ツナガレ介護福祉ケア

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認知症の検査やトレーニング、ADLに最も支障が少ない姿勢とは?~ツナガレケア

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認知症と記憶障害

70代になると「最近、電話番号が覚えられない」とこぼす方が増えてきます。自宅へ電話するときは間違えないが、あまり電話しない場所にかけるときは、メモを見て一つ一つの数字を確認しながらでないと番号を間違える。これまでスムーズに覚えられたのに……と認知症を疑う人もいます。しかし受診しても、ほとんどが認知症でないケースが多いです。こうした場合に考えられるのは、短期記憶の障害です。

 

 

短期記憶とは

短期記憶とは、保持期間が数十秒程度しか保てない記憶のことを言います。心理学領域では覚えられる量・期間が決まっているとされています。保持するには反復が必要で、何度も何度も復唱しないがぎり、自動的に消滅すると仮定されています。

短期記憶障害は、直近の記憶が失われやすい事を言います。今朝食べた食事のメニューを思い出せない。症状が進むと5分前に食事をしたのかどうかも思い出せなくなってしまう事もあります。ほかにも記憶にはいろいろな特性があります。

エピソード記憶

人生の個人的な経験の記憶のことを言います。覚えておこうと意識しなくても、自然に覚えている記憶のことです。簡単にいえば思い出です。子どもの頃は算数が苦手だったなあ、いたずらをして先生に怒られたなあ……など時間や場所、感情などの情報をもった個々の経験や体験のことです。

意味記憶

意味記憶は、一般的な知識に関する記憶です。物事の意味を表し、一般的な知識・情報について学習しておぼえます。1年は12カ月である。人間は哺乳類である。甲子園があるのは兵庫県である。などといった知識や情報の記憶です。

手続き記憶

無意識的に行うことができる、生きていくうえで必要な基本的な動作を言います。一度身につけると、長い間使っていなくても忘れにくい記憶です。自転車の乗り方や泳ぎ方、車の運転操作などが含まれます。しばらく自転車に乗らなくてもちゃんと乗ることができるのは手続き記憶が機能しているからです。

遠隔記憶

遠隔記憶とは個人の生活史や歴史的な出来事の再生能力です。いわゆる昔のことを覚えているかどうかです。数カ月から数十年にわたる記憶のことを言い、過去の社会的な事件については高齢になっても覚えています。

認知症と記憶

認知症は、認知機能の低下によって生活障がいを起こした状態をいいます。この認知機能の1つに記憶があり、記憶力の低下が一般的には物忘れと呼ばれます。認知症の原因の多くを占めるのがアルツハイマー病ですが、この症状では、まずエピソード記憶の障害がみられるといわれます。

はじめのうちは過去の記憶や判断力、計画性などが残っているので日常生活は自立していることが多く、この段階を「軽度認知障害」と呼びます。この段階で対処することによって予防につなげることができます。

認知症の検査とは

認知症の検査方法はさまざまです。その中でも、口頭での回答と図形の模写などで簡便に行える検査に、MMSE(ミニメンタルステート検査)などがあります。有名な認知症の検査は次のとおりです。

MMSE

MMSEは、記憶、計算、言語的能力、図形的能力を測定するための、世界で一番有名な知能検査といわれています。検査では、記憶力・計算力・言語力を測定し、30点満点のうち何点取れたかで知能の低下を診断します。日付や場所、物の名前や計算、図形の模写などを口頭による質問形式で行います。

FAST

FASTは、日常生活の様子(機能)によってアルツハイマー型認知症の病期を判定する評価表です。アルツハイマー型認知症の段階を、ADLの障害の程度によって分類します。口頭での回答を得る形ではなく、第三者が見て客観的に判断します。

改訂長谷川式簡易知能評価スケール

長谷川式は、主に記憶力を中心とした簡易知能検査です。言語性知能検査のため、失語症・難聴の方には難しいです。検査では、口頭での回答を得て認知機能を評価します。介護度の認定調査にもよく使われています。図形の模写の項目はありません。

CDR

CDRは、認知症の重症度を評価するための検査です。6項目5段階で評価します。検査では医者の診察や、家族からの情報を元に評価されます。

日常生活自立度の判断基準

認知症高齢者の「日常生活自立度」という尺度があります。本人やご家族で認知症の症状かどうか気になる方は、以下の判断基準が参考になるかと思います。

レベル1

若干の認知症の症状はあるがほぼ自分でできる。何らかの認知症はあるものの、日常生活や社会的にほぼ自立しています。

レベル2

認知症の症状が多少目立つものの、声かけ程度で自立が可能な状態です。日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば生活はできます。以下は、具体例です。

  1. たびたび道に迷う。
  2. 買物や事務や金銭管理など、それまでできたことにミスが目立つ。
  3. 服薬管理が出来ない。
  4. 電話の応対や訪問者の対応など一人で留守番が出来ない。 

レベル3

介護を必要とするレベルの認知症となります。生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが起こります。次のような症状がみられます。

  1. 着替え、食事、排便、排尿が上手にできない、時間がかかる。
  2. やたらに物を口に入れる。
  3. 徘徊、失禁、大声や奇声をあげる。
  4. 火の不始末、不潔行為、性的異常行為などの症状がみられる。

レベル4

常に介護や人の目が必要なレベルとなります。生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする状態です。

ランクM

レベル1から4のほかに、ランクMがあります。これは、せん妄や妄想による他害や自傷の恐れがあり専門医の治療を要する状態です。どのレベルにあってもMレベルになる可能性はあります。ただし原因を治療したら元のレベルに戻る可能性も高いです。

ADLに最も支障が少ない姿勢は?

ADLとは日常生活動作のことです。つまり、日常生活を送るために最低限必要な動作のことです。食事や入浴、排せつ、移動などが含まれます。認知症で困ることは、こうした日常的な動作を行うことが困難になることです。逆にいえば、こうした動作が可能であれば、認知症になっても周囲を困らせることは少ないといえます。

良肢位のすすめ

日常生活動作への支障が少なる姿勢は「良肢位(りょうしい)」を保つことと言われています。良肢位とは、関節の拘縮を起こりにくくするため、そして間接の拘縮が起こっていても日常生活動作に支障が出ないよう、適切な関節の角度を保つ姿勢のことを言います。

クッションなどを用いることで、適切な関節の角度を保つことができます。また、体が接触している部分が増えることにより、局所的にかかっていた圧が分散されるため、褥瘡(床ずれ)の予防にも繋がります。

リアリティ・オリエンテーションとは?

リアリティオリエンテーションとは、見当識障害を解消するためのトレーニングです。「今日は○月○日です」「ここは△△(場所)です」「この方は◇◇さんです」などと、繰り返して呼びかけたり質問したりしながら、現実認識を深めていきます。

日付け、季節、今いる場所が分からないなどの見当識障害に対する訓練(現実見当識訓練)に効果があるとされています。

まとめ

認知症の言動は、日常生活でもみることができます。そのレベルを知るために効果的なのが日常生活自立度判定基準です。どのくらい進んでいるのか、特徴などを知ることで早期の対策が可能になります。

認知症の理解を深めることで、いざという時に役立つことも多いです。今回の記事が参考になれば幸いです。本日もありがとうございました。