ツナガレ介護福祉ケア

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行動障害の支援に役立つ「数息観(法)」のやり方~ツナガレケア

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問題行動への対処法

福祉の現場では、利用者さんが自傷行為や破壊行動を起こすこともあります。事件や事故にもつながりかねない行動で大切なのは適切な対処法です。その方法はさまざまですが、今回は場面転換のひとつである「数息観」という方法をご紹介します。

 

 

強度行動障害とは

障害支援サービスのひとつに行動援護があります。行動援護は問題行動のある方を支援するサービスです。具体的には、次のような利用者さんが当てはまります。

 

  1. 自分の体を叩く
  2. 食べられないものを口に入れる
  3. 危険につながる飛び出し
  4. 本人の健康を損ねる行動
  5. 他人を叩いたり物を壊す
  6. 大泣きが何時間も続く

 

その特性を分かりやすくいえば「個人や周囲の生活に影響を及ぼす問題行動が、高い頻度で発生する人」といえるかもしれません。そのため特別な支援が必要なのですが、彼らは「困った人」ではありません。むしろご自身が「困っている」ケースが多いのです。だからこそ特性や環境を把握して、適切な支援を行うことが重要なのです。

感覚や知覚の違い

行動障害では、噛みつき、頭突き、睡眠の乱れや自傷行為など、普通では考えられない行動がかなりの頻度で出現します。行動障害児・者の傾向としては、重度の知的障害や自閉症があげられますが、精神的な診断をつけるのは難しいです。

自閉症の特徴的な行動

自閉症では感覚過敏の人もいます。光や音、匂い、感触、痛みなどの感覚を大脳で処理することができず、特殊な反応を示すことが少なくありません。具体的には次のようなものがあります。

  1. ある特定の音などに対して耳ふさぐ。
  2. キラキラ光るものなどに魅せられてそのまま動かなかったりする。
  3. 肌触りに対するこだわり。特定の衣類しか着ようとしない。
  4. 極端な偏食。
  5. 香水や整髪料の匂いに過敏。逆に食べ物の味が分からない人も。
  6. 注射などに異様な恐怖心を覚える。逆に痛みに無頓着な人も。
  7. 強い揺れや動きに対して過度な恐怖や不安を感じる。逆に刺激好きな人も。
  8. 物をうまく運べなかったり、着脱に時間がかかる。

強度行動障害の人数は

全国で強度行動障害のある人は療育手帳交付者の1%程度とされ、行動障害関連の福祉サービス利用者を含めると5万人を超えると伝えられています(西日本新聞2021年12月12日)。生まれた時からではなく、中学、高校に激しくなるケースもあります。思春期以降の強いこだわりや自傷行動、他傷や破壊行動など見られる場合も少なくないです。

行動障害の事例

行動障害が強くなると家族や施設だけでは支えきれず、長い期間、精神科病院に入院することもあります。治療も特性をみながら慎重に行う必要があります。もう少し具体的な事例を見ていきます。

 

  • 自分で顔を引っ掻く
  • 膝や肘を壁に打ち付ける
  • 変形するほど頭部を叩く。
  • 相手に噛みつく、殴る、叩く、髪を引っ張る、頭突き。
  • 気になるものがあると、周りが止めてもその行動をやめられない。
  • ガラス、家具、ドア、茶碗、椅子など破壊。
  • 服を破く
  • 昼夜が逆転する。
  • 寝床についていられない。
  • 特定のものしか食べず体に異常をきたす。
  • 食べられないものを口に入れる。
  • 椅子に座っていられず周りと一緒に食事できない。
  • 目を離すとじっとしていられず走り回る。
  • ベランダなど高く危険なところに上る。
  • 大声を出したり、一度泣き始めると数時間も続いたりする。

 

ケアするための5つの原則

行動障害のある方は興味の限定やこだわりや、それに対する過度な執着性や過敏性によって嫌悪感や不信感を高めることがあります。そのため、悪条件が揃えば障害の度合いが軽くても、問題行動が頻発する恐れもあります。行動障害のある人を支援するときに基本となるのが、次の5つの法則です。

  1. 居住内の物理的構造化
  2. ひとりで過ごせる活動
  3. 確固としたスケジュール
  4. 移動手段の確保
  5. 安心して通える日中活動 

 

経験でいえば、行動障害のある方はゴチャゴチャとした環境や、人の出入りが激しい場所は嫌う傾向があるように思います。スケジュールを突然変更することも嫌います。今日のスケジュールを提示して、理解した上で行動すると落ち着くことが多いです。

「数息観(法)」とは

問題行動が起きたときの対処法はさまざまです。それぞれの障害特性や状況によっても違います。薬を飲んでいれば絶対ということもないですし、行動療法で確実に治るものでもありません。介護職として感じることは、常日頃の積み重ねで問題行動は軽減する可能性が高いということです。突発的な問題行動を起こさないためにも、落ち着いた状況のときに心を穏やかにするトレーニングを行っていると効果は高いように思います。

そのひとつに瞑想があります。欧米では、瞑想(Meditation)としての呼吸法が注目されています。欧米の企業で取り入れられているマインドフルネスも瞑想法を活用したストレス軽減法です。日本でも東邦大学医学部で呼吸法がセロトニン神経を活性化して心の病気を治癒させるという研究がされています。簡単な呼吸法のひとつに「数息法」があります。これは認知行動療法でも取り入れられているもので、単純に数を数えながら「腹式呼吸」をする方法です。

数息法のやり方

数息法のやり方は次のとおりです。

  1. 肩の力を抜き、楽な姿勢で椅子に座り、目を閉じる。
  2. 腹式呼吸をする(深呼吸ほど長くはないが、ゆったりとした呼吸)。
  3. 吐いて吸ってをくりかえしながら、呼吸を数えていく。
  4. 息を吸って「1」、吐いて「2」、吸って「3」、吐いて「4」と呼吸を意識して心のなかで数えていく。
  5. 10まで数え終わったら、1に戻って、また10まで数える。
  6. 数がわからなくなったときは、また1から数える。
  7. 1回5-10分、1日に1-2回行う。

 

行動障害のある方に行う場合は、顔をみながらゆっくりと同じ動作をしていきます。問題行動が生じた時に呼吸法をするのではなく、日頃から一緒に行うことでコミュニケーションをとっています。ただし、うつ病やパニック障害の場合は心身の状態が不安定になることもあります。状況が悪化している場合は専門家に相談しましょう。

本日もありがとうございました。

 


参考


(1)熊野宏昭「体の不調が続くとき・心身症」(『NHKきょうの健康』2003年5月号、日本放送出版協会、84頁。)