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【不正】日常生活自立支援事業で不適切処理・専門員や役割、限界とは?

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自立支援事業での事件発生

 

2021年4月、長崎県の社会福祉協議会で、日常生活自立支援事業をめぐる不正が発覚しました。

 

調べによると、問題のあった社会福祉協議会(社協)では約10年間にわたり、利用者との契約・解約手続きを怠るなど不適切な処理が複数ありました。

 

同社協は、担当の男性専門員を2021年4月14日付で、出勤停止10日の懲戒処分にしました。この専門員は依願退職したそうです。

 

社協を舞台にした自立支援事業での事件。背景には何があったのでしょう。

 

 

 

社会福祉協議会とは

 

今回の舞台となったのは、「社協」の略称でも知られる社会福祉協議会です。

地域の社会福祉の拠点でもある社協とは、どういう存在なのでしょう。


社会福祉協議会とは「営利を目的としない」民間組織です。根拠法となっているのが、昭和26年(1951年)に制定された社会福祉事業法(現在の「社会福祉法」)です。

 

社会福祉協議会の活動は幅広く、地域の人たちのサポートするために民生委員・児童委員、社会福祉関係者をはじめ、保健・医療・教育などの専門家が多数、参加しています。

 

目的は、全国の都道府県や市区町村で暮らす人たちが安心して生活することのできる「福祉のまちづくり」の実現です。

 

具体的な活動には、各種の福祉サービスや相談活動、ボランティアや市民活動の支援、共同募金運動への協力などがあります。社協では地域の特性に応じた活動など、さまざまな福祉増進に取り組んでいます。

 

日常生活自立支援事業とは

 

日常生活自立支援事業は、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者など判断能力が不十分な人が、地域で自立した生活を過ごせるよう手助けする事業です。

社会福祉法第81条では「福祉サービス利用援助事業」と規定されています。

 

例えば、認知症高齢者の人から預金通帳や印鑑を預かり、本人に代わって必要な生活費を引き出すなど、日常的な金銭管理を支援します。

 

 

日常生活自立支援事業の専門員とは

 

今回、不適切な処理を行っていたのは「日常生活自立支援事業専門員」と呼ばれる専門職です。社会福祉に関する仕事は、本当にさまざまな専門員がいて分かりづらいです。

 

自立支援事業の専門員は社協に所属しています。彼らは、利用希望者や家族、民生委員、ケアマネジャーなどからの相談を受けて支援計画を策定します。契約を締結する業務を行うほか、具体的な援助を行う「生活支援員」と連携して状況を把握します。

 

認知症など、判断能力が不十分な人をサポートする制度に成年後見制度がありますが、そこまでの状況ではないものの、判断能力が低下した人が身近に利用できる仕組みとして日常生活自立支援事業が誕生しました。専門員の必要性は高まっています。

 


日常生活自立支援事業の役割、サービス内容

 

日常生活自立支援事業のおもな役割は次のとおりです。

 

<福祉サービス利用の援助 ・情報の提供、相談>


・福祉サービスの利用における申し込み、契約の代行、代理
・入所、入院している施設や病院のサービスや利用に関する相談
・福祉サービスに関する苦情解決制度の利用手続きの支援


<預貯金の出し入れの援助 ・利用料金の支払い代行>


・病院への医療費の支払いの手続き
・年金や福祉手当の受領に必要な手続き
・税金や社会保険料、電気、ガス、水道などの公共料金の支払いの手続き
・日用品購入の代金支払いの手続き
・預金の出し入れ、また、預金の解約の手続き


<事務手続きの援助 ・居住家屋の情報提供、相談>


・住民票の届け出などに関する手続き
・商品購入に関する簡易な苦情処理制度(クーリング・オフ制度など)の利用手続き
・通帳などの保管 ・年金証書、預貯金通帳、実印、銀行印等の預かり

 

 

日常生活自立支援事業の限界とは

 

今回、不適切処理が発覚したのは新上五島町社会福祉協議会です。いわゆる町の社協で、長崎県の社会福祉協議会(県社協)から委託を受けて実施していました。

 

問題のあった社協では、男性専門員が2007年から、日常生活自立支援事業を1人で担当していたそうです。

 

男性専門員は利用者に対し、通帳や印鑑の預り書などを作成・保管せず、定期的な利用者状況評価も、ほぼ実施していなかったといいます。

 

さらに、事業の支援範囲を超える高額の引き出し依頼に応じていたほか、新規契約報告や亡くなって解約となった人の届け出を県社協にしていませんでした。

 

今回の不正は県社協の訪問調査で発覚したそうですが、管理体制の不備が常態化していたことは否めません。

 

日常生活自立支援事業は、認知症が増加し続ける日本にとって、ますます重要となる事業です。しかし専門員の数は絶対的に足りていません。

 

今回不正をした専門員もひとりで事業を担当しており、利用者の人数も20人以上だったといいます。つまり一人で広範囲の役割を担っていたわけです。

 

もちろん専門員としての不適切な処理は許されるのではありませんが、彼ひとりに全ての業務を任せた社協の体質にも問題があると思います。そして現場に全てを丸投げする社会福祉行政のあり方も改めて考え直さなければいけないと思います。

 

本日もありがとうございました。