今、国内には親がいるにかかわらず、親元で暮らせない子どもたちが、約4万5000人います。(参考:日本こども支援協会)
そうした子供たちを公的な責任として社会的に養育することを「社会的養護」と言います。つまり家庭に代わって社会保障費(税金等)で子どもたちを育てているのです。
親元で暮らせなくなった理由は、虐待や経済的な理由など様々です。
虐待などで保護された子どもたちはどういう形態で暮らしているのでしょう。
- 社会的養護の現状とは
- ①きつい?乳児院はどんなところ
- ②児童養護施設
- ③児童自立支援施設の役割とは
- ④児童心理治療施設の対象者
- ⑤里親になるには
- ⑥小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)
- ⑦自立援助ホーム
- ひとり親家庭の問題と支援
- 社会的養護の課題と将来像
社会的養護の現状とは
古くは漫画「タイガーマスク」の主人公が育てられた児童養護施設。テレビドラマや映画などでも見聞きした人は多いのではないでしょうか。
しかし児童養護施設の実態や、親元で暮らせない子供がどのような施設で暮らしているのかを理解している方は少ないかもしれません。
親元で暮らせない子どもたちが暮らす社会的養護の形態は主に7つあります。
①きつい?乳児院はどんなところ
乳児院は、第二次世界大戦後に子どもの病院代わりとしてケアにあたっていたという歴史があります。
現在は「乳児を入院させてこれを養育し、あわせて退院した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設」と定められています。
看護師の数は乳児及び満2歳に満たない場合は1.6人に1人。
乳幼児の在所期間で最も多いのは1年未満。平均は1.4年です。
②児童養護施設
児童養護施設は、社会的養護の中で最も古くから存在している施設です。
長年の支援からノウハウは多く蓄積されていますが、子どもの利益を考えた生活単位の小規模化などの課題は残されています。
児童が高校進学した際には特別育成費が支弁されます。
平成28年の改正児童福祉法により、大学進学をあきらめないように入所可能年齢を20歳未満から22歳に達した年度末に引き上げられました。
措置の期間は2年を超えてはだめですが家庭裁判所の承認を得れば更新できます。
在籍している入所時年齢は2歳が最も多く、在籍期間の平均年齢は11.5歳。10歳以上。
施設長は児童指導員及び保育士のうち少なくとも一人を児童と起居を共にさせなければダメです。
また、学習および特別指導の指導員は別途経費が支給されます。
入所児童で何らかの障害のある子どもは36.7%。最も多いのは知的障害で13.6%。
虐待経験のある子どもで、最も多いのはネグレクトの63%。次が身体的虐待41%となっています。
③児童自立支援施設の役割とは
児童自立支援施設は、いわゆる不良や素行の悪い子供のケアを行う施設です。
最近では虐待された子どもが多く入所されていて、虐待された経験によって非行行動に走る傾向があることも指摘されています。
管理者は、夫婦が子どもたちと暮らす「小舎夫婦制」が推進されています。
小舎夫婦制は、夫婦である児童自立支援専門員と 児童生活支援員が児童と
一緒の寮舎に住み込み、生活を共にしながら支援するという伝統的な形態である。 交替制は、職員が交替で支援に当たる形態である。
④児童心理治療施設の対象者
児童心理治療施設は少年非行の低年齢化に伴って法定化された施設です。
最近では不登校や虐待経験の影響がある子供のケアに当たっています。
心理療法担当職員が配置されているのが大きな特徴です。
平成26年度に47カ所とする目標(子ども・子育てビジョン)が掲げら、令和2年4月1日現在は、51カ所の施設が開設されています。
児童への自立支援や生活指導、家庭環境の調整も行われます。
心理的・精神的問題を抱え日常生活の多岐にわたり支障をきたしている子どもたちに、医療的な観点から生活支援を基盤とした心理治療を行います。
心理療法担当職員の数は、おおむね10人につき1人以上。20歳まで利用可能で、保護者の下から通所させることも認められています。
⑤里親になるには
社会的養護において、注目されているのが里親制度です。
里親の登録数が伸び悩むなどの課題はありますが、里親への委託率は増加しているといいます。
里親には「養子縁組を目的とする夫婦」と「養育里親」があります。養育里親は5年ごとの更新制で定期的に研修の受講が求められます。
里親には「専門里親」という分類があります。
専門里親は「虐待などで心身に影響を受けた子供」「非行などの問題がある子供」「身体・知的などに障害のある子供」などを支援します。
ここらへんの制度がややこしいところもありますね。
もちろん里親には国から里親手当や養育費等が支給されます。
⑥小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)
ファミリーホームは、5~6名の子供の養育を行う事業です。つまり多人数の子供の里親になるというイメージですね。
ただしこの事業を行う場合は里親ではなく、事業主となりますので職業として子供たちの養育への責任を負うことになります。
養育者は3名以上。(夫婦+補助者1名、あるいは養育者1名+補助者2名)と規定されています。
⑦自立援助ホーム
自立援助ホームは義務教育終了後、様々な理由で家庭にいられなくなった子供が主に暮らしています。
児童養護施設等を退所し、働かざるを得なくなった原則15歳~20歳までの青少年たちが暮らす施設です。
彼らはスタッフと共に生活しながら、社会で生きて行くための準備をします。
思春期の青少年が多いので情緒不安定など様々な課題を抱えていることも珍しくありません。とくに就職に関しての支援は難しく、大きな課題でもあります。
ひとり親家庭の問題と支援
お金持ちの前澤友作氏がコロナ渦を受けて、ひとり親家庭を支援したいと明かしました。
ひとり親家庭とは、母子・父子家庭の総称です。
以前は「欠損家庭」という用語も使用されていましたが、今ではシングルマザーやシングルファザーと呼ばれネガティブなイメージはあまりないのではないでしょうか。
具体的に誰にでも受けられる4つの柱があります。ぜひ活用してください。
- 子育てと生活支援……家庭生活支援員などを派遣してくれる。
- 就業支援……職業教育や資格取得を応援してくれる。
- 養育費の確保のための支援……養育費を確保してくれる。
- 経済的支援……12種類の貸付金が用意されている。
社会的養護の課題と将来像
親と暮らせない子どもが、その後どこで暮らしているのかは知らない方も多いと思います。
児童養護施設ももちろん良いのですが、集団生活でありプライバシーを尊重されていない等、多くの問題を抱えています。
例えば、施設の子供は「今日は何を食べたい」と言うことが出来ません。
すでにメニューは決められているからです。
個人的には里親制度がもっともっと普及すればよいと考えます。
そして自分自身もその一助になればと思います。
本日もありがとうございました。