2012年は認知症高齢者数が462万人と、高齢者の約7人に1人が認知症であるとの統計が出ています。そして、2025(令和7)年には、約5人に1人が認知症であるとの推計もあり、その人数は約700万人となります。
現在、日本では4種類の抗認知症薬が承認されています。そのうち、3種類はアルツハイマー型、残り1種類はアルツハイマー型とレビー小体型の両方に保険適応となっています。今回は認知症とクスリについて紹介します。
- アルツハイマーと抗認知症薬
- 正常圧水頭症(normal pressure hydrocephalus)
- クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)
- 前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)
- 血管性認知症(vascular dementia)
- レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)
- まとめ
アルツハイマーと抗認知症薬
抗認知症薬は、若年性アルツハイマー型認知症への効果が2016年に確認されています。また認知症の症状や状態に合わせて、複数の抗認知症薬が併用されることがあります。
抗認知症薬であるアリセプトは、レビー小体型認知症にも用いられています。抗認知症薬は認知症の進行速度を緩やかにすることはできます。しかし、症状の進行を完全に止めることは出来ません。
正常圧水頭症(normal pressure hydrocephalus)
正常圧水頭症は髄液が脳室にたまり、周囲の脳を圧迫することで起きます。脳室にたまった髄液をお腹の方に流すシャント術を行うことで歩き方が9割が改善、物忘れは5割改善するといわれています。
正常圧水頭症では、歩行障害、物忘れ、排尿が間に合わないなどの症状があります。これらの症状は、標準的な手術で治す事が可能とされています。認知症の中で1割弱程度ですが、早期に発見しさえすれば改善が可能です。
クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)
クロイツフェルト・ヤコブ病の発症は原因不明です。残念ながら、現在のところは有効な治療法は確立されておらず、致死的な病気とされています。発症早期に特異的に診断する方法も開発されていません。
潜伏期間が約10年と長いため、発病前に投与することで発病を遅らせる薬が開発されましたが、現在まだ治験が進められている状況であり、早期発見で改善が可能であるとは言えません。
前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)
前頭側型認知症は、前頭葉と側頭葉の萎縮によって認知症が起こります。患者が少なく、原因など病気に対して解明が出来ていない事が多く、有効な薬も出ていません。
早期発見により本人や周りの人の状況を改善することは可能でも、病気自体を治療・改善する方法はまだ見つかっていません。
血管性認知症(vascular dementia)
血管性認知症は、患者数が多い認知症の一つです。脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳の欠陥の病気が原因となります。症状を改善させる確実な方法は現在ありません。
血管性認知症は脳卒中などにより、脳の神経細胞が死滅しダメージを受けてしまうことから起こります。早期発見し、生活習慣の改善を行うことでこれ以上の進行を食い止めることは可能ですが、一度ダメージを受けた細胞を再生させることは難しいとされています。
レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)
レビー小体型認知症は、男性の発症率が女性の2倍と言われています。治療に有効的な薬もあり、早期に診断することで治療効果が期待出来るとされています。ただし改善する可能性は確実ではありません。
認知症やパーキンソン病の薬を用いることで症状を緩和することはできますが、早期発見の場合でも病気自体を治すような改善は難しいとされています。
まとめ
抗認知症薬は進行を遅らせたり対症療法として用いられるものであり、完全に食いとめることは難しいとされています。
現在、投与が認められている抗認知症薬のほとんどがアルツハイマー型認知症が適応症になっています。レビー小体型認知症の場合、薬物に対する過敏症状が見られることがあり、服用量に注意する必要はあります。
しかし日々、医学は進歩しています。世界でも認知症の研究は進んでいるので、諦めることなく調べてみると特性にあった治療方法が見つかるかもしれません。「夢は諦めなければカタチを変えて叶っていく」といいます。認知症の特効薬が開発される日も遠くないかもしれません。
本日もありがとうございました。