
さまざまな動きを見せている、こども家庭庁。
そのひとつが、障がいのある子どもの保育所での受け入れ強化です。
専門職の活用や巡回支援などを通して、いわゆるインクルーシブ保育を広げようとしています。
方向としては、よくわかります。
障がいのある子もない子も、できるだけ同じ場で育つ。
その中で、多様性を自然なものとして受け止めていく。
理念としては、まっとうだと思います。
ただ、現場のことを考えると、少し立ち止まって考えたくなります。
ツナガレでも、障がい児のケアに関わることがあります。
その現実を見ていると、理念として正しいことと現場で本当に無理なく回ることは、必ずしも同じではないと感じます。
インクルーシブ保育とは、ただ同じ場所にいることなのか。
そもそも、障がい児を通所で見なければいけないという前提に無理はないのか。
本当に必要なのは子どもだけでなく、家族にもやさしい制度ではないでしょうか。
- インクルーシブ保育とは何か
- 加配保育士とは
- 加配はある。しかし……
- そもそも通所前提で考えていいのか
- 居宅での保育や支援を、もっと前に出せないか
- 保育と障がいの制度が分かれていること
- 家族にもやさしいこと
- まとめ
インクルーシブ保育とは何か
インクルーシブ保育は簡単に言えば、障がいのある子もない子も、できるだけ分けずに一緒に育つことを大事にする考え方です。
もちろん、それ自体は悪くありません。
むしろ自然なことでもあります。
でも、本当に大事なのは、同じ場所に入れることではありません。
その子が、その場所で安心して過ごせるかどうかです。
落ち着いていられるか。
無理なく食べられるか。
疲れすぎないか。
痛みや不快さをためこまないか。
自分のペースを守れるか。
そこを見ないまま「みんな一緒が大事です」と言ってしまうと、理念だけが先に立ってしまいます。
加配保育士とは
加配保育士とは、障がいや配慮が必要な子どもを受け入れるために、通常の配置とは別に、追加で配置される保育士のことです。
たとえば、集団の中で不安が強く出やすい子。
身体介助が必要な子。
言葉の理解や行動面で支援が必要な子。
そうした子どもに、より手厚く対応するために加配保育士は置かれます。
つまり、特別扱いをするための人ではありません。
その子が無理なく園で過ごせるようにするため。
そして、担任や園全体が支援を回しやすくするための役割を担っています。
加配はある。しかし……
現在も、加配保育士の制度はあります。
ただ、ここで考えたいのは、加配があることと実際に機能していることは別だということです。
制度として人を置くことはできても、その人に負担が集中すれば、十分な対応は難しくなります。
子どもの障がい特性への対応。
他の子どもとの調整。
家族対応。
園内での情報共有。
医療や療育との連携。
仕事はかなり多いです。
そうしたものが、ひとりに乗ってしまえば現場は苦しくなります。
加配保育士が本当に機能するには、その人だけが頑張る形では足りません。
園全体が理解していること。
必要に応じて専門職とつながれること。
家庭と情報共有できること。
そこまであって、ようやく制度が生きてくるのだと思います。
そもそも通所前提で考えていいのか
ここは、もっと考えていいところだと思います。
障がいのある子どもも、できるだけ通所の場で見る。
それは一見、包摂的で正しいように見えます。
でも、身体障がいのある子どもや、外出負担の大きい子どもにとっては、通うこと自体が大きな負担になります。
朝の準備。
着替え。
移動。
天候。
体調の波。
送迎の段取り。
毎日これをこなすだけで、家族はかなり削られます。
子どもにとっても、園で過ごす前にすでに疲れてしまうことがあります。
それでも通うことが前提になっている。
そこに少し、無理があるのではないかと思います。
居宅での保育や支援を、もっと前に出せないか
障害児支援の制度には、すでに「訪問」で支える仕組みがあります。
重度の障害などで、外出が難しい子どもを対象とする居宅訪問型の支援。また、保育所などを訪問し、本人への支援だけでなく、職員への助言も行う仕組みもあります。
だったら、もっとシンプルに考えていいはずです。
毎日通うことが難しい子には、家での保育や支援をもっと前面に出すべきだと。
通所できるかどうかを基準にするのではなく、その子がいちばん無理なく育てる環境はどこかを基準にしたほうが、自然だと思うのです。
もちろん、ずっと家だけがよいという話ではありません。
ただ、通わせることが正義になりすぎると、その子にとって何が最善かが見えにくくなります。
保育と障がいの制度が分かれていること
もうひとつ感じるのは、保育と障がいの制度が、まだ分かれて動いているということです。
保育は保育。
障がい支援は障がい支援。
送迎は家族。
困ったときは連携。
この形だと、最後のしわ寄せは家族に行きやすくなります。
行政に制度の境目はあっても、家族には関係ありません。
家族にとって大事なのは、「今日子どもを安全に過ごさせるか。送り迎えをどうするか。仕事や家族との生活をどう回すか」です。
障がい児にやさしい制度を考えるなら、保育と障がい支援をもっと一体で見ていく必要があると思います。
家族にもやさしいこと
障がい児にやさしい。
その言葉はよく使われます。
でも、本当にやさしい制度なら、家族にもやさしくなければなりません。
いちばん大変なのは何か。
現場を知る人なら、送迎だと感じている家族は多いと思います。
通わせるために毎日体力を使う。
時間を使う。
仕事の調整をする。
きょうだいにも影響が出る。
制度は立派でも、その負担をずっと家族が背負う形なら、暮らしは守られません。
障がい児にやさしいというなら、通所先を増やすことだけでは足りません。
送迎負担をどうするか。
在宅支援をどう広げるか。
家族が潰れない仕組みをどう作るか。
そこまで考えて、やっと本当にやさしい制度だと言えるのだと思います。
まとめ
インクルーシブ保育は、大事な考え方だと思います。
でも、それはみんなを同じ場所に入れることではありません。
加配保育士も必要です。
専門職との連携も必要です。
ただ、それでもなお通所が重すぎるなら、別の形を真剣に考えるべきです。
居宅での保育。
訪問型の支援。
送迎負担の軽減。
保育と障がい支援の一体化。
障がいのある子どもにやさしい社会とは、通わせられる社会ではなく、無理をしなくても育てられる社会のことではないでしょうか。
本日もありがとうございました。