福祉の資格のひとつに「社会福祉士」があります。
困っている方の相談や援助の場において重要な役割を担っていますが、仕事内容を知っている人は少ないかもしれません。
今回は、社会福祉士のさまざまなアプローチについて解説します。
心理社会的アプローチ
心理社会的アプローチを提唱者した人物は、ホリスです。アメリカの研究者で、「状況の中の人」という視点を大事にしました。
心理社会的アプローチは相談者に対して、コミュニケーションを通して関わっていきます。現在、日本の相談支援の流れは、「インテーク⇒アセスメント⇒プランニング⇒援助の実施」となっていますが、その原型ともいえます。
問題解決アプローチ
問題解決アプローチを提唱したのは、パールマンです。「ケースワーカーは死んだ」という言葉で有名です。
パールマンは、相談者自身が問題の解決者と捉え、次のような「MCOモデル」を提唱しました。
MCOモデルでは、相談者の問題解決への「動機づけ」、その解決のために必要な「能力」、その能力を駆使して問題解決にのぞむ「機会」の3つを重要視している。
問題解決アプローチで大切なのは、「ワーカビリティ」という概念です。簡単にいえば本人のやる気です。
つまり、本人がその役割を理解して、問題解決に取り組むことが何より大切だと考えたのです。
診断主義アプローチ
診断主義アプローチは、ハミルトンやトウルらによって提唱されました。
個人の問題は社会環境よりも「個々の精神世界にある」という考え方で、調査→診断→治療の過程を重視します。
機能主義アプローチ
機能主義アプローチは、タフトやロビンソンらによって提唱されました。
これは、意志心理学をもとにしています。つまり、自らの「意志」の力で問題は解決できるという考えです。 「機能的アプローチ」は、診断主義アプローチ(心理社会アプローチ)の批判として誕生としました。
だからといって、援助者が何もしないわけではありません。援助者は、「本人の成長しようとする自由な意思を邪魔する障害を取り除く存在」と位置づけています。
本人が、したくてもできない状況(バリア・障壁等)を、援助者の所属する会社や仲間などを活用して支援します。
危機介入アプローチ
「危機介入アプローチ」は、ロスの死の受容過程研究、リンデマンの死別による急性悲嘆反応研究、キャプランによる地域予防精神医学研究のそれぞれの成果を摂取し、短期処遇の方法として理論化、体系化されたものです。
認知症とネットワーキング
認知症の不安を軽減するために大切なのが「ネットワーキング」です。
簡単にいえば「地域づくり」「まちづくり」のこと。最近は、希望と尊厳をもって暮らすための社会活動が重要視されています。
認知症に対して、ネットワーキングを効果的に実践する5つのポイントを紹介します。
①くつろぎの場所
認知症のあるなしに関わらず、「みんなが居心地よく、だれでも自由に」過ごすことができる居場所は必要です。認知症カフェも増えていて、2019年には、全国に8000か所近くまで増加しています。
②相談できる専門家
社会には、さまざまな生活課題のある方が暮らしています。認知症に対しても、専門的な視点からアドバイスをもらえると安心です。
いざというときに活用できる社会資源(保健・医療・福祉・介護に係る機関等)も少なくありません。相談できる専門家がいれば、こうした社会資源にスムーズにつなげてくれます。
③差別や偏見を解消
認知症は怖い…というイメージが昔はありました。こうしたイメージが差別や偏見を生み出す一因でもありました。
差別や偏見を解消するには、認知症への正しい知識を多くの人が知ることは重要です。そのためには、イベントなどを通して訴求するのも効果的です。
差別や偏見が解消され、人と人とのつながりを創りだせば、争いも起こりません。
④連携を推進する機能
認知症の不安や心配を軽減するためには、多くの人のツナガリやチカラが必要です。社会支援を提供する多様な組織・団体の顔の見える連携を進めていくことは大切です。
⑤人材を育成する機能
「認知症」と「権利」など、深い認識をもった支援の担い手を育成することは大きな課題です。認知症ケアの「イロハ」を学ぶために義務化された「認知症介護研修」も2024年度から完全適用されます。介護を提供する事業者にとっても、こうした変化に対応が求められています。
まとめ
一般的には認知度の低い社会福祉士ですが、子育て中のご家族や、障がいのある方、認知症の高齢者にとっては頼りになる存在です。生活での困ったこと、不安なことがあれば、相談してみてはいかがでしょうか。本日もありがとうございました。
参考
コーティネーションとネットワーキングの手引き 東京都健康長寿医療センター