「介護業界でお金を稼げる職種は?」
「ブラック企業の見分け方は、どうすればいいのでしょうか?」
介護業界の支援を行う過程では、こんな質問が多く寄せられます。介護職として働くのであれば、賃金が高く、安心・安全なホワイト企業で働きたいのは当然のこと。
介護労働安定センターではこのほど、令和元年度の介護労働実態調査の結果を公表しました。
今回は介護業界の最新データをベースにしながら、介護で稼げる職種やブラック事業所を避けるためにチェックしたいポイントを解説します。
①ボーナスは平均59万円!?
まずはお金の話から。最新の介護業界の正規職員の平均月収はいくらなのでしょう。
今回の調査によると23万4439円というう結果でした。えっそんなに?それとも安いなあ~という感じでしょうか。
月収は去年よりわずかに減少…と、少し残念な感じですが逆にボーナス(賞与)は年々増えているんです。
正規職員のボーナスは「59万9506円」。この調査を開始したのが4年前ですが、ボーナスは年々増加しています。
「ボーナスなんて出るわきゃない!」
「うちに賞与という言葉はない」
とお嘆きの介護士も多いかもしれませんが、令和元年度では労働者の76.6%がボーナスを支給されている状況でした。しかも月々の賃上げに比べ、賞与による支給の割合が増加傾向にあるのです。
もし正規社員でボーナスを貰えない事業所は、間違いなくブラックです。しかも正規社員の7割が貰っているのは当然として、非正規社員でも4割がボーナスを貰っているそうです。
現場の肌感としては、派遣社員ではボーナスを貰えることは殆どないと思いますが、施設系ではパートさんに賞与を出しているイメージがありますね。
一方、訪問介護の賞与体系は様々です。金額は勤務時間等によってバラバラですが、やはりお金は働く活力になりますよね。
「ボーナス貰える介護士なんてほとんどいないよ」と諦めている方、もしくは洗脳されている方がいらっしゃったら、それは大きな損をしているのです。
②処遇改善加算は8割近くの事業所が取得
介護職員処遇改善加算を取得した事業所は全体の78.0%と8割近くに上っています。
この処遇改善加算とは、介護職のためにキャリアアップの仕組みを作ったり、職場環境の改善を行った事業所に対して介護職の賃金を上げるお金を支給するものです。
つまり介護職のお金をあげるためには処遇改善加算の取得はマストであり、取得していない(する気のない)会社はブラック認定といえます。
ざっくり説明します。例えば、東京都で時給1300円でバイトしているA君。
ホワイト会社では加算取得のプラス1割を付加して支払ってくれるので、手取り額は増えて、時給1300円+加算1割130円=時給1430円となります。
ブラック会社の場合、加算をぜんぶ事業所の金庫に入れてしまい、ウヤムヤニなってわからん研修費に消えたりします。
基本的には介護職員に支払っている加算ですが、加算の対応で多いのは以下でした。
- 「一時金の支給」
- 「諸手当の導入・引き上げ」
- 「基本給の引き上げ」
「諸手当の導入・引き上げ」は年々上昇しています。「基本給の引き上げ」は上昇傾向であったものの令和元年度ではわずかに減少しています。
この改善加算の対応は事業所の裁量になってしまうので注意が必要です。
③稼ぎはやはり、ケアマネ優位
正規職員の月給を職種別でみてみましょう。
- 看護職員、27万2,123円。
- 介護支援専門員、26万0,041円。
- 訪問介護員、21万6,583円、
- 介護職員、21万5,502円。
あえてになりますが、いまだに看護職員は月給高いです。
ケアワーカーで比較するとやはり稼いでいる職種は介護支援専門員、いわゆるケアマネですね。仕事も大変、責任も大変、優秀なケアマネが少ない!と現場からの声もよく聞きますが介護業界の中では高収入です。
ケアマネと介護職では約5万円の賃金差がみられます。
では派遣社員やパート、アルバイトの場合はどうでしょう。非正規職員の時間給を職種別で見ると看護職員が最も高く1,429円、介護職員が最も低く1,004円でした。
訪問介護員は介護における資格が必須で人材不足といわれています。そのため介護職員よりも賃金は高いです。
個人的にはノーマライゼーションの流れや高齢者の権利や尊厳等を考えると、訪問介護のニーズはますます高まってくると思います。しかし賃金を出し渋るブラック事業所は人手不足に陥り、ますます淘汰されていくと思います。
④ブラック事業所の問題点は
介護事業所を運営する上で問題点で多かったのは主に2つです。
- 「良質な人材の確保が難しい」56.7%、
- 「今の介護報酬では人材の確保・定着のために十分な賃金を払えない」47.5%
介護人材の不足感を抱いている事業所は依然として高い状況にあります。なぜ採用が困難なのかというと、理由は明快です。
- 「同業他社との人材獲得競争が厳しい」57.9%
- 「他産業に比べて、労働条件等が良くない」52.0%
- 「景気が良いため、介護業界へ人材が集まらない」40.9%
3番の景気が良いためはコロナ渦によって変化してくることが予想されます。しかし介護業界に入っても長く続けられる人がどのくらいいるのかは未知数です。
今後、ますます事業所の手腕が問われそうです。
⑤相談窓口があるか、ないか。
事業所に相談窓口や担当者がいるかどうかのチェックも重要です。今回の調査では、相談窓口がない事業所の方が介護職員の悩みが多いことが分かりました。
なかでも賃金が低い、精神的にきついと思っている介護職員は、相談窓口がある事業所に比べて10%以上も高い結果でした。
介護業界では、年代も性別も歩んできた人生も全く違う人達がごちゃまぜのように働いています。出入りも激しいので誰に相談していいのか、あいまいな事業所も多いです。
相談していた人が「あれ?辞めちゃった」というケースもありますし。管理者も例外ではないです。
相談窓口がある事業所ではスタッフから「悩み、不安、不満は感じていない」という回答が上回っていました。やっぱり日頃の悩みなどを相談できる窓口や、愚痴や不満を聞いてくれる担当者がいるとありがたいです。
これは事業者だけではなく派遣会社の選び方にも通じると思います。ホワイトな会社は積極的にコミュニケーションを図ってくれますが、最初だけで何もしてくれない会社も存在します。
こうした状況は口コミでも広がりますのでチェックしてみると良いかもしれません。
⑥雇用管理責任者がいるかどうか
雇用管理の改善に必要とされる雇用管理責任者の選任状況について、「選任してい
る」事業所は40.8%、「選任していない」事業所は55.4%でした。
興味深いのは、雇用管理責任者を選任している事業所の離職率は低いという結果でした。
訪問介護員計で13.1%、介護職員系で15.3%と、いずれも選任していない事業所よりも低い結果であった。
介護人材の離職防止や定着において雇用管理責任者の選任効果があることがわかります。
雇用管理責任者というと何やら偉そうな感じがしますが、非正規職員の正規登用や仕事の評価を賃金に反映したり、キャリアパスによる給与体系の整備、悩みやメンタルヘルス等の相談にも乗ってくれたりします。
つまり、雇用管理責任者を選任している事業所は、積極的に雇用管理改善に取組んでいるホワイト企業と言えるかもしれません。
⑦採用時研修を設定しているか
採用時研修の受講有無を尋ねた回答では、正規職員は「受けた」が48.9%、非正規職員が39.7%といずれも半数を下回る結果でした。
また採用時研修を受けた者のうち「安全衛生研修を受けた」と回答した正規職員は69.6%、非正規職員では70.1%でした。
安全衛生研修の一部である腰痛予防や感染症対策等は、介護業務においては必要不可欠な研修です。
採用時にこうした研修を実施しているかどうかも、介護ブラック事業所を避けるチェックポイントだといえます。
最新の調査には介護ブラックを避けるためのいくつかのヒントがあります。介護職として安心・安全、よりよい環境で働くために上手に活用したいですね。
本日もありがとうございました。
サトシ(@satoshi_Jp0415)でした。
【引用文献】
- 介護労働の現状について
令和元年度 介護労働実態調査の結果と特徴 - 公益財団法人 介護労働安定センター