ツナガレ介護福祉ケア

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介護は儲かるのか?大手企業が参入する理由と簡単ではない現実とは

介護業界を見ていると、ここ数年、あらためて感じることがあります。

なぜ大手企業は、これほど介護ビジネスに入ってくるのか。

理由は、ある意味ではわかりやすいです。

高齢化が進み、介護ニーズは今後も続く。しかも介護は、一度きりのサービスではありません。

在宅、通所、施設、終末期支援まで、長く関わることができる事業です。

大手企業から見れば介護は単発ではなく、継続的に積み上がる事業に見えるはずです。

だからこそ、異業種からの参入やM&Aによる事業拡大の話も増えてきました。

ただ、ここで話が終わらないのが、介護の難しいところです。

介護は、外から見えるほど単純なビジネスではありません。需要があるからといって、簡単に儲かるわけでもない。

むしろ、現場を知らずに入ると、かなり危うい業界だと思います。

今回は、なぜ大手企業が介護ビジネスに入るのか。

その理由と実際の難しさについて、介護ビジネスの視点で考えてみたいと思います。

 

なぜ大手企業が介護ビジネスを?

大手企業が介護に注目する理由は、まず市場の大きさです。

高齢化が進む以上、介護ニーズは急に消えません。

さらに介護は生活に深く入り込む事業です。

訪問介護、デイサービス、ショートステイ、施設介護、看取りや終末期支援まで、利用者の状態に応じて関わりが続いていく。ここが他の事業と少し違うところです。

一度、利用者や家族との関係ができれば、その後も長く接点を持ちやすい。

大手企業にとっては介護単体だけでなく、住まい、健康支援、保険外サービス、終活支援などにも広げやすい。そういう戦略的な魅力があります。

要するに、介護は「その場限り」の仕事ではなく、暮らし全体につながる事業として見られているのだと思います。

大手は施設を増やしているわけではない

大手企業の動きを見ると、単純に介護施設を増やしているわけではありません。

かなり戦略的に、面で押さえにきています。

たとえば、在宅介護と施設介護を組み合わせる。あるいは住まいを軸にして、訪問介護、通所介護、看護、医療連携などを周辺に置く。また、生活支援、相談支援、見守り、配食など、周辺サービスまで広げていく。

つまり、利用者を「介護サービスだけ」で見るのではなく、地域での暮らし全体で見ている、ということです。

この発想は強いと思います。

なぜなら、地域の中で接点が増えるほど、紹介も採用もブランドも有利になるからです。介護は単体のサービス勝負というより、地域でどれだけ信頼の面を取れるかの勝負になっているところがあります。

需要があるから儲かる・・・ほど甘くない

ここが大事だと思います。

介護は需要があります。でも、需要があることと儲かることは、まったく別です。

介護報酬は公定価格です。自由に値付けができるわけではありません。

利用者が増えても人がいなければサービスは回らない。人がいても、記録、請求、人員配置、加算、行政対応が崩れれば、経営はすぐに苦しくなります。

つまり介護は、単純な売上拡大型のビジネスではないのです。

利用者を増やせばいい、拠点を増やせばいい、というものでもない。

むしろ、増やした分だけ管理が難しくなる。現場の小さなズレが、請求や事故や行政対応にまでつながってくる。

この業界は、その怖さがあります。

介護ビジネスは、人員配置でつまずきやすい。

介護の難しさをひと言でいえば、人で回るのに、人が足りないことです。

介護職は、ただ人数がいればいいわけではありません。

  • シフトをどう組むか。
  • 経験の差をどう埋めるか。
  • 誰に何を任せるか。
  • 現場の負担が偏っていないか。

そこまで見ないと、形だけの配置になってしまいます。

しかも、急な欠勤や退職が、そのまま運営の不安定さにつながりやすい。

利用者の生活は止められないので、現場のしわ寄せはすぐに起こります。

大手であっても、この問題から逃げられません。

むしろ拠点が多い分、現場の温度差や管理の難しさは大きくなります。

制度を知らない経営は介護ではかなり危ない

介護ビジネスは、「経営ができれば成功する」ほど単純ではありません。

ここが他の業種と少し違うところかもしれません。

もちろん、優秀な経営者は必要です。

数字を見る力も、採用の感覚も、拠点展開の判断も必要です。

ただ、それだけでは足りない。

介護は、制度理解が甘いと、一気に危うくなります。

人員基準、加算要件、記録の整合性、請求のルール、行政対応。

ここを雑に扱うと、現場がどれだけ頑張っても、後で苦しくなる。

個人的には、介護の現場を知らない経営者だけでは難しいと思っています。

  • 現場では何が起きるのか。
  • 利用者や家族が何に困るのか。
  • 記録と実態がどこでズレやすいのか。
  • スタッフが何で疲弊するのか。

この感覚がないと数字の上では正しくても、現場では壊れる判断をしてしまうことがあるからです。介護福祉の経営で誰もが悩むところではないでしょうか。

自費サービスは「保険では足りない現実」を埋める

今後の介護事業を考えるとき、自費サービスはかなり大きなテーマになると思います。

いわゆる保険外サービスです。

介護保険は大事な仕組みです。ただ、現実の暮らしは制度どおりには動きません。

たとえば、こんなことです。

  • 退院したあと、数日だけ手厚く見守ってほしい。
  • 買い物に一緒に行って、本人が自分で選ぶ時間を支えてほしい。
  • お墓参りや、昔住んでいた町にもう一度行きたい。
  • 遠くに住む家族の代わりに、定期的に様子を見に来てほしい。
  • 夜だけ少し不安だから、短時間でも来てほしい。
  • 家の細かな片づけや、衣替えの手伝いを頼みたい。
  • 家族が少し休むために、数時間だけ安心して任せたい。

こういう希望はどれも特別なことではありません。むしろ生活そのものです。

でも、その「生活そのもの」が、保険だけでは支えきれない。だから、自費サービスの役割が出てきます。

つまり自費サービスとは、ぜいたくな追加サービスではなく、制度のすき間に落ちてしまう生活を支える仕事なのだと思います。

大手企業がここに注目するのも、自然な流れです。

介護保険サービスだけでは単価にも限界がある。だからこそ、周辺の困りごとにどう応えるかが今後の差別化になっていく。

ただし、ここはやり方を間違えると危ないところでもあります。

何でも自費にすればいい、という発想になると、利用者も家族も不信感を持つ。

保険との線引きが曖昧だと現場も混乱する。

だから、自費サービスは売上を増やすためだけではなく本当に必要な困りごとを、きちんと整理して納得できる形で支える。その設計力が問われる分野だと思います。

M&Aが増えるのは自然な流れ

最近、介護業界ではM&Aの話をよく聞きます。

これは一時的な流行ではなく、かなり自然な流れだと思います。

理由ははっきりしています。

  • 小規模事業者だけでは採用が厳しい。
  • 制度改正への対応も大変。
  • 管理体制を維持するのも簡単ではない。

そのうえ、経営者自身が高齢化しているケースも少なくありません。

長年やってきた事業所ほど代表が年を重ね、後継者がいない問題にぶつかりやすい。

その結果、売却や統合という選択肢が現実味を帯びてきます。

これは悪いことばかりではありません。

事業を誰かが引き継いで利用者やスタッフを守れるなら、前向きな選択でもあります。

ただし、M&Aをしたから安心というほど簡単でもない。介護は買った瞬間に回る事業ではありません。

現場が残るか。

スタッフが納得するか。

地域との信頼関係を引き継げるか。

その後の運営のほうが、むしろ本番です。

利益だけを追う世界になってはいけない

個人的に強く思うのは、介護福祉の事業は利益だけを追う世界になってはいけない、ということです。

もちろん、利益は必要です。きれいごとだけでは会社は続きません。

経営判断も必要ですし、数字を見ることも大事です。

ただ介護や福祉は、一般の物販やサービス業とは少し違います。

相手は、高齢の方や障害のある方、あるいは疲れきっている家族です。

自分で声を上げにくい人もいる。状況を説明しにくい人もいる。

そういう仕事で売上だけを追いすぎると、現場はゆがみやすい。

  • 無理な稼働。
  • 雑な記録。
  • 説明不足。
  • 不正やごまかしの温床。

そういう方向には、絶対に行ってはいけないと思います。

乱暴な言い方をすれば介護福祉の事業は、ビッグモーターのようになってはダメです。

数字だけを優先し、現場が無理をして利用者や家族が置き去りになる。

そんな構造になったら、この業界は終わってしまう。

介護は、利益も必要。でも、利益だけでは回してはいけない。

この線引きを守れるかどうかが、本当に大きいと思います。

拡大よりも「複合化」と「承継」

今後の介護業界は、ただ事業所数を増やす方向だけではなく、

複合化承継がキーワードになっていく気がします。

複合化というのは、在宅、通所、住まい、見守り、自費サービスなどを地域の中で組み合わせていく流れです。

介護だけを切り出すのではなく、暮らし全体を支える形に近づいていく。

もう一つは承継です。

経営者の高齢化が進む中で、誰が次を担うのか。

M&Aも含めて、どう事業を残していくのか。

ここはかなり大きなテーマになっていくはずです。

さらに今後は、人手不足を気合いだけで乗り切るのではなく、業務の分解やICT、介護テクノロジーの活用なども、ますます進んでいくでしょう。

つまり、これからは、「がんばる現場に頼る介護」から「仕組みで支える介護」へ。

少しずつ流れが変わっていくのかもしれません。

介護ビジネスは伸びる市場ではある。けれど・・・

大手企業が介護ビジネスに参入する理由は、よくわかります。

  • 市場がある。
  • 継続性がある。
  • 周辺事業にも広げやすい。

戦略的に見れば、魅力のある分野です。

実際に大手は、在宅と施設の組み合わせ、複合拠点化、周辺サービスの拡張などを進めています。

そこは、さすがだなと思います。

しかし、その一方で・・・

  • 介護は簡単には儲からない。
  • 人員配置は難しい。
  • 制度は複雑。
  • 現場を知らなければ判断を誤る。
  • M&Aをしても、その後の運営が難しい。

しかも、経営者の高齢化まで進んでいる。

つまり介護は、伸びる市場ではある。でも、雑に入って勝てる市場ではない。

そこが、この業界の本質なのだと思います。

最後に残るのは、制度を理解し、現場を知り、人を守りながら、事業として続けられる会社だけ。介護ビジネスとは、たぶんそういう世界なのかもしれません。