介護に限らず、高齢者に対して「年寄りだから○○だ」というような思い込みからくる年齢差別を聞くことがあります。こうした年齢差別をエイジズムといいます。身体的な機能低下ではなく、高齢者に対して主観で否定的な見方をすることです。
たとえば、「老人は頑固だ」「~するには年をとりすぎている」などの偏見や差別もエイジズムのひとつです。多様性が叫ばれる中、ステレオタイプの年齢主義は少なくなってきそうですが、実際のシニアはどんな価値観を持っているのでしょう。今回は幸せな老後について考えてみました。
自宅介護が理想
2012年度に内閣府で行われた「高齢者の健康に関する意識調査結果」では、自宅で介護をしてほしいと思っている方が多いことが分かりました。
子どもや孫には「介護が必要になったら老人ホームに入った方が気楽」と冗談まじりに言っても、やはり本音は別のようです。やはり介護が必要となったときも、住み慣れた住居で老後を迎えたい人は少なくありません。
- 自宅で介護してほしい:34,9%。
- 病院などの医療機関に入院したい:20%
- 介護老人福祉施設に入所したい:19,2%
- 介護老人保健施設を利用したい:11,8%
老後の本音は
老人福祉施設での暮らしは、どちらかといえばホテル暮らしに近いように思います。至れり尽くせりで便利なのだけど、自宅のように自由気ままに暮らせるわけではありません。食事の時間が決まっていたり、他人の目が気になったり、生活の制限もあります。
旅行から帰ってきたときに自宅でホッとする感じ。やはり愛着のある家で介護が必要になっても過ごしたいのが本音。自宅での介護を「在宅介護」と言いますが、経済的な負担も少なく、住み慣れた環境で生活できるので精神的に安心します。
アンケートでは「子どもの家で介助してほしい」は最下位でした。老後は子どもに負担をかけたくないのが親心なのでしょう。
ライチャードの老年期5類型
ライチャードの老年期における人格の5類型があります。老年期における人格の5類型では、適応性の観点から高齢者のパーソナリティ特性を以下の5つに分類しています。
円熟型
この型は、日常の生活に対して思慮的、建設的に臨むタイプです。家庭や社会の人間関係に満足し、趣味などにも喜びを見出すことができます。自分自身を現実的に受容でき、過去を悔いたり、現実の喪失を嘆くことなく老いることができるタイプです。
安楽椅子(ロッキングチェアー)型
物理的にも情緒的にも他人のサポートを待つタイプです。社会人としての責任から自由になれたことを喜び、満足度も高いです。老いることも、安楽な満足をもたらすものと感じているタイプです。
装甲(自己防衛)型
不安や防衛機制が強いタイプです。自分の業績に対してこだわりをもち、退職して怠惰な生活に陥ることを嫌います。仕事や活動を持続させることによって、身体的な衰えや無力感から自己を防衛します。
憤慨(外罰)型
この型は、自己の不満や失敗を他人のせいにし、敵意を向けて非難や攻撃しようとするタイプです。自分の業績に対する関心は高いが、仕事に対して情緒的困難を経験し、適応性は低いといえます。老いることと自分とを調和させることが難しいです。
自責(内罰)型
過去を振り返り、失望と挫折感を感じるタイプです。その責任を自らに課し、自らを責め自らの不幸を嘆いたりします。老いるにつれ、不適応感と自分が無価値であるという思いが強まり、うつ的になっていくことが多いです。
まとめ
高齢になれば老いは否応なくやってきます。その時、大切なのは他人や世間の評価ではなく、自分自身の心のありようだと思います。幸せな生活を送る円熟型は、現状にも柔軟性があり、未来に希望をもち、積極的に社会参加を行うタイプです。他方、自責型は自分の人生について後悔や自責の念が強く、孤立しやすいタイプです。
男性の場合、退職後も仕事を気にかけているケースは少なくありません。仕事にプライドを持ちすぎるあまり、装甲型や自責型に陥るケースもあります。人生が長くなるのは良いことばかりではないかもしれませんが、自身の本音と向き合いながら、柔軟に対応していくことが幸せな老後を送るヒントかもしれません。
本日もありがとうございました。