すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
これは、日本国憲法第25条に記されている有名な言葉です。
日本で暮らす人々は、生活に困窮しても生存権によって守られています。
その最後の砦が、生活保護法です。
今回は、生活保護の処分に不服がある場合の訴訟の仕方をまとめてみました。
争訟(そうしょう)
生活保護を申請した人や受けている人が、行政処分に不服があるときは、争うことができます。これを、争訟(そうしょう)といいます。
争訟には、①行政不服申立て、②司法審査の2つの種類があります。
最近のニュース
生活保護のうち、食費や光熱費などにあてられる「生活扶助」の基準額は5年に1度、見直しが行われています。
2013年度の見直しでは、物価の下落が続いていたことなどを背景に減額されました。これにともなって、各地で裁判が行われています。
生活保護費を2013年から段階的に引き下げられ、最低限度に満たない生活状況を強いられているなどとして、愛知県内の受給者が国や自治体を訴えた裁判で、名古屋高等裁判所は引き下げを取り消すとともに、国に賠償を命じる判決を言い渡しました。原告の弁護団によりますと、同様の集団訴訟で国に賠償を命じた判決は初めてです。
(2024/6/13 NHKニュースより)
不服申立て
生活保護に関する決定に不服があれば、一般的には都道府県知事に対して審査請求を行います。具体的には、却下決定、停止・廃止決定、返還額の決定などです。
不服がある場合、これらの決定について、取り消しを求めます。
さらに、都道府県知事の行った裁決に対して不服があれば、厚生労働大臣に対して再審査請求を行うことができます。
審査請求とは
審査請求とは、行政不服審査法に基づく不服申立ての一類型です。
行政庁の不当な処分などによって、不利益を受けた国民が不服を申し立て、これを行政庁が審査する手続です。
国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的としています。
生活保護では、申請したあと30日を経過しても、福祉事務所などの決定がされないときは、保護の申請が却下されたものとみなして審査請求をすることができます。
保護の廃止や停止、保護費の減額決定などを行ったことに不満がある場合でも、審査請求ができます。
代理人とは?
自分で不服申立ての仕方がわからないときは、代理人に頼んで審査請求をすることもできます。代理人は弁護士でなくても、生活保護法に詳しい人に依頼しても大丈夫です。
ただし、代理人を証明する書類(委任状など)の提出が必要です。
訴訟のルール
生活保護法第69条により、処分取消しの訴訟を提起する前に、必ず審査請求を行うことが必要です。裁決が出た後でなければ訴訟を起こすことはできません。
また、再審査請求は、審査請求の裁決があったことを知った日の翌日から起算して、1月以内に行なわなければなりません。
まとめ
一般的に生活保護の審査請求は「都道府県知事」に行う事とされています。
処分の取り消しを求める訴訟を提起する場合、その前に必ず、当該処分についての審査請求を行い、裁決を経た後でなければ行う事が出来ません。
処分の取消しを求める訴訟を起こす場合、その裁決があった事を知った日から6か月以内に行う事と定められています。
生活保護の争訟は専門知識や申請が必要となりますので、専門家のアドバイスを受けながら、進めたほうが良いかもしれません。
本日もありがとうございました。
参考