ツナガレ介護福祉ケア

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介護「65歳問題」障がい者の壁〜共生型サービスとは?

知っておきたい「65歳の壁」

障がいのある方が65歳を迎えると、介護保険の申請を求められます。これは、障害者総合支援法から介護保険法に移行するための手続きです。一体何が変わるのでしょう。各地では、これまで受けていた障害福祉サービスが受けられなくなったり、自己負担金が増えて困っている…などの声も聞かれます。今回は知っておきたい「65歳問題」について考えてみました。

 

 

障がい者「65歳の壁」とは

社会保障制度には原則となる保険優先の考え方があります。障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合、「介護保険サービス」が優先されるというものです。つまり、障がいのある方が65歳を迎えると原則、介護保険サービスに移行されます。

障がい福祉サービスから介護保険制度へ移行した場合、受けられるサービスが減る可能性があります。これまで安い費用だったサービスが、1割負担(所得が高ければ2割負担)となり、負担が増大することもあります。これがいわゆる、65歳の壁といわれるものです。

保障制度の優先順位

日本では病気などで保障が必要となると、受ける保障制度に優先順位が規定されています。優先される順番は、①損害賠償制度→②業務災害補償制度→③社会保険制度→④社会福祉制度→⑤公的扶助制度です。

この優先順位をみると介護保険は、③の社会保険制度に該当します。一方、障害者福祉サービスは④の社会福祉制度になります。そのため、障がいのある方が65歳(特定疾患は40歳)になると、介護保険サービスが優先されることになるのです。

介護保険の問題点

介護保険は身体介護が中心であり、障がい特性を考慮したシステムではありません。認定検査に関しても、介護寄りの調査であることが指摘されています。

具体的なケースとして、目の不自由な方で考えてみます。目に障がいのある方は、慣れた環境では自立しています。そのため身体的介護はあまり必要がありません。全盲の方でも、要支援か非該当になることがあります。このように十分なチェックは行われずに軽度に判定されることも少なくないのです。

障がいサービス

目の不自由な方の支援に、同行援護があります。同行援護は、移動に困難がある視覚障がいのある方が外出するときに本人に同行します。そして、移動に必要な情報や移動の援護、排せつ、食事などのケアを行います。
外出先での情報提供や代読・代筆などの役割も担うサービスですが、こうしたサービスも知られていないことが多いです。ガイドヘルパーとホームヘルパーが関わることの違いを理解している人も少ないのが現状です。

障害支援区分の違い

支援区分は、利用者一人ひとりへのサービスを決める重要なものです。しかし、介護と障がいではサービスを受けられる区分でも違いがあります。

介護では、要介護の区分は5です。一方、障がい者は6段階の区分(区分1~6:区分6の方が必要度が高い)を設けています。これは、障害の種類・特性によって自立した生活を送るために必要なサービスを目指しているためです。

真の問題

「65歳の壁」に関する真の問題は、介護保険ではダメでも、障がいの保険を利用すれば、これまでのサービスが受けられることを多くの人が知らないことです。たとえば、同行援護や歩行訓練、就労支援、補装具の給付は併給が可能です。

介護と障害のサービス併給は、行政の担当者も知らないことがあります。これは、社会福祉制度の複雑さに加え、数年ごとに担当者が部署移動することも関係しています。

「共生型サービス」とは

共生型サービスとは、介護保険か障害福祉のどちらかの指定を受けている事業所であれば、もう一方の指定が受けやすくなるサービスです。「訪問介護」を行っている事業所は、障害福祉サービスの「居宅介護」や「重度訪問介護」の指定が受けやすいです。

共生型サービスは、2018年に導入された新しいサービスです。そのため知らない人が少なくありません。事業所には、ホームヘルプサービスやデイサービス、ショートステイなどがあります。

適した施設は?

共生型サービスは、自宅を訪問する介護サービスに適しています。その理由に人員配置があります。訪問介護をはじめる場合、常勤換算で2.5 人以上の配置が必要です。障害福祉でも同様の常勤換算なので、同一事業所でサービスを提供しやすいといえます。

一方、デイサービスやショートステイは人員や施設環境(面積等)の整備が必要なこともあり、少々ハードルは高いかもしれません。

 まとめ

今後、共生型サービスのニーズは高まっていくでしょう。しかし介護と障害の事業を一体化するには、それぞれの特性を理解することが大切です。介護分野のケアマネジャーと障がい分野の相談支援専門員では、フィールドが違うので共生型サービスを計画するには研修が必要です。

また、共生型サービス事業を申請する際の簡略化も課題です。小規模な事業者の中には書類作成の複雑さに辟易して二の足を踏むこともあります。

共生型サービスの成功には「情報の共有」が不可欠です。まだまだ手探りの状態が続きますが、各事業所が培ったノウハウを行政が吸い上げて広く提供することでサービスの質は確実に上がっていくと思うのです。本日もありがとうございました。

 

 

<参考>

65歳問題を知っていますか?ー視覚障害リハビリテーション協会・吉野由美子