保育士試験の合格率は20%といわれています。そのうち一発で合格する確率は5~10%と聞きました。よく一発合格したなあ・・・と自分でも驚いています。保育士試験は9科目と範囲が広いです。1科目60点以上とれば良いのですが、範囲が広いため1発合格は難しいとされています。ちなみに問題数は20問で1問5点です。
今回は保育士の科目の中の「社会的養護」を取り上げます。問題はコツをつかめば、それほど難しくありません。専門用語が多く出てくるので戸惑いがちですが、問題文をよく読めば、常識的に解ける問題も多いです。僕が間違えやすいと思った問題を紹介します。
社会的養護の問題
上の写真は、科目試験の結果です。社会的養護はニコイチ(2科目でひとつ)なので、30点以上を獲得する必要があります。つまり、僕の点数はギリギリだったわけです。いやあ、危ない。ここが不合格になると教育原理も落とすことになります。とにかくギリギリでも合格すればよしとしましょう。
過去問を毎日30分間解いていると、点数は自然と上がってきます。社会的養護も過去問の最後は90点以上はとれていたのですが、本番ではギリギリという結果。油断は大敵です。社会的養護は児童福祉施設の基準や人物問題が多いです。つまり暗記することが第一です。僕の経験から「社会的養護」で間違えやすい過去問題とその理由をまとめました。
児童福祉施設(令和2年後期)
- 児童福祉施設は、入所している者の人権に十分配慮するとともに、一人一人の( A )を尊重して、その運営を行わなければならない。
- 児童福祉施設は、( B )との交流及び連携を図り、児童の保護者及び( B )に対し、当該児童福祉施設の運営の内容を適切に説明するよう努めなければならない。
- 児童福祉施設は、その運営の内容について、自ら評価を行い、その結果を( C )するよう努めなければならない。
A | B | C | |
1 | 個性 | 地域社会 | 活用 |
2 | 個性 | 地域社会 | 公表 |
3 | 個性 | 関係機関 | 活用 |
4 | 人格 | 関係機関 | 活用 |
5 | 人格 | 地域社会 | 公表 |
正解と解説
正解は、5です。個性か人格かで迷いますが、人権という文言が先にある場合は、人格にしています。「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」では、乳児院や母子生活支援施設、児童養護施設、児童心理治療施設、児童自立支援施設についても自己評価とその公表、第三者評価受審を義務づけています。
社会的養護(平成28年後期)
次の文は、「社会的養護の課題と将来像」(児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会・社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会)(平成23年7月)における「社会的養護の理念と機能」の一部である。(A)~(D)にあてはまる語句の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
社会的養護は、保護者のない児童や、保護者に(A)させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うことである。社会的養護は、「子どもの(B)のために」という考え方と、「(C)で子どもを育む」という考え方を理念とし、保護者の適切な養育を受けられない子どもを、社会の公的責任で保護養育し、子どもが(D)基本的な権利を保障する。
|
A |
B |
C |
D |
||
1 |
監護 |
基本的人権の保障 |
地域 |
安全で安心して暮らせる |
||
2 |
養護 |
最善の利益 |
地域 |
心身ともに健康に育つ |
||
3 |
監護 |
最善の利益 |
社会全体 |
心身ともに健康に育つ |
||
4 |
養護 |
基本的人権の保障 |
社会全体 |
安全で安心して暮らせる |
||
5 |
監護 |
最善の利益 |
社会全体 |
安全で安心して暮らせる |
正解と解説
正解は、3です。安全か心身かで迷いますが、「心身ともに健康に育つ」基本的な権利を保障しています。監護と養護の違いを理解していると整理するときに便利です。「監護」とは子どもの生活について社会通念上必要とされる監督・保護を行っていることをいいます。特別な事情のない限り「監護有」となります。一方、養護とは特別な保護のもとに助けることです。特に、児童・生徒の体質・環境に応じて適当な保護・鍛錬を加えて養育することをいいます。
養子縁組里親(平成30年後期)
次の文は、養子縁組里親に関する記述である。適切な記述を一つ選びなさい。
- 養子縁組里親に委託される児童は、養子縁組里親になる者と親族関係にある必要がある。
- 養子縁組里親には、里親になるために必須となる指定された研修の受講義務がない。
- 養子縁組里親は、都道府県で作成される養子縁組里親の名簿登録が任意である。
- 養子縁組里親には、欠格事由が定められていない。
- 養子縁組里親には、里親手当は支給されない。
正解と解説
正解は、5です。養子縁組里親には、研修の受講義務、名簿登録は必須です。また、欠格事由も定められています。
社会的養育(令和2年後期)
次の文のうち、「社会的養育の推進に向けて」(平成31年1月 厚生労働省)に関する記述として、適切な記述を一つ選びなさい。
- 社会的養護の対象となっている児童は、約1万5千人である。
- 児童養護施設は、約600か所ある。
- 委託里親数は、1万世帯を超える。
- 自立援助ホームは、約400か所ある。
- 地域小規模児童養護施設は、約100か所ある。
正解と解説
正解は2です。数字は「社会的養育の推進に向けて」(平成31年1月厚生労働省)からです。社会的養護の対象となる児童は、約4万5千人とされています。令和2年10月に公表された「社会的養育の推進に向けて」においても、約4万5千人とされています。
児童養護施設数は605とされています。令和2年10月公表の同資料においても同じです。委託里親数は4,245世帯とされています。令和2年10月公表の同資料においては、4,379世帯となっています。
自立援助ホームは、思ったより少なく154か所とされています。令和2年10月公表の同資料においては、176か所です。地域小規模児童養護施設は、391か所とされています、令和2年10月公表の同資料においては、423か所となっています。
乳児院(令和2年後期)
次の文は、乳児院に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
- A:乳児院は、保育所等訪問支援事業の訪問対象の施設である。
- B:乳児院の長は、施設の所在する地域の住民につき、児童の養育に関する相談に応じ、及び助言を行うよう努めなければならない。
- C:乳児院は、「児童福祉法」に定める「乳児」のみを対象とした施設である。
- D:「児童養護施設入所児童等調査結果(平成30年2月1日現在)」(令和2年1月 厚生労働省)によると、被虐待経験のある乳児院入所児が受けた虐待の種類は、「ネグレクト」が最も多い。
|
A |
B |
C |
D |
1 |
○ |
○ |
× |
○ |
2 |
○ |
○ |
× |
× |
3 |
○ |
× |
○ |
× |
4 |
× |
○ |
× |
○ |
5 |
× |
× |
○ |
× |
正解と解説
正解は1です。乳児院に入所している児童は、保育所等訪問支援事業の訪問対象です。このほか、保育所、児童養護施設、特別支援学校、認定こども園などが対象とされています。
「児童福祉法」第48条の2において、「乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、児童心理治療施設及び児童自立支援施設の長は、その行う児童の保護に支障がない限りにおいて、当該施設の所在する地域の住民につき、児童の養育に関する相談に応じ、及び助言を行うよう努めなければならない」と規定されています。
児童福祉法の第37条では「乳児院は、乳児(保健上、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には、幼児を含む)を入院させて、これを養育し、あわせて退院した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする」と規定されています。つまり「乳児のみ」ではなく「幼児」も対象です。
「児童養護施設入所児童等調査結果(平成30年2月1日現在)」(令和2年1月 厚生労働省)によると、被虐待経験のある乳児院入所児が受けた虐待の種類で最も多いのはネグレクトの66.1%です。次いで、身体的虐待の28.9%となっています。