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人見知りと分離不安の違いとは?アタッチメント(愛着)の特徴

 

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アタッチメント(愛着)とは

 

 保育士の試験問題によく出てくる人物にイギリスの医学者、ボウルビィがいます。ボウルビィは、子どもが身近な特定の親しい人とのあいだに結ぶ情愛的な関係をアタッチメント(愛着)と呼びました。また、その相手を「愛着対象」と呼びました。

 

 アタッチメント(愛着)とは、自らが「安全であるという感覚」を確保しようとする本性に基づきます。危機的状況や潜在的な危機に備えて、特定の対象者への接近・接触を求め維持しようとする傾向と定義されています。

 

 この愛着対象との関係のなかで、子どもはさまざまな場面での行動のパターンや知識を学習していきます。幼い子どもは不安や恐怖を感じたときに、保育者への接近・接触によって安心感を得ます。そうした経験を積み重ねることで、保育者がその場にいなくても、保育者のイメージを思い浮かべて、安心するようになります。

 

 この経験がその後の人との関係性の基盤になるのですが、愛着が不足していると、こうした基盤が獲得できないのです。愛着は授乳やおむつ替え、衣服の調節などの「生理的ケア」の有無に関係なく、情緒的なやりとりをする相手との間に形成されます。

 子どもが愛着対象に抱くイメージは内的ワーキングモデルと呼ばれます。内的ワーキングモデルは、それまでの愛着対象との関わりの積み重ねによって形成されています。

 

 僕自身が子育て支援をする際には、このアタッチメントが親子間で形成されているのかをよく見るようにしています。具体的にはパパやママといった養育者との間にアタッチメントが形成されていると、子どもは養育者と離れることに不安を感じ、抵抗を示すようになります。

 

 例えば、両親と離れるときに嫌がったり、泣いたりする子どもがいます。これを「分離不安」といいます。分離不安のある子どもは、親からの愛情を注がれているように思います。通常、分離不安は生後6ヶ月から3歳までの乳幼児によく見られる兆候でだんだんと落ち着いていきます。小児期の分離不安障害でみられる症状には次のようなものがあります。

 

  • 迷子になり愛着を抱いている人から離れてしまうのではないかという過度の心配。
  • 分離の際に繰り返す胃痛、頭痛などの身体症状。
  • 分離に関する悪夢を繰り返す。
  • 愛着を抱いている人の死についての強い懸念。

 

 分離不安とよく間違われるのが「人見知り」です。人見知りの子どもは知らない人をじっと見たり、抱っこすると泣き出したりします。分離不安の症状なのか、人見知りなのかは見極めるのが難しいような気がします。

 

  愛着の個人差を測定するためにサークル・オブ・セキュリティ(安心感の輪)を考案したのは、ケント・ホフマン、グレン・クーパー、バート・パウエルら心理学の専門家たちです。またエインズワースは、回避型をA型、安定型をB型、抵抗型(葛藤型/アンビバレント型)をC型としました。

 

 

反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)の原因

 

 障がい児・者の親子間においてはアタッチメントが強いケースが多いです。一方、養護施設で育つ子どもは愛着形成が未熟な場合も少なくありません。やはり大人数の中で育成される子どもと家庭的養護の中で育てられる子どもでは、愛着の形成に差が出てきます。そのため国では里親制度を推奨して子供の健全な育成に力を入れています。

 

 家族や身近な人と愛着関係が形成されていないと様々な問題も生じます。そのひとつに反応性アタッチメント障害があります。この障害の特徴は、どの大人とも相互的に最小限にしか関われず、特に苦痛があった時に助けや慰めを求められません。また愛情や信頼、好感といった肯定的な情緒が極端に少ないのも特徴です。

 

 この障害がある子どものほとんどは、選択的な愛着対象(アタッチメント対象)を持っていないとされています。

 

 反応性アタッチメント障害は「抑制型」と「脱抑制型」の二つのタイプに分けられます。「抑制型」のアタッチメント障害の場合は、親に対して強い警戒心を持ちます。そして本当は甘えたくてたまらないのにそれが素直にできません。一方、「脱抑制型」のアタッチメント障害は異様にまとわりついたり甘えるのが特徴です。

 

 たとえば誰かれかまわずになれなれしくなったり、注意を引くために見境なく親しげにするなどの傾向があります。反応性アタッチメント障害では「友達との社会的相互交流が乏しい」「矛盾した両価的な対人反応を示す」「重篤なネグレクトを受けた場合に起こりうる」などが指摘されています。

 

 反応性アタッチメント障害の原因は身体的虐待ではなく親の放任や怠惰な養育態度による虐待、つまりネグレクトが多いとされています。

 

 

アタッチメントと情動伝染

 

 乳児は他児のなきごえを聞いてつられて泣く事があります。これを情動伝染といいます。もちろん泣くだけではなく、笑うということも伝染します。

 

 感情の伝染を引き起こしているのは、脳内のミラーニューロンと呼ばれるものです。ミラーニューロンは神経細胞の一つで、他人のまねをするよう自分の行動に働きかけているものだと考えられています。

 

 小さい子どもは養育者の顔や目をじっと見つめるようになるアイコンタクトや、大人の働きかけに合わせて自分の身体を動かすエントレインメントなど身近な人の影響を受けやすいです。両親が悲しい、辛い、怒っているなどの感情を日常的に放出していると、その子こどもに情動伝染するケースは多いように思います。

 

 より良いアタッチメントを形成するためには、両親や養育者がネガティブな感情よりもポジティブな感情を伝染させることが重要な気がします。これはケアをする側にも当てはまるように思います。利用者が問題行動を起こした時にどのように対応するべきか。アタッチメントの形成が上手なケアラー (介護職)は、ラポール(信頼)の形成もスムーズで良好な関係を築いている人が多いです。

 

 またテクニカルな方法としてはアサーションがあります。アサーションとは自分の考えや感情を率直に、その場にふさわしい言い方で表現し、自分も相手も大切にし、相手を傷つけず、自分の主張をしっかりと相手に伝えるコミュニケーション技法です。愛着障害がある子どもには伝え方も重要になると思います。

 

愛着形成で育まれる内社会的行動

 

 向社会的行動とは社会的規範やルールを守る行動であり、反社会的行動・非社会的行動等とは真逆な行動です。例えば友達を助けてあげたり、守ってあげたりの態度を積極的に示して、他者に恩恵を与える為に行う行動を意味します。

  

 アタッチメント(愛着)を通じた両親や養育者への信頼は「自分は愛され支持されるに値する存在である」という自分自身の肯定感にもつながります。こうした肯定的な感情が、友達を助けたり守ってあげるなどの内社会的行動につながりやすいように思います。

 

アタッチメントの形成は言葉でいうほど簡単ではありませんが、認知や行動の変容によって養われるケースも多いです。現在は研究も進んでおり、さまざまなトレーニングもあります。社会福祉のサービスを上手に活用して子育てに役立てていただければ幸いです。

 

本日もありがとうございました。