介護職は腰痛もちの方が多いです。とくに移乗介助を行うときは注意が必要です。移乗とはトランス(トランスファー)ともいいますが、車いすからベッドに移る、車いすから便器に移る、車いすから椅子に移などの「乗り移りの動作」のことです。
このトランスの際に、腰をグギッとやってしまう方は少なくありません。力まかせにやったり、油断していると腰に激痛が走り、しばらく動けないこともあります。腰を痛めないために気をつけるポイントはいくつかあります。知っておきたいのは「支持基底面を広くとる」「重心を低く」「体をねじらない」などのボディメカニクスの技術です。
ボディメカニクスのやり方
現在、身体介護を行う際には、ボディメカニクスを活用する事が勧められています。介護福祉士の初任者研修でも取り入れられています。もちろん普段の生活や家族の介護でも使えるので覚えておいて損はありません。
ボディメカニクスとは
ボディメカニクスとは、「最小限のパワーで介護ができる技術」の一つです。人間の関節や筋肉、骨が動作する際の力学的関係を利用しています。ポイントとしては次のようなものがあります。
- 支持基底面を広くし、重心を低くする
- 身体をねじらない
- 本人にできる限り接近する
- 本人の身体を小さくまとめる
- 膝の屈伸を利用し水平移動
- てこの原理を応用
一昔前のやり方と最新の方法では異なることが多いです。それだけ介護の技術は進化しているといえます。昔のやり方にこだわるのではなく、腰を痛めない方法を身につけるとラクに介護ができるようになります。
支持基底面積を広くする
ボディメカニクスの基本原則に「足先を移動の方向に向け、身体をねじらない」ということがあります。そして支持基底(しじきてい)面積は広いほうが安定します。支持基底面とは身体を支える面積のことです。分かりやすく言えば、立っているときに両足で囲まれた面です。足をしっかりと開き、膝を曲げて、腰を落とす姿勢が一番安定した姿勢です。
大きな筋群をつかう
ボディメカニクスでは、大きな筋群を使用するようにします。大きな筋肉を使うと無理なく介護ができ、介護者の負担を軽減できます。大きな筋群や力学を最大限に利用すれば、指先や腕の力はあまり必要ありません。そのため力のない女性でも安定した介助を行うことが可能です。
重心は低く、摩擦の力を減らす
重心は低くしたほうが安定します。介護者の重心を出来るだけ低くした方が、介助者への負担も少なく、安定性が増します。また摩擦の力を減らすため、背部が接する面積を出来るだけ狭くします。狭くしたほうが摩擦が小さく、移動させやすいです。
まとめ
ボディメカニクスは、介護の仕事を長く続けるのならば絶対に取り入れるべき考え方です。コツは、足を肩幅ほどに開いて立つこと。支持基底面積が広がり身体が安定します。また重心を低くすることによって安定し、安全に介助ができます。
言葉で覚えるよりも、実際に体験した方がわかりやすいと思いますので、家族や同僚に協力してもらい、やってみると良いでしょう。