会保障の充実分)を創設する」

 

 

この文言によって、200億円の予算が400億円になっています。

 

 

インセンティブ交付金の配分と評価指標

 

インセンティブ交付金は、各市町村が行う自立支援・重度化防止のと取組みや、都道府県が行う市町村に対する取り組みの支援に対し、それぞれ評価指標の達成状況(評価指標の総合得点)に応じて支給されます。

 

配分と評価指標は以下のようになっています。

 

 

<市町村分>

 

○保険者機能強化推進交付金200億円のうち190億円程度


○介護保険保険者努力支援交付金200億円のうち190億円程度

 

 

<市町村の評価指標 都道府県の評価指標>

 

Ⅰ  PDCAサイクル体制等の構築

 


Ⅱ  自立支援、重度化防止等に資する施策の推進

 

(1)介護支援専門員・介護サービス事業所等


(2)地域包括支援センター・地域ケア会議

 

○市町村の基本方針を定め、地域包括支援センターに周知
○地域ケア会議における個別事例の検討件数割合 等

 

(3)在宅医療・介護連携


(4)認知症総合支援

 

○介護保険事業計画等に具体的な計画を定め、進捗管理
○早期診断・早期対応に繋げるための体制構築


(5)介護予防/日常生活支援

 

○体操等の通いの場への65歳以上の方の参加率
○介護予防と保健事業の一体的実施
○介護予防の場へのリハビリテーション専門職等の関与
○社福法人・医療法人・民間サービス等と連携した介護予防の取組
○介護予防におけるデータ活用
○高齢者の社会参加を促すための個人インセンティブ


(6)生活支援体制の整備


(7)要介護状態の維持・改善の状況等


○要介護認定者の要介護認定の変化率
○健康寿命延伸の実現状況(要介護2以上の認定率)


Ⅲ  介護保険運営の安定化に資する施策の推進

 

(1)介護給付の適正化


○ケアプラン点検の実施状況

 

(2)介護人材の確保

 

○介護人材確保のための取組
○介護人材を養成する研修事業の実施状況、研修修了者のマッチング状況
○介護助手等の高齢者の就労的活動の促進、高齢者の就労的活動への参加率
○文書削減の取組

 

<都道府県分>

 

<配分 >

 

・保険者機能強化推進交付金200億円のうち10億円程度
・介護保険保険者努力支援交付金200億円のうち10億円程度

 

<都道府県の評価指標>

 

Ⅰ  地域課題の把握

Ⅱ  自立支援、重度化防止等に資する市町村支援

(1)地域分析


(2)地域ケア・介護予防


(3)生活支援体制の整備


(4)自立支援・重度化防止に向けたリハビリテーション


専門職の活用


(5)在宅医療・介護連携


(6)認知症総合支援


(7)介護給付の適正化


(8)介護人材確保・生産性向上


(9)その他の支援


Ⅲ 管内の市町村における達成状況による評価

 

○要介護状態の維持・改善の状況等
○通いの場への参加率の状況
○介護助手等の高齢者就労的活動の支援状況

 

 

インセンティブ交付金に期待されるのは?

 

自立支援を促すインセンティブ交付金。個人的には期待しています。

 

なぜなら現行の介護報酬制度では利用者さんの状態が改善しても事業者側にメリットがないからです。

 

例えば、ケアラー が頑張って利用者さんの日常生活動作を良くした場合、要介護度は低くなります。

 

すると介護報酬は下がり事業者側の売上は減ります。

 

家庭教師を例にとれば、生徒の成績をあげたら時給が減るというイメージです。

 

だったら成績をあげてもしかたない・・・。そのままの状態でいいかという気持ちになっても仕方ありません。

 

生徒のことを考え、一生懸命に頑張って成績をあげた教師には報酬アップを!そう考えるのは自然のような気がします。

 

こうした矛盾を解決するためのインセンティブ交付金であれば意味があります。

 

 

介護サービスの質はあがるのか?

 

インセンティブ交付金を活用して、介護サービスの質を上げようと試みている自治体も登場しています。

 

<東京都品川区>

 

東京都品川区では要介護度改善ケア推奨事業を展開。

品川区の施設サービスに参加する社会福祉法人等が運営する高齢者施設を対象にサービスの質を評価して奨励金を支給しています。

 

要介護度が一段階改善した場合に2万円の報奨金を支給する制度となっていて、平成25年度から事業を開始しています。

 

<岡山県岡山市の取り組み>

 

岡山県岡山市では、デイサービス改善インセンティブ事業を展開。

 

通所介護のサービスを対象に質の評価や利用者の状態の維持・改善に努めている事業所にインセンティブを付与しています。

 

外部研修への参加状況や岡山市が主催する研修会への参加、認知症高齢者の受け入れ人数等を評価項目とし、上位10団体に10万円の報奨金を支給するこの事業は、平成26年度から開始されています。

 

こうした取り組みはドンドン加速してほしいですね。

 

 

 

介護士、ヘルパーを評価する仕組みへ

 

介護の質を高めるためには現場で働く介護士の「頑張り」が評価されなければ何も変わらない気がします。

 

むしろ質を上げようと管理者が発破をかけるほど、介護士の仕事は増えて疲弊して悪循環に陥る可能性があります。

 

利用者が良くなるのは介護士として本当にうれしいものです。

 

僕も看取りを宣告されたおばあちゃんが、現場の努力で元気を取り戻していく姿を目の当たりにしてプロの凄さを実感した経験があります。

 

現場では「みえない努力」が様々にあります。

 

それは社員だけでなくパートや派遣スタッフも同じです。

一人ひとりのケアの積み重ねで利用者の状態は改善していきます。

  

有名塾でもそうではないでしょうか。

講師の質が生徒の能力を引き上げる。

介護業界でも利用者を改善させた介護のプロが高く評価されて高い報酬が支払われるようになれば業界全体の向上につながると思います。

  

 本日もありがとうございました。

 

 

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