ツナガレ介護福祉ケア

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悩んだ時のコミュニケーション技法「逆転移」「視覚障害」「構音障害の心理」~ツナガレケア

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コミュニケーション技術として用いられる手法に「傾聴」があります。傾聴を提唱したアメリカの心理学者、カール・ロジャースによると傾聴の3原則には、「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」があるそうです。この3原則の意味をシンプルにまとめると、次のようになります。

  1. 共感的理解:相手の立場にたって、相手を理解しようとしながら聴くこと
  2. 無条件の肯定的関心:自分の判断や評価を入れず、相手の話を否定せず、相手がどうしてそのように考えたのかを思いながら聴くこと
  3. 自己一致:聴き手は相手に対しても自分に対しても真摯に話を聴くこと

なかなか簡単なようで難しいですよね。特に家族や親しい友人に対しては、感情も入ってしまうので無条件の肯定的関心には、ある程度の訓練が必要かもしれません。

介護の現場で大切なのはコミュニケーションですが、さまざまなケースもあり悩まれる方も少なくありません。この記事では視覚や構音障害のある方などとのコミュニケーション技法を紹介します。

 

 

知っておきたい「逆転移」とは?

ケアを受ける人(利用者)が、過去に関わった人物に対する親しみや怒りをケアをする側(介護スタッフ)に重ねることを「転移」と言います。一方、介護をしている人が陥りやすい心理状態に「逆転移」があります。逆転移とは、例えば亡くなった祖母と似ている利用者に、スタッフが無意識に頻繁に関わるような行動です。

もちろん利用者に丁寧にケアすることは素晴らしいのですが、個人的な感情が入り込むと過剰なサービスになったり、相手が思ったような反応をしないことで苛立ったり、腹を立てたりする可能性もありますので、注意が必要です。このほかにも生じやすい心理には、「投射」「代償」「同一化」「反動形成」などがあります。

投射の心理

人が人を嫌うということは好ましいことではなく、自分が「嫌い」という感情を持つことで罪悪感を抱える人もいます。その感情を自分ではなく相手が持っていると考えることで罪悪感を解消しようとする心理があり、これを「投射」と言います。

代償の心理

直接的な行動ではなく他の行動でストレスを解消しようとする心理を「代償」と言います。

同一化の心理

尊敬する人物の言動を真似ることで自分自身の価値が高まったように感じようとする心理を「同一化」と言います。

反動形成の心理

本来とは反対の感情を表に出すことで本来の感情を抑え込もうとする心理を「反動形成」と言います。

直面化の技法とは

直面化の技法とは、利用者の感情と行動の矛盾点を指摘する技法です。たとえば話をするなかで、相手の言葉と行動の間に矛盾があると感じたとき、矛盾している事実や矛盾点を指摘していきます。

他にも面接の技法には「開かれた質問(閉じられた質問)」「明確化」「要約」「感情の反映」などがあります。うなずきやあいづちを用いて、利用者の話を促すことも効果的です。

構音障害のある方とのコミュニケーション

構音障害とは、話をするための筋力が低下することでうまく発声・発音ができない障害です。この障がいのある方に対しては、聞き取れないところは聞き直すことも大切です。わからないまま話を進めたり、わかったふりはしないこと。相手の言葉を正しく理解することが信頼関係を構築するためにも重要です。

構音障害のある人は話を理解したり、話したい内容をまとめる能力には問題ありません。聴覚には問題ありませんので、耳元で大きな声を出す必要もありません。話を聞き取りにくい場合には、筆談してもらうことも有効な方法です。

視覚障害のある方とのコミュニケーション

目の不自由な方に対しては、その方の特性を知ることが大切です。全盲の方もいれば、一部分のみ見えない方、うっすらぼんやり見える方もいます。その上で重要なコミュニーションのポイントは「はっきり・わかりやすく」です。

まず心がけたいのは、正面からお互いの顔がみられるよう話し掛けることです。会話では、「こちら」「そちら」の言葉は使わないようにします。目をつむってこの言葉を聞いてみると分かるのですが、「こちら」や「そちら」では何を指しているのか伝わりません。ついつい使ってしまいがちなのですが、具体的な物の名前や場所の名前を示すことが大切です。また目の不自由な方の中には、聴覚がすぐれている方も少なくありません。声の強弱や長短、抑揚などを活用するとよりコミュニケーションがとれるようになります。

まとめ

ケアを受ける人は、過去に関わった人物に対する親しみや怒りをケアをする側の人に重ねることがあり、これを「転移」と言います。「逆転移」とはその逆に、ケアをする側の人がケアを受ける人に対してそのような感情を生じさせることを言います。

構音障害の方とのコミュニケーションでは、聞き取れない時はもう一度話してもらう勇気も大切です。そのことで会話の理解やお互いの安心感に繋がります。

視覚障害のある方とのコミュニケーションでは、なるべく情報を言語化すると喜ばれるケースが多いです。ただしアナウンサーではないので上手く喋ろうとする必要はなく、自分らしい言葉で話すと良いのかなと思います。

さまざまな技法を活用してコミュニケーションに役立てていただけると幸いです。本日もありがとうございました。