「生活保護」という言葉は良く聞きますが、制度の詳細を知らない方は少なくありません。また、間違った認識を抱き、生活保護の申請をしない方もいます。
たとえば、持ち家があると生活保護はNGと思われている方もいます。しかし、持ち家があっても申請することは可能です。また、車を持ちながら求職している場合には、車を処分しないまま保護を受けられるケースもあります。
今回は知っておきたい生活保護の情報について紹介します。
子の扶養義務とは?
「成人した子供が働いていると生活保護は受けられないの?」と質問されることがあります。たしかに民法では、子供の扶養義務が記されています。
しかし、子供であっても生活が苦しいときがあります。それなのに自らの生活費を犠牲にしてまで、親を扶養しなければならないルールはありません。
子供が経済的に困窮し、親に仕送りをする事で生活が破綻してしまう場合もあります。その場合、親は生活保護を申請できます。
家族同居はダメ?
家族と同居していると生活保護は受けられないのでしょうか。
基本的に生活保護は世帯収入をみます。そのため、同居する子供の収入が基準以上であれば、生活保護を受けることはできません。
しかし、働いている子供の収入が基準以下であれば、生活保護の対象になります。いずれにしろ受給のための同居は必須ではありません。
会社への給与照会
生活保護法では、生活保護の実施機関は「必要な時に給与照会を行う事が出来る」と規定されています。実施機関は都道府県知事や市長、福祉事務所を管理する町村長です。
生活保護は正しく支給されなければいけません。そのため実施機関は、必要な時に日本年金機構や銀行、信託会社、雇用主などに、必要な書類の閲覧・提供を求めることができます。
親子関係が不仲……
親子関係はさまざまです。長年に渡って不仲で、疎遠になるケースもあります。
「親の面倒は死んでもみたくない」などで扶養義務のある子供が拒否した場合、審査をした上で、生活保護の対象となります。
子供が扶養を拒否した場合も、親の収入が最低生活を送るに足りないと認定されると、生活保護を受けられます。
援助がある場合
子どもの仕送りや援助がある場合でも、生活保護は受けられます。
生活保護法では「補足性の原則」が適用されています。
補足性の原則とは、生活が苦しい方は利用できる資産や能力、そのほかあらゆるものを、最低限度の生活の維持に活用することです。
子供から仕送りがある場合は、収入として認定されます。そこから最低生活を送るために不足している金額を、生活保護費として支給されます。
生活保護基準の改定
生活保護の基準は5年に1回、厚生労働大臣の名で改定されます。
これは、生活するうえで最低限必要な額を算出するためのものです。
実はこの改定、とても重要で自治体の各種減免制度など、複数の基準額に影響を及ぼします。また、最低賃金の金額も連動して変化していきます。
生活費の計算方法
生活費の計算方法は、昭和59年から現在まで水準均衡方式がとられています。
水準均衡方式とは、生活保護で保障するべき最低限の水準を、一般国民の消費水準と比較して計算する方法。つまり一般の水準に合わせて、生活保護費は上下するのです。
生活費の基準は、憲法25条に定める「健康で文化的な最低限度の生活」とは何かを考える上で大切です。
生活保護と障害基礎年金
生活保護と障がい年金は両方もらえるのでしょうか?
結論から言えば、生活保護と障害年金は両方もらえます。
しかし、満額ではなく、調整されて支給されます。
生活保護は、障害基礎年金をもらっていると、その差額分が支給されます。
手続きは住所地の市区町村の窓口となります。
まとめ
倒産、失業など、さまざまな理由で生活に困窮している人がいます。
生活保護は、憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、積極的にそうした人達が自立した生活を送れるように援助する制度です。
生活保護の申請は国民の権利です。
生活保護を必要とする可能性は誰にでもあるものなので、ためらわずに福祉事務所などに相談しましょう。
本日もありがとうございました。