発達障害。その特性には、他人とのやりとりが苦手、コミュニケーションがとれない、極端な人見知りなどがあります。また初対面の人に「その服、変」などストレートにいう……いわゆる空気が読めないのも特徴です。
IQの高い、勉強ができる系のコミュ障でみられるのは、他人の話に興味がない、冗談やお世辞、皮肉が通じない、無感情で雑談を嫌うタイプもいます。
発達障害がある人と向き合うときに効果的な技法を紹介します。
脳機能の障がい
発達障害は、脳機能の発達に関係する障がいです。生まれつき脳の働きに違いがあるのが特徴で、「理解の困難」「発信の困難」「やりとりの困難」などがみられます。
周囲から理解されにくい障害ですが、子どものうちからの気づきと、適切なサポートによって優れた能力が発揮される場合もあります。
①絵カードで伝える
発達障害のある方には、①見えない物の理解が難しい、②音声言語の理解が苦手、③聴覚よりも視覚が発達しているタイプがみられます。
言葉で聞くよりも目でみると理解できる子供には、絵カードを用いて、気持ちや好きなモノを確認するとコミュニケーションがスムーズになります。
たとえば、「花」と「車」の2枚の絵カードを出して「どちらが好き?」と聞いていく方法です。ポイントは見える情報をシンプルにすること。絵カードにたくさんの情報があると理解できなかったり、考え込んでしまうことがあります。
聴覚情報処理障害とは
「誰もが同じように聞こえるだろう」という先入観はキケンです。発達障害の代表的な特性に、聴力は正常に認識することはできても、言っている内容が理解できないという現象があります。
これは「聴覚情報処理障害」と呼ばれます。具体的には、大勢での会話が聞き取りにくい、友達との会話が頭に入ってこないなどです。健常者でいえば、長い話を聞いていると集中力が途切れて、言葉は聞き取れるけれども、内容が入ってこない状態です。
発達に凸凹のある方は聴力検査も大事。耳掃除もこまめにすることをおすすめします。
②伝える量に配慮する
発達障害のある方と話すときは、伝える量に配慮することも必要です。言葉でたくさんの情報を伝えず、3つをひとまとめにして伝えると効果的です。
今日のスケジュールを伝える場合、これからの流れを「散歩、お風呂、食事」と、紙やボードに書いて説明。次の行動を確認すると安心されます。
伝える量を減らして予定が終われば消す。そして次の予定を3つぐらい伝える。ビジネスシーンでのToDoリストの要領と似ています。
③理解できるまで待つ
発達障害のある方への支援では、待つことも大事です。じっと止まっている利用者さんがいると、ついつい手助けしてしまいそうですが、本人が時間をかけて考えている場合もあります。介護もそうですが「できないことを何でもやる」のではなく、残存機能の低下を防ぐケアが大切です。
④苦手な刺激に配慮する
発達に障害のある方は、音に敏感な方もいます。交差点の音や運動会の時にかかる徒競走の音など……苦手な音が消えるまで、ずっと耳をふさいでいたりします。
一般的に好まれている曲を誰もが好きなわけではありません。むしろ電車の音などを聞くと落ち着く方もいます。自身の思い込みや先入観を捨てることが大事だと思います。
⑤メモ帳を活用しよう
コミュニケーションが苦手な理由に「誰に伝えたらいいのか分からない」、「どう伝えたらいいのか分からない」があります。
言葉が上手に喋れない方には、介護士が感じたことを文書で書いて見せると、理解してもらえることがあります。言葉だけでなく、メモ帳を活用するのも効果的な方法のひとつです。
ライフサイクルに応じた支援
発達障害がみられる場合、成長に応じた支援が必要です。ライフサイクルによって必要な支援は次のとおりです。
- 乳児期:家族が障害を受け入れられるように支援します。
- 幼児期:保育園や幼稚園などの障害児の受け入れによる地域での生活の支援や、知的障害のある人の家族同士の情報交換などを支援します。
- 学童期:将来を見据えた援助が必要な時期になってきます。また、体の急激な成長に合わせた援助も必要。体も心も大きな変化がみられる時期なので家族で解決しようとせず、社会資源を利用できるよう支援します。
- 成人期:地域で生活する自立プログラムや福祉サービスの利用ができるよう支援します。進学、一般就職、福祉就労、デイサービスの利用などです。
- 壮年期:両親と死別した後のことを考え、自立した生活が送れるように、どこでどのように生活していくかを考え生活への適応を支援します。
相談窓口を利用しよう
行政でも発達障害のある方やご家族への相談窓口を用意しています。成人期になって知的障害などに気づかれる方もいます。ハローワークでは、職場になじめない方やコミュニケーション能力に困難を抱えている人への支援も行なっています。
コミュニケーション障害の方は、様々な困難を抱えています。しかし工夫や支援方法によって、ある程度は克服することは可能です。障害の分野はまだまだ発展途上です。利用者、家族、関係機関が連携しながら進化させていきたいです。本日もありがとうございました。