グレーゾーンのこどもたち
2004年、発達障害に関する大きな動きがありました。それは「発達障害者支援法」が成立。翌年には「発達障害者支援法施行令」及び「発達障害者支援法施行規則」が策定されたことでした。これによって国及び地方自治体は、発達障害における以下の「8つの支援体制」の整備が急務となりました。
- 発達障害の子どもたちの早期発見
- 早期支援、早期療法の開始
- 適切な学校教育のための個別の支援計画や個別の教育的支援
- 就労支援
- 地域生活支援
- 権利擁護
- 家族への支援
- 専門的医療機関の確保
これによって発達障害の子供に対して、早期から発達段階に応じた一貫した支援が行われるようになりました。発達障害やグレーゾーンの子供とはどのような特性があるのか。これまでの研究や行動特徴などを紹介します。
発達障害の定義とは
そもそも発達障害とはなにか。文科省では次のように定義しています。
発達障害とは、発達障害者支援法において「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」
脳機能の障害という文言が記されています。現在アスペルガーや自閉症は、自閉症スペクトラム障害という呼び名になっていたり、時代とともに定義も変わってきています。
幼児期の発達と障がい
幼児期は言葉の発達をはじめとしたコミュニケ-ション能力、対人関係や社会性の育ちなど、その後の自立や社会参加の基盤を形成するための大切な時期です。この時期に適切な支援を受けられないと、就学後の学習や生活に様々な困難を抱えます。
発達障害児への対応の遅さで指摘されるのは、情緒不安や不適応行動などの二次障害が生じてしまうことです。しかし発達障害の診断は早期であるほど難しいです。つまり、幼児期では確定診断がつかない「気になる子」の人数はさらに多く、困っている子供や家族はもっといるとされています。
気になる子どもとは
気になる子ども、いわゆるグレーゾーンの子どもについては様々な研究がされています。研究者・本郷は、気になる子どもを「知的な発達に遅れは認められないが落ち着きがなく、他児とのトラブルが多く自分の感情をうまくコントロ-ルできないなどの特徴を持つ子」と定義しています。
落ち着きがなく、自分の感情をうまくコントロールできない子どもの括りであれば、かなりの人数がグレーゾーンに含まれてしまうかもしれません。また日高(2008)の研究では「発達障害児を含めた保育現場で保育者が気がかりになる子」と定義。こちらも一定数の子どもが想定できます。
グレーゾーンの行動特徴
グレーゾーンの子どもの特徴を調べてみました。西村・小泉ら(2001)の研究では気になる子の行動特徴を次のような5因子に分けています。
幼稚園・保育所の保育者を対象に保育上「気になる子」の行動特徴を研究した結果、「自閉症」「感情のコントロ-ル」「多動」「言葉の表現」「ことば遊び」の5因子が発達の遅れと関連していることが明らかになった。
言葉の表現や遊びが苦手なため、コミュニケーションが苦手ともいえそうです。
気になる子は13%以上
幼稚園や保育園で気になる子の割合はどのくらいなのか。郷間(2008)の研究によると、診断を受けていないものの保育上の困難を有する「気になる子」は男児21.04%、女児5.58%。全体で13.43%と報告しています。気になる子どもは、女の子よりも男の子の方が多いようです。
ちなみに自閉症の割合は10人に1人と言われています。さらに研究では、診断を受けている障害児に比べ「気になる子」の人数は約3.5倍に及ぶとしています。気になる子どもは障害が分かりにくいため周囲からの理解が得られにくいです。とくに母親は子どもの気になる行動を客観的に理解できずに戸惑うことも多いです。
母親の育児疲労感
子育てのストレスや悩みに関しては多くの研究が行われています。しかし「気になる子」を育てている家族の研究はまだまだ少ないです。斎藤(2009)は就学前の気になる子の状態の違いによって、保護者への支援方法を検討べきだと語っています。
夜型から朝方へ
近年ゲームなどの過度な利用、保護者中心の夜型生活などの影響から子どもの生活も遅寝遅起きや短時間睡眠となっています。こうした生活は子供たちの心身に対してネガティヴな影響を与えることが指摘されています。林の研究では子供の睡眠には父親よりも母親の関わりが高いといわれており、発達障害の子は高い割合で睡眠の問題があることも研究で報告されています。
疲労感を減らす方法
発達障害やグレーゾーンの子を育てている母親の疲労感は高く、こうした実態を受けて疲労感やストレスを軽減させる研究も進んでいます。マインドフルネス・エクササイズは親子関係の修復や改善、質の高い親子関係を構築する手段として報告されています。スウェーデンの医療機関でも取り入れられている「タッチケア」というスキンシップのエクササイズも睡眠やストレス軽減に高い効果があるといいます。
まとめ
子どもの発達の遅れを気にする親は多いです。専門機関で診断するのも大切ですが、その前に生活習慣を見直すのもありかもしれません。夜型傾向になっていないか、ストレスが高くなってイライラしていないかなどを振り返ってみる。もしかしたら、そうした要因が子どもの発達の妨げになっているかもしれません。本日もありがとうございました。
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