ツナガレ介護福祉ケア

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知っておきたい「生涯発達」3つの要因とバルテスの生涯発達理論とは?~ツナガレケア

 

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心理学者バルテスの生涯発達理論とは

生涯発達研究の第一人者として有名なのがバルテスです。バルテスはドイツの心理学者です。「人間の発達は、子どもだけではない」として新生児から老年期までの生涯における発達過程を視野にいれた生涯発達について、「常に成長と衰退が結びついて起こる過程である」といいました。

バルテスは生涯発達心理学について、「人の誕生から死に至るまでの生涯過程に、どのような個人内の変化と安定性・連続性が存在し、又、いかなる個人間の異質性と類同性が存在するのかを記述・説明し、ときにはその最適化を図る学である」と定義しました。人生100年時代といわれる今、生涯に及ぶ発達とは何か、バルテスの研究から考えてみました。

 

 

 生まれてから死ぬまでの発達とは?

バルテスの生涯発達理論とは、受胎から死に至る過程における、行動の一貫性と変化を研究したものです。つまり生まれてから死ぬまでの研究でした。研究の目的は、生涯発達の一般的原理、発達における個人間の差異性と類似性、発達の可塑性とその限界等を明らかにすることでした。

バルテスは、人は死ぬまで変化し続ける存在だという認識を重要視しており、生涯教育環境の整備により実現することができると主張しました。この考え方には賛成です。シニア世代になっても変化し成長し続けることを求めている方は少なくありません。生涯学習もそのひとつです。そのためには学習環境の整備は重要であり、昨今のリモート学習などは今後も広まっていきそうです。

バルテスの心理学の観点

バルテスは生涯発達心理学の観点として次の3つを重視しました。

  1. 個体の発達は生涯にわたる過程であること
  2. 発達は全生涯を通じて常に獲得(成長)と喪失(衰退)とが相互に関連しあって共在する過程であること
  3. 個体の発達は歴史的文化的条件の影響を受けること

上記のポイントとしては、発達とは常に獲得と喪失の繰り返しによって起こるということでしょうか。ヒトは恋愛や失恋を経験することで成長していく。出会いと別れを繰り返すことによって発達していく生き物なのかもしれません。

生涯の発達に影響を与える3つの要因

バルテスは生涯の発達に影響を与える要因として、具体的に次の3つを挙げています。

1つ目は、生物学的要因です。思春期や結婚、退職年齢など社会年齢に関連するものなど、ある標準的な年齢段階で多くの人に類似してみられます。これらは年齢による身体の成熟に伴う影響力であり、幼少期に一番大きく影響を受け、老年期になり多少の影響を受けます。

2つ目は、ある特定の時代に同じ国や地域で生きている人々が共通して経験する出来事です。景気や戦争、テロ、流行、大きな天災、流行性の疾病などの歴史的要因が挙げられます。現在でいえば大震災や新型コロナウィルスです。歴史的な要因は、その時代を生きる人に人生の目標や生活様式、健康問題などさまざまな点で影響を及ぼします。また、その経験が生涯を通して強い影響力を与えます。もちろんマスメディアやインターネット、世代間の違いから刺激や影響も受けます。

3つ目は、個人の生活上の出来事(ライフイベント)です。病気や離婚、失業、転職、死別などで、年齢には関係なく影響を受けます。ライフイベントは歳を重ねる方がより多く体験します。結婚や就職は人生における獲得案件ですが、他方、別れや死別、転職など喪失感も味わいます。こうした経験も生涯発達の出来事といえます。

上記の3つの要因は相互に関連して発達に影響を及ぼします。その強さは発達段階で異なります。バルデスは生涯発達を「獲得と喪失」「成長と衰退」の混合したダイナミックス(過程・変遷)として捉えました。

 

バルテスの新たな視点

バルテスは生涯発達心理学を提起し、次の4つの視点をもたらしました。簡単にまとめます。

  1. 個体の発達は生涯にわたる過程
  2. 発達は全生涯を通じて常に獲得(成長)と喪失(衰退)が結びつく
  3. 発達には大きな可塑性(可変性)が認められる。
  4. 個体の発達は歴史的文化的条件の影響を受ける。

老年期は一般的には衰退の時期です。しかし、歳を重ねるほど言語的な豊かさが増すなど成人期以降も発達します。また結晶性知能(過去の経験などに基づく知能)は老年期にこそ最高の状態になると考えられます。ただし流動性知能(新しい状況に適応するための知能)は、加齢により衰えやすいです。

生涯発達の他の研究について

生涯発達研究は、バルテス以外の研究者も行っています。主要なメンバーを簡単に紹介します。

ハヴィガーストは、人間には発達課題があると主張しました。子どもから大人になる段階には各時期の発達課題を段階的に達成出来ないと、次の段階への移行も困難になる。そして健全な発達に問題が生じるといいました。

レヴィンは、仲間同士で力を合わせて課題に取り組むことで生じる力を集団的力学と呼びました。お互いの力や考えを出し合うことで、仲間意識や、自分の責任なども意識出来ることに着目しました。このような「相互作用性」が発達の要素になることを主張。これを「グループダイナミックス」と呼びます。

ブロンフェンブレンナーは子どもが所属し、多様な影響経験をする場として、家庭や、保育所や地域等があり、これらの人間を取り巻く環境を「入れ子構造」と呼びました。生まれてから死ぬまでに誰もが様々な経験をします。

生涯発達は、過去の研究者のエビデンスからも紐解くことができます。 それらを現代に書き換えて人生100時代に取り込むことが重要なのかなとも思います。

本日もありがとうございました。