ツナガレ介護福祉ケア

東京都指定の障害福祉サービス事業所です。高齢者・障がい児・者、子育ての現場から発信しています!

重度訪問介護(重訪)の支給量と判例~障がい者支援と法律

 

重い障がいのある方を支援するサービスに、重度訪問介護(重訪)があります。

本来、重訪は障がい者の生活全般の介護サービスを手厚くし、自宅での生活が続けられるように設計されました。しかし現実には、365日24時間のサービスは認められず、「利用者(障がい者)が勝ち取らないと使えない制度」ともいわれています。

今回は重度訪問介護の問題点を、ある事例から紹介します。

 

 

重度訪問介護の現状

重訪を利用すると、昼夜を問わず1日中、介護士(ヘルパー)のケアを受けられます。似たようなサービスに居宅介護がありますが、利用できるのは短時間(ほとんどは1時間~1時間30分程度)です。

そもそも重訪は、ALSや難病、重い障がいがあっても、自宅で安心・安全に暮らしてもらうためのサービスです。しかし、行政サイドが24時間の支給を認めることは少ないです。

ある事例

交通事故で脊髄損傷を負ったAさん(障害支援区分6)は、N市に対し、1か月650時間以上(1日20時間)の重度訪問介護の支給を求めました。

しかしN市は、家族による見守りが可能などの理由で認めず、1年間の支給量を大幅に減らして、1か月300時間(1日9時間程度)とする支給決定をしました。

Aさんや支援者は、この決定を不服とし審査請求を行いましたが、棄却されました。

三権分立の理解

支給を認めなかったN市への対応として重要になるのが、行政と司法の三権分立です。まず、Aさんが行うべきことはN市へのクレームではなく、取消訴訟の準備です。

N市の決定のうち、「1か月300時間を超える部分を支給量として算定しない」とした部分の取消訴訟を行うことが必要です。

取消訴訟:行政庁の処分・裁決その他公権力の行使がなされたのちに、それを元の状態に戻すこと(取消し)を求める訴訟をさす。公権力の行使に対する救済手段である抗告訴訟の典型である。

しかし取消訴訟だけでは、「裁判所が処分を取り消す」と認めるだけで行政に取り消しを求めるものではありません。次に必要となるのが、取消訴訟とあわせて「義務付け訴訟」を求めることです。

義務付け訴訟とは

義務付け訴訟とは、行政の裁量に対し、こうあるべきと求めるものです。たとえば社会保障の給付を求めた人が、行政側の応答がない場合や申請を拒否された場合に、一定の処分の義務付けを求めるといったものです。

今回の事例の場合、不当な裁量に対して何もしない行政に裁判所が介入し、「1か月650時間以上の支給をしなさい」と働きかけることが重要です。結果的に、こうした訴訟によって、Aさんの希望は叶いました。

行政は敵ではない

重度訪問介護で支給が認められないと、行政側への不信感が募ることもあります。しかし、行政の担当者は敵ではありません。双方の間にズレが生じる背景には「立場の違い」があるように思います。

困った状況を解決したい利用者に対して、行政側が求めるのは合理的な説明です。なぜその支給量が必要かを感情ではなく、文書化して説明できないと、税を預かる立場として安易に認めることはできないのです。

まとめ

介護の支給量を実質的に増やすには、居宅介護との併用や移動支援の活用など様々な方法があります。ただし、こうしたサービスの申請は専門職でなければ分からないことは多いです。セルフプランもありますが、障害児・者のプランを考える相談支援事業所を利用することでサービスの幅は広がります。相談は無料なのでお近くの相談支援事業所を活用することをオススメします。