ツナガレ介護福祉ケア

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高次脳機能障害とは?脳の疾患で知っておきたい症状や介護のポイント

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脳のはたらき

高次脳機能障害とは、病気や事故などによって脳が損傷し、言語や思考などの高次な脳機能がスムーズに働かなくなった状態をいいます。

障がいが見た目ではわかりにくいことから、トラブルを起こしやすく、誤解も受けやすいです。今回は、高次脳機能障害の種類や症状について紹介します。

 

 

高次脳機能障害の種類と症状

交通事故や病気によって脳にダメージを受けて起こりやすいのが、高次脳機能障害です。認知機能に障害が出るため、いろいろな症状があります。

よくみられる症状は記憶障害注意障害見当識障害遂行機能障害です。普段の生活に支障をきたすことも少なくありません。

脳の損傷による4つのポイント

高次脳機能障害は、脳の損傷により起こるものです。多くは交通事故や脳卒中などが原因です。大きく分けて「記憶障害」「注意障害」「遂行機能障害」「社会的行動障害」の4つに分類されます。

記憶障害

記憶障害は、側頭葉内側の障害により引き起こされる症状です。大きく分けて2つの種類があります。①新しいことを覚えられなくなる「前向性健忘」と、②昔のことを思い出せなくなる「逆向性健忘」です。

周囲が困ることとしては、日常生活の中でも約束を守れなくなったり、大切な物をしまった場所を忘れてしまったりすることです。また何度も同じことを聞いてしまったりと、ご本人自身も日常生活や仕事をする上で困難を生じます。

注意障害

注意障害は、前頭葉や頭頂葉の障害で引き起こされます。物事に集中して取り組むことができず、ちょっとしたことで気が散ってしまいます。そのため、本人が集中できる時間に合わせて、適度な休憩を促すことが必要です。

例えば会話や思考がとぎれとぎれになり、まとまりのない会話になったり、行動の内容に一貫性がなくなったりします。与えられた仕事をすぐに放り投げてしまったり、人の話を聞きながらメモを取れない、誰かに呼びかけてもすぐに反応ができなくなったり、といった症状もみられます。ただし、こうした症状もトレーニングなどで改善することは可能です。

遂行機能障害

遂行機能障害は、前頭葉の障害により引き起こされることが多いです。計画性をもって行動したり、周囲の変化する状況に対応できないのも特徴です。話したり、書いたり、聞いたり、計算したりするなど、一つ一つバラバラな作業をさせても問題がないことが多いです。また思いつきだけで行動して失敗したり、約束の時間を守ることができなくなったり、いつまでも決断できず段取りが悪くなったりといった症状もみられます。

「遂行機能」とは物事をすすめていくときに、①目標を決める、②目標に向かって計画をたてる、③計画に沿って実行していく、④目標が達成できるよう、実行の過程でうまくいかなければ調整を図るという一連の流れに対することです。

「遂行機能障害」は、これらがうまくいかないのが特徴です。約束の時間が守れない、計画性がなく思いつきで行動するなどがそうです。

社会的行動障害

社会的行動障害は前頭葉と側頭葉の障害によって引き起こされることが多いです。例えば、だれかれ構わず怒鳴り散らす、暴力的で子どもじみた行動を起こす、なども特徴です。一方で、感情を失って無関心になるケースもあります。急に泣き出したと思ったら、急に怒り出したりして、周りを困惑させてしまことも少なくありません。

また欲しいと思ったものを我慢できなくなることもあり、お菓子を食べ続けたり、タバコを繰り返し吸い続けたり、手元のお金がなくなるまで散在してしまったり、といった症状が見られることもあります。

高次脳機能障害の介護

高次脳機能障害の着衣の介護では、衣類に印をつけることで、左右がわかるようになります。また口頭だけではなく、文字や絵を用いて簡潔に手順を記した用紙を確認しながら説明すると理解しやすいです。着衣失行ある利用者さん服に畳んで渡すと、上下左右や裏表などの認識ができなくなります。着衣の方法は統一したほうがよいです。

前頭側頭側認知症

前頭側頭型認知症には、次のような特徴があります。

 

・同じ行動を繰り返す
・同じ食べ物(特に甘い物や味の濃い物)にこだわる
・脱抑制(反社会的行為)
・記憶力は保たれることが多い

 

こうした症状は、脳の前頭葉側頭葉が萎縮することが原因です。本人に悪気があるわけではありません。穏やかに過ごせるよう、適切な接し方やケアをすることが必要です。対処法としては、同じ行動を繰り返す特徴があるため、生活をルーティン化するのも効果的です。

毎日の散歩や簡単な家事や手芸など本人の好きなことを日々のルーティンに入れる、などの工夫もおすすめです。ただし本人と周囲の人、双方が負担とならない生活習慣を確立できるような支援が重要です。

慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫とは、頭蓋骨のすぐ内側の硬膜と脳の間に血液がたまって塊になり、それが脳を圧迫して認知症がでる症状です。転んで頭を強く打ったり、頭上に物が落ちて、頭に強い衝撃をうけたりということが原因です。

けがをしたときは、こぶができただけだと思っていても頭の中ではじわじわと出血していたりします。手術で血腫を取り除けば、予後は良好な疾患であり、認知症症状も改善します。

正常圧水頭症

正常圧水頭症とは、脳脊髄液が溜まって脳を圧迫する病気です。脳脊髄液がうまく吸収されないことが原因で、脳室の拡大が起こります。正常圧水頭症は、通常、高齢者に起こる脳と神経に関わる病気です。歩行障害、認知機能低下、尿失禁の3つの症状が特徴です。

ラクナ梗塞

ラクナ梗塞とは脳梗塞の一つです。脳の細い血管が詰まって起こる病気です。ラクナ梗塞は、穿通枝という200㎛ほどの細い血管が詰まることで起こります。

まとめ

脳には、温度・痛み、言語理解、感情制御、記憶や物事の判断、聴覚。色・形、情動の表出などたくさんのはたらきがあります。高次機能障害は、加齢や病気・外傷によって脳が損傷を受け、言語・記憶・認知・判断力・情緒などが侵される病態です。

前頭側頭型認知症の場合、本人と周囲の人が納得できる生活習慣を確立することが大事です。慢性硬膜下血腫は、頭蓋骨の内側にある硬膜と脳を包むくも膜の間の硬膜下腔に血液が溜まってしまう疾患です。この血腫が大きくなると脳を圧迫し認知症の症状がでますが、血腫を手術で取り除けば症状は改善します。

脳の疾患は突然やってくることも多いです。日頃から健康に気を配ることが予防につながります。本日もありがとうございました。