胃瘻は「いろう」と読みます
重度訪問介護では利用者さんに「胃ろう」を行うことがあります。胃ろうとは身体機能の低下などで口から食事をすることが難しくなった方に、胃から直接、栄養を摂ってもらう医療措置です。
これは介護職であっても資格がなければ行うことはできません。「特定の者を対象に実施する喀痰吸引等研修(第3号研修)」に合格し、さらに実施テストを受けて胃ろうの介護が可能になります。今回は自宅で「胃ろう」の介護を行う際の手順や方法などをまとめてみました。
- 胃瘻は「いろう」と読みます
- 胃ろうとは
- 胃ろうの造設
- カテーテルの種類とは
- 記録を確認
- 必需品
- 体調や意思の確認
- 座位の調整と誤嚥予防
- 栄養剤と滴下
- クレンメの注意点
- チューブの破損や抜けを確認
- 声かけのポイント
- 滴下の所用時間は
- 注入中の異常ポイント
- 胃ろう完了〜まとめ
胃ろうとは
胃瘻(ろう)とは、口からうまく食事ができない人や、口からの摂取が可能であっても飲み込みが心配で誤嚥性肺炎のおそれがある人に対し、おなかに食べ物を流し込むための小さな口をつくり、胃に直接栄養物をいれるというものです。
胃瘻カテーテルは、体外に出ている長さによってボタン型とチューブ型に分けられます。また、管の形状からバルーン(風船)型とバンパー型があります。バルーン型はバルーンが破裂してしまう事があり、バンパー型に比べると壊れやすいです。
ボタン型は体外に出ている部分が短く、チューブ型は長いです。体外に出ている部分が長いと、抜くつもりはなくてもひっかかり、外れる可能性があります。そのため、ボタン型の方がチューブ型よりも自己抜去しにくいです。
胃ろうの造設
胃ろうの造設には開腹手術ではなく、内視鏡が用いられることが多いです。昔は開腹していたようですが、現在は内視鏡を利用して胃から皮膚にかけて小さな穴を開けます。症状が回復し口から食べられるようになった場合など、必要なくなった場合に胃ろうは外す事が出来ます。
口から食べるための嚥下訓練を行う際、経鼻胃管が邪魔になって誤嚥することがあるため、一時的な栄養補給の経路として胃瘻増設を行うケースもあります。
カテーテルの種類とは
胃ろうカテーテルにはいくつかの種類があります。チューブが長くついているタイプをチューブ型、チューブがないタイプはボタン型です。今回はボタン型で解説します。ボタン型は専用のチューブを介して栄養ラインをつなぎます。
記録を確認
まずは、利用者さんの前回の記録を確認します。確認としては嘔気や嘔吐、下痢、熱、意識状態などです。同時に医師や訪問看護師の指示がないかもチェックします。衛生面には気を付けて必ず手指消毒後に作業を行います。
コロナ対策としても外から細菌等を持ち込まないように配慮しています。流水と石鹸での手洗いですが、「アルプス一万尺」を一曲歌うくらいが良いとされています。
必需品
利用者さんによって準備するものは異なります。使用する器具は以下のものです。
- 注入ボトル
- 栄養チューブ(長い)
- 接続チューブ(長い)
- シリンジ
- 手袋
- 白湯
- 栄養剤
その他、常備品などが用意されています。
体調や意思の確認
胃ろうの際には、利用者の意思や体調の確認をします。僕は訪問した際のあいさつで声のトーンや明るさなどをチェックしています。また体温や腹部症状も確認して、いつもと違う感じではないかを見ます。
胃ろうでは、利用者の意思と同意の確認も大切です。現場ではついついルーティンになってしまい忘れてしまうこともあるので気をつけています。それが終わると必需品の確認です。注入ボトルは清潔であるか、乾燥しているかなどの確認をします。
栄養剤は種類、量を見ます。栄養剤は常温であることが原則ですが、利用者さんのやり方に従っています。ただし要望があっても冷蔵庫から取り出したものや冷たい食品は避けるようにしています。栄養剤の温度は体調に影響するので慎重に行います。ここらへんは利用者さんとの話し合いで決めます。
座位の調整と誤嚥予防
利用者さんの体位を30度、または90度坐位にします。車椅子やソファーに移乗するケースもあるようですが、基本は利用者さんの意思で体位を決めていきます。注意点としては胃食道逆流に気をつけます。
また誤嚥予防のために体位を確認することは大事です。利用者の頭を高くしたときは顔色が蒼白になっていないか観察をします。もし変わったことがあれば気分を聞いて、望む体位に変えます。注入中しばらくは同じ体位になるので坐位の安楽には気を遣います。
栄養剤と滴下
注入内容を確認し、栄養剤を用意して注入ボトルにいれます。チャンバー(滴下筒)には半分くらい満たして、滴下(てきか)を確認します。そして注入用ボトルのチューブについているクレンメを閉めます。
空気が十分、抜けたところでクレンメを閉じます。次に量を確認して栄養剤を入れます。注入用バッグをつるして、チャンバーを指でゆっくり押しつぶして、3分の1から2分の1程度に栄養剤を充填します。チャンバー内の滴下の様子が確認できるので、速度を調整していきます。
クレンメの注意点
クレンメをあけて、経管栄養セットのラインの先端まで栄養剤を満たします。そしてクレンメを閉じます。これはチューブ内に残っている空気が胃袋に入らないようにするためです。その際にもチューブ先端が不潔にならないように注意します。
チューブの破損や抜けを確認
胃ろうのチューブに破損や抜けがあっては危険です。胃ろうから出ているチューブの長さに注意しながら、抜けている場合は医療関係者に連絡します。胃ろう周囲の観察も大事です。チューブの破損をはじめ、ボタン型ではストッパーが皮膚の一か所へ食い込んで圧迫がないかなどを確認します。皮膚が赤くなっている場合は本人にも伝えます。
声かけのポイント
胃ろうカテーテルをつなぐときは、利用者に声をかけながらリラックしてもらうようにしています。信頼関係があった方がお互いに安心するし、作業もスムーズになります。その後、ボタン型胃ろうカテーテルに連結した接続用チューブの栓を開けて、胃内のガスの自然な排出を促します。栄養剤を所定の位置につるして、胃ろうチューブと注入用ボトルのラインを接続します。
滴下の所用時間は
クレンメをゆっくり緩めて滴下しますが、最初に悩むのは滴下の時間ではないでしょうか。滴下の所要時間は利用者さんと確認しながら行います。エンシュア1缶に対して1時間以上だとゆっくり過ぎるかもしれませんが、こちらも利用者との話し合いで進める方が良いかもしれません。
注入中は、胃ろう周辺から栄養剤の漏れがないかを確認します。体位によって注入速度が変わるので体位を整えた後には必ず滴下速度をチエックした方が良いです。
注入中の異常ポイント
注入中は異常がないかをチェックします。息切れや顔色、意識の変化などの症状があるときは速度を落として様子を見たり、いったん投与を中止します。血圧が測定できる場合は測定して判断します。不安であれば、家族や医療者に連絡を取り対処をあおぐ必要もあります。注入中は他のケアはせずに見守るようにしています。これは厚労省でも推奨しています。
胃ろう完了〜まとめ
注入も完了したらクレメントを閉じて、経管栄養セット側のチューブを外します。次にカテーテルチップ型シリンジで、胃ろうチューブに白湯を流します。これは胃ろう側のチューブ内での細菌増殖を予防するのが目的です。ボタン型は、専用接続チューブをはずして栓をします。注入がおわったら呼吸状態、意識、嘔吐などがないか注意します。何事もなければ後片付けをして記録をつけます。以上、簡単でしたが自宅での「胃ろう」のやり方や手順法でした。
本日もありがとうございました。
<参考>
喀痰吸引等研修テキスト・第三号研修(特定の者対象) 厚生労働省