ツナガレ介護福祉ケア

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楽しい「遊び」の定義・・・有名な6つの行動と4つの項目とは?【ツナガレ介護福祉ケア】

 

 

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遊びとはなにか?

 

 楽しく遊びたい。面白く遊びたい。誰もが当たり前のように「遊び」をしています。でも、そもそも人はなぜ遊ぶのでしょう。

 

 幼児教育の祖と称されるフレーベルをはじめ、遊びを通じて子供の成長を促す活動は古くより行われています。重要なファクターでありながら、遊びの定義について深く考えることは少ないです。

 

 こうした遊びについて、問題意識を持ちながら研究した人物がいます。有名な研究者としては、カイヨウ、ホイジンガが挙げられます。今回は二人の考えを通じて、遊びの定義や本質についてまとめてみました。

 

 

 

カイヨウが定義する、4つの項目と6つの行動

 

 ロジェ・カイヨウは1913年(大正2年)に生まれた、フランスの社会学者です。彼は、遊びを4つの項目(競争、偶然、模擬、眩暈(めまい)に区分しました。さらに、遊びの行動を6つに集約して、次のように定義しました。

 

 

  1. 自由な行動 
  2. 隔離された行動 
  3. 未確定の行動 
  4. 非生産的行動 
  5. 規制のある行動 
  6. 虚構の行動

 

 

カイヨウ「遊びの6つの行動」とは?

 

遊びの6つの行動を具体的に紹介します。

 

自由な活動

 自由な活動とは、すなわち遊技者が強制されないこと。もし強制されれば、遊びはたちまち魅力的な愉快な楽しみという性質を失ってしまいます。遊びは強制されずに、自由に楽しく行動するのが基本という考え方です。

 


隔離された活動

 あらかじめ決められた明確な空間と、時間の範囲内に制限されていることです。学童クラブなどはこうした活動のひとつでしょう。

 


未確定の活動

 

 遊びはゲーム展開が決定されていたり、先に結果が決められていては成立しません。創意の必要があるのだから、ある種の自由が必要です。「遊ばれている、遊ばされている」ことに気づいていながら遊ぶのは、遊びではないという考え方です。

 


非生産的活動

 

 カイヨウは、遊びは財産も富も、いかなる種類の新要素も作り出さないものと示しています。遊戯者の間での所有権の移動をのぞいて、勝負開始時と同じ状態に帰着するのが遊びという考え方です。

 

規則のある活動

 

 遊びは、ルールに従う活動を行います。この約束ごとは通常の法規を停止して、一時的に新しい法を確立します。そしてこの法だけが通用します。自由な行動でありながらも、規則性があることは面白い視点です。

 


虚構の活動

 

 遊びは、日常生活と対比した場合、二次的な現実、または明白に非現実であるという特殊な意識を伴っています。つまり虚構の活動なのです。虚構の活動の中で想像力を働かせて行動することが大切のようです。

 

 

ホイジンガの「遊び」の研究

 

 カイヨウとともに、遊び研究の代表者とされるのが、ホイジンガ(J.Huizinga)です。ホイジンガは、著書『ホモ・ルーデンス』で遊び概念と人間、そして文化の関係を考察しています。

 

 ホイジンガは、言語学者であり文化史家でした。一般的に、ホイジンガの遊び研究の継承者と言われているのがカイヨウです。ホイジンガは遊びの本質に関して、遊びの「自己完結性(独立性)」を指摘しています。

 

 


「なぜ人は遊ぶのだろうか?」

 

 ホイジンガは、この疑問について過去の遊び概念を包括的に再吟味しました。そして、過去の遊びの解釈はさまざまなものがあることが分かりました。

 

 たとえば過去の遊び概念には、「あり余ったエネルギーの放出」「先人の模倣」「緊張の解放」「仕事の練習」「自己訓練」「果たされなかった欲望の補償」などがあります。

 

 その中においてホイジンガは、1つの共通点を見つけました。それは「遊びは遊び以外の何ものかのために行われる、遊びとはある種の生物学的目的に役立っている」という前提のもとになされていることでした。

 

 また、ホイジンガは「問題はこれらの解釈の大部分は遊びそのもの、それ自体の本質については触れられていないことである」と指摘しました。そして次のように主張しました。

 

 

遊びという概念は、それ以外のあらゆる思考形式とはつねに無関係である。遊びは「遊び」そのものとして取り扱うことが必要で、そして他の概念や対象とは独立に考察する必要がある。遊びそのものの意味を問わなければならない。すなわち、そこにおいては、遊びは、遊び以外の何かに貢献するということではなく、遊びそのものの中において完結するのである。

 

 

つまり、遊びは、その自己完結性ゆえに「面白さ」があると考えました。では、自己完結性における遊びの「面白さ」とは何なのでしょう。

 

 

自己完結性の「遊びの面白さ」とは

 

 結論を先にいえば、ホイジンガは『遊びの「面白さ」はどんな分析も、どんな論理的解釈も受けつけない』とみなし、遊びの「面白さ」に関しては、とやかく言わずに無条件に受け入れることを提唱しました。

 

 そしてホイジンガは、「遊び」概念を次のように定義しました。

 


『遊びとは、あるはっきり定められた時間、空間の範囲内で行われる自発的な行為もしくは活動である。それは自発的に受け入れた規則に従っている。その規則はいったん受け入れられた以上は、絶対的拘束力をもっている。遊びの目的は行為そのもののなかにある。それは、緊張と歓びの感情を伴い、またこれは「日常生活」とは「別のもの」という意識に裏づけられている』

 

 

ホイジンガの定義を具体的にまとめてみます。

 

ホイジンガの遊びの5つの特徴とは


ホイジンガの遊びの主要特徴をまとめると、次の5つになります。

 


①1つの自由な行動である。

命令でもなく、いつでも延期できるし、中止しても何ら差し支えない。


②遊びは日常生活から、その場と持続時間とによって区別される。遊びは定められ
た時間、空間の限界内で行われて、そのなかで終わる。


③遊びは緊張の要素が必須である。緊張それは不確実ということ、やってみないこ
とにはわからないということである。


④遊びは必要や欲望の直接的満足という過程の外にある。遊びは直接の物質的利害、
あるいは生活の必要充足の外におかれている。


⑤どんな遊びにも、それに固有の規則がある。



まとめ

 

 カイヨウやホイジンガの遊びの定義を知ると「なんだ〜」と感じることも多いです。しかしながら、遊びという構成概念を明確に定義することは、遊びを考える上で重要にも思います。

 

 僕たちが遊びと思っているもが実は遊びでなかったり、新たな遊戯を提案する意味でも参考にできるかもしれませんね。本日もありがとうございました。

 

 

 

 

 

<参考>

 ・小川純生「遊び概念」,東洋大学経営研究所論集第26号,2003年