みらいの子どもを守り、育てる福祉。そのひとつに里親制度があります。
里親制度は、さまざまな事情で家族と離れて暮らす子どもを、自分の家庭に迎えて育てる制度です。
日本には、親の病気や離婚、虐待などで社会的な支援が必要な子どもは、4万人以上いると言われています。
こうした子どもたちを、親に代わって育てる家庭のことを、「里親」と呼びます。
里親の種類とは
里親は大きく、「養育里親」「専門里親」「養子縁組里親」「親族里親」の4つに分けられます。
- 養育里親:養子縁組を目的とせず、家庭で暮らせない子供を一定期間(1ヶ月以上)育てる里親です。短期間だけ預かる里親もいます。
- 専門里親:親の虐待、非行のある子供や障害児などを、専門的なケアのもと一定期間養育する里親です。
- 養子縁組里親:養子縁組によって、養親となることを希望する里親です。
- 親族里親:両親が死亡、行方不明、長期入院などで子供を養育できない場合に、親族が育てる里親です。
短期の里親
「里親に関心はあるけど、実際に育てられるのか不安……」という方もいます。
そういう方におすすめなのが、短期の「週末里親」や「季節里親」です。
- 週末里親:月に1~2回、週末に施設で暮らす子どもを迎える里親です。
- 季節里親:夏休みや正月の数日~1週間、施設の子どもを迎える里親です。
里親の認定要件
「里親は夫婦でないとダメなの?」という質問があります。
結論から言えば、配偶者がいなくても、都道府県知事が認めれば里親になれます。
里親認定の基本的な要件は、①要保護児童への理解などを有していること、②経済的に困窮していないこと、などです。
独身や同性婚であっても、子どもを養育するにふさわしい環境を提供し、適性を認められた方は、里親になれます。
里親になるための流れ
里親になるための主な流れは、次の通りです。
- 児童相談所・里親支援機関などへの相談・面接
- 研修(基礎研修・認定前研修)の受講
- 自宅への家庭訪問調査
- 審議会等による審査
- 里親の認定・登録
- 子どもとの交流・委託
まずは、近くの児童相談所に電話をしてみると、詳しい内容を教えてくれます。
里親研修
里親になるために重要なのが、里親研修です。①基礎研修、②認定前研修+養育実習があり、合計で5日間ほど受講します。
①基礎研修
基礎研修は、養育里親を希望する方を対象とした研修です。
ここで、里親制度の基礎を学びます。研修期間は1日+実習1日程度です。
〈目的〉
- 社会的養護における里親制度の意義と役割を理解すること
- 要保護児童とその状況を理解すること(虐待、障害、実親がいるなど)
- 里親にもとめられるものを共有すること(グループ討議)
②認定前研修+養育実習
基礎研修が終わると認定前研修+養育実習を受講します。主な内容は次の通りです。
- 里親制度の基礎
- 里親養育の基本
- 子どもの心
- 子どもの身体
- 関係機関との連携
- 里親養育上の様々な課題
- 児童の権利擁護と事故防止
- 里親会活動
- 先輩里親の体験談・グループ討議
- 実習(児童福祉施設、里親)
児童の年齢
里親といえば、子どもを幼いころから育てているイメージがあります。
しかし、子どもの開始年齢に定めはありません。里親委託の必要性があれば、年齢が高くても開始されます。赤ちゃんから、おおむね18歳までが里親委託の対象です。
里親手当
里親は福祉支援として行われるので、手当が出ます。令和2年度までの、主な金額は次の通りです。
- 養育里親:月額86,000円(2人目以降43,000円)
- 専門里親:月額137,000円(2人目以降94,000円)
そのほか、里親のレスパイトケアでも手当は出ます。
現在は2歳未満については8,640円(2歳以上は5,600円)に改定されているようです。
里親と生活費
里親として子どもを育てるために必要な生活費はいくらぐらいなのでしょう。
データによると、里子にかかる生活費は、月額5万円程度だと言われています。
足りないかも……と思われる方もいるでしょうが、学校の教材や給食費、病院や薬代などは、100%国が保証してくれます。
そのため、よほどの贅沢をしない限り「お金が足りなくて里親を続けられない」というケースは少ないようです。
ただし、子どもが高校生以上になると学校の費用・塾代などが定額支給となり、発生した費用が実費で全額支給されるわけではありません。
将来の進学などを考えて、里親が児童手当も含めて貯金を行っているケースも少なからず見られます。
里親支援専門相談員
里親支援専門相談員は、里親支援を行う職員です。児童養護施設や乳児院に配置されています。
その役割は、里親委託の推進や委託後の状況確認、里親に対する理解を深めるための地域支援活動などです。
里親支援専門相談員の資格要件は、社会福祉士である事の他に、「児童養護施設等で5年以上の実務経験がある者」や「児童福祉司の資格を有する者」です。
また、里親養育に理解があり、ソーシャルワークの視点を持てる人である事とされています
まとめ
里親は、社会で日本の子どもを守り、育てる福祉制度です。
主に、「養育里親」「専門里親」「養子縁組里親」「親族里親」の4種類がありますが、短期の里親としても支援することができます。
里親はボランティアではなく、手当もでます。実の親のような愛情で育てることは必要ですが、ときに専門的な視点で養育することも重要です。
里親制度に関心のある方は、ぜひ近くの児童相談所に話を聞きに行ってはいかがでしょうか。
本日もありがとうございました。