ユネスコ世界会議と「持続可能な開発のための教育」
国際連合。
なんだか社会科の勉強のようですが、いわゆる国連ですね。
この国連が、ユネスコ主導のもとに提唱したのが「持続可能な開発のための教育」です。
具体的には、2005年から2014年までを「国連持続可能な開発のための教育の10年」として重要性を唱えました。
持続可能な開発のための教育とはESDと略されます(ESD:Education for Sustainable Development)。
ESDでは持続可能な開発を実現するために発想し、行動できる人材を育成する教育を目指しました。
行政にありがちな長い言葉なので「持続発展教育」「持続可能な発展のための教育」などの呼称も用いられています。
国連がこの「持続可能な開発のための教育」を提唱したことから、内閣に「国連持続可能な開発のための教育の10年~関係省庁連絡会議」(通称「連絡会議」)が設置されました。
ESDの目的や背景とは
いま世界には環境、貧困、人権、平和、開発といった様々な問題があります。コロナによってその問題はさらに深刻化しています。
持続可能な社会では、一人一人が社会の一員として、人間・社会・環境・経済の共生をめざし、生産・消費や創造・活用のバランス感覚を持つことが求められています。
ESDではこれらをまず自らの問題として捉える。そして身近なところから取組む。さらに解決につながる新たな価値観や行動を生み出す、ことを目的としています。
つまり、持続可能な開発のための教育(ESD)は持続可能な社会づくりの担い手を育む教育でもあるのです。
ESDで目指すこととは?
ESDでは「育みたい力」として以下を挙げています。
- 持続可能な開発に関する価値観
- 体系的な思考力
- 代替案の思考力(批判力)
- データや情報の分析能力
- コミュニケーション能力
- リーダーシップの向上
持続可能な開発による発展では、将来の世代に迷惑をかけることなく、現在の世代のニーズを満たすような社会づくりのことを意味しています。
そして今後、このESDがベースになった学び方や教え方が展開されていきます。
具体的に文科省は次のような方向性を示しています。
- 「関心の喚起 → 理解の深化 → 参加する態度や問題解決能力の育成」を通じて「具体的な行動」を促すという一連の流れの中に位置付けること。
- 単に知識の伝達にとどまらず、体験、体感を重視して、探求や実践を重視する参加型アプローチをとること。
- 活動の場で学習者の自発的な行動を上手に引き出すこと。
この流れをみると、これまでの詰め込み式の学習から体験学習へと変容していくのが分かります。
つまりお受験や進学試験においても、この点が重視されていくと思われます。
昭和のバブル世代では、むやみやたらに生産活動や消費活動を優先させてきました。
しかし現代においては、環境保全や資源の過剰利用の抑制の視点とともに、貧困の克服、保健衛生の確保、質の高い教育、性・人種による差別の克服等への配慮が必要とされています。
価値観の多様化とともに、世代間の教育のズレは発生するかもしれません。
ESDの後継としてのSDGsへ
「国連ESDの10年(DESD)」(2005年~2014年)の後継として、2020年~2030年におけるESDの国際的な実施枠組みである「持続可能な開発のための教育:SDGs実現に向けて(ESD for 2030)」が、2019年11月の第40回ユネスコ総会で採択されました。
最近はこのSDGsがマスコミでも取り上げられています。
持続可能な開発目標(SDGs)は、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
17のゴール・169のターゲットから構成されており、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。
SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり日本としても積極的に取り組んでいます。
この中の教育として、具体的な行動を示すロードマップがユネスコにより公表されました。
ロードマップでは、5つの優先行動分野が提示されています。
1.政策の前進
2.学習環境の転換
3.教育者の能力構築
4.ユースのエンパワーメント及び結集
5.ローカルレベルの行動の加速化
なかなかに難しい内容ではありますが、簡単にいえば「質の高い教育」を目指すということです。
質の高い教育を実現することによって、世界が抱える数多くの課題を解決することを目標としているのです。
日本では当たり前のように読み書きができる子どもが多いのですが、国や地域によってはまだまだ難しい子どもたちは少なくありません。
教育を受けられない子どもたちも世界にはたくさんいます。
国連が掲げている目標は現実的には高いかもしれません。しかし日本人としてだけでなく、国際人として生きていくことが未来には求められています。
質の高い教育は、そうした未来の国際人を育成するためには必要であり、僕たち大人にとっても生涯教育は重要になってくるのかもしれません。
好奇心を持ちながら学びを続けている方は、シニアになっても元気です。
認知症にならず楽しく生きるためにも「持続可能な教育」は続けていきたいですね。
本日もありがとうございました。