ツナガレ介護福祉ケア

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実録!ガイドヘルパーとは?同行援護の仕事や資格費用、向いている人とは?~ツナガレケア

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人間は目によって、どのくらいの情報を得ているのでしょう。普段はあまり意識しない人も多いと思いますが、視覚からの情報は8〜9割とされています。つまり「見る」という行為は、一瞬のうちに全体を把握できる素晴らしい能力なのです。

例えば、「人が多いなあ」と交差点を渡りながら多くの情報を無意識のうちに得ています。人の流れや車の多さ、交差点の信号、好みの異性…。しかし視覚障害者の場合、ほとんどの情報を得ることが難しいといえます。

視覚障害の方の不自由は2つあります。それは「読み書きを含むコミュニケーション」と「移動」です。ちなみに点字を読める人は全体の1割と言われています。こうした方を支援する仕事にガイドヘルパーがあります。業界では同行援護従業者といいます。この記事では、ガイドヘルパーの役割やお金、向いている人などを解説します。

高齢者と視力

一説には60歳以上の人は読書のときに、20歳の人の3倍以上の光量が必要であるといわれています。加齢により起こるのが老眼です。水晶体は通常では見たいものとの距離に合わせて形を変えることによって焦点を合わせます。水晶体が硬くなることによってこの機能が低下し、近くのものに焦点を合わせることが難しくなります。

また水晶体の密度が高くなることにより、薄暗いところでは物が見えにくくなります。水晶体自体も透明度が低下し黄色くなるため、色のコントラストが見分けるのが難しくなります。さらに眼から脳へ視覚信号を伝える神経細胞の減少により陰影や色調、奥行きを区別するのが困難となり、視野が狭くなります。

ガイドヘルパーの仕事と資格

障害福祉サービスの中で、目の不自由な方を支援するのが、ガイドヘルパーです。通称「ガイヘル」さんと呼ばれたりします。ガイドヘルパーとして仕事をする場合、同行援護従業者の研修を終了して資格を取得しなくてはいけません。

同行援護従業者の資格とは?

同行援護とはなにか。その定義は次のようになっています。

視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行する。移動に必要な情報を提供し、移動の援護、排せつ及び食事等の介護などの外出する際に必要な援助を適切かつ効果的に行う。

同行援護は障害者自立支援法改正に伴い、2011年6月に厚労省から施行されました。つまり、まだそれほど歴史がある資格ではありません。同行援護の養成研修には、一般課程と応用課程の2種類があります。一般課程を修了すると同行援護サービスを行うことができます。その上の応用過程を終えるとサービス提供責任者の資格要件を得ることができます。

資格取得にかかる費用

同行援護の資格取得の費用は学校によってさまざまです。ちなみに横浜にある某学校で、同行援護を取得する料金は次のとおりです。

一般課程 31,900円

応用課程 20,900円

一般・応用課程一括 42,900円

資格取得の費用は、サービスを提供している事業所が負担してくれるところもあります。また地域によっては、ガイドヘルパーを増やすためにサポート(助成金など)してくれるところもあります。将来的に事業を展開をしたい方は、応用過程をとることをおすすめします。

日本の福祉は申請主義です

日本の福祉サービスは、申請主義です。基本的に本人が役所に申請をしなくてはサービスを受けられません。申請をするには主に2つの方法があります。

セルフプランで申請する方法

セルフプランは「自分でこういう生活をしたい」と考えて、自分で計画して申請する方法です。市区町村ごとに書式が定められている場合もあります。窓口は、住んでいる市区町村の保険福祉課や障害福祉担当課などです。

メリットは自分で納得のいくサービスを申請できることです。一方、デメリットは複雑な書類申請を自分で行うことです。どのようなサービスを利用できるのか?自分に合っている事業所は?など法律の勉強や事業所探し、サービスの依頼手続きなど時間や手間はかかります。最近はセルフプランを推奨しない自治体も増えています。というのも自分で計画を立てると「客観性の担保」が難しくトラブルも発生しやすいからです。

頼りになるのは「相談支援専門員」

相談支援専門員は介護でいうところのケアマネジャーです。障害者や家族にとって最も頼りになる存在ですが、知らない方は多いです。相談支援専門員は、当事者と相談をしながら障害サービス提供に向けた計画を立てて申請します。

客観性の担保やトラブル予防もあり、相談支援専門員へ頼みたい方は増えています。ただし相談支援専門員の数が足りない状況があります。「頼みたくても頼む人がいない」というのが現在の介護福祉の現状なのです

ガイドヘルパーの見つけ方

ガイドヘルパーを利用したい方は役所にプランを申請します。役所側がそれを検討して認められれば、支給決定になります。一昔前は、役所が支援事業所を決めていました。これを措置といいます。しかし最近は利用者が自由に選ぶことのできる契約制度に変わりました。

ガイドヘルパーは基本的に地域の事業所に所属しています。同行援護と呼ばれるサービスになります。「同行援護」と「ご自身の住んでいる地域」で検索すると事業所が出てきます。分からない場合は役所の窓口に聞いてみましょう。

ガイドヘルパーに向く人

  視覚障害者のガイド(同行援護)は安全かつ快適に行うことが必要です。何より期待されているのは、目で見たものを言葉にするセンスです。実際に目が見えない方のガイドをしていると、言葉のチョイスの下手さに落ち込むこともあります。目で見える情報を言葉にして伝える能力は、いうなればアナウンサーと同じようなものです。難しくて当たり前ですよね。

「情報を完璧に伝えよう」とか「上手に伝えよう」と頑張りすぎるとプレッシャーに押しつぶされそうになります。下手な言い回しでも、自分の言葉で伝えることが大切だと思います。

例えるならば、海外で英語をしゃべるような感じです。完璧に話そうとすればするほど追い込まれてしまう。むしろ相手とのコミュニケーションを大事にすることで伝わることは多いです。アナウンサー志望の方はスキルアップとしても挑戦すると良いかもしれませんね。

代筆や代読

ガイドヘルパーの仕事に、代筆や代読があります。視覚による情報入手が困難である視覚障害者にとって、書類などを「読むこと」「書くこと」は難しいです。しかし社会生活を送る上でこれらの読み書きに対する支援「代筆・代読支援」は必須です。

最近では音声パソコンなどで視覚障害者自らが書類を確認したり、記入することは可能となってきましたが、実生活では紙に印刷された書類が圧倒的に多く、読み書きの支援は求められています。

意思疎通支援事業とは

障害や難病により意思疎通を図ることが難しい方に、手話通訳や要約筆記などの方法で支援する人を派遣する事業です。利用者の障害の種類や重さ、置かれている環境などを踏まえ、ニーズに即したものを行います。

情報提供は視覚障害の方には大事です。共感して理解した上で支援するためには、心理学的にはラポールと呼ばれる信頼関係の構築が大切です。信頼を得たかどうかは、相談や愚痴などがでてくると良い傾向です。また銀行や裁判所、役所に一緒に行けるようになると、かなりコミュニケーションがとれてきた状態といえそうです。

ガイヘルの安全確認ポイント

バスに乗る際や階段を登る際はガイドヘルパーが安全確認のために先にのぼります。手ではなく、利用者にはガイヘルの肘の上を握ってもらいます。手では重心が下になるため、ふらつきが出る可能性があります。
エスカレーターでガイヘルが後ろから降りると、視覚障害の方が降りる時にふらつきがあったりした場合に助けにくくなります。一緒の段に並んで利用するのがいいとされています。また白杖を持っていない側に立ち、視覚障害のある方の半歩前に立ち誘導します。声掛けや、場合により肘の上や腕をもってもらいます。

奥さんが嫉妬した九州事件

ガイドヘルパーをめぐって、こんな事件を聞きました。むかしむかし九州に、目の不自由な高齢の夫婦がいました。おじいさんは責任感が強く、おばあさんも周囲に気を配る優しい性格でした。二人は共に助け合い、障がいがあっても幸せに暮らしていました。

そんなある日、おじいさんのガイドヘルパーに若い女性がやってきました。おじいさんは、この若い女性をいたく気に入って「もう、あの子しか来てもらいたくねえ。俺の担当は、あの子だけにしてくれ!」と訴えるようになりました。おじいさんは若い女性に支援してもらうときは嬉しそうです。身だしなみにも気を使い、鼻歌をうたいながら出ていくようになりました。

こうした状況におもしろくないのは、おばあさんです。日に日にストレスがたまり、爆発寸前です。ついに彼女が働く事業所に「もう、あの女を来させないでください!」と怒鳴り込んだのです。これには事業所も困りました。どうすればいいのか女の子を呼んで話し合いました。

おじいさんからは来てくれるようにお願いされ、おばあさんからは来るなと言われる・・・若い女性はどうしていいのかわからずに泣き出しました。そのとき、ベテランのスタッフがぽつりと言いました。「ためしに、おばあさんのケアもやってみたら?」

次の日、若い女性はおばあさんのガイドを担当しました。おばさんは当初、敵対心をむき出しにしていましたが、だんだんと彼女の能力の高さがわかっていきました。丁寧で分かりやすいケア、配慮のある言葉遣い・・・「なんて気持ちがいいんでしょう」彼女と別れるときには、すっかりファンになっていました。

おばさんは理解しました。おじいさんがなぜ、彼女に頼みたいと言っていたのか。そして自分が見当違いのヤキモチを焼いていたことを反省しました。その後、若い女性はおじいさんとおばあさんの2人を担当するようになりました。めでたし、めでたし。

百聞は一触にしかず。

ガイドヘルパーは、主観的、感情的にならずに客観的に伝えることが大切です。よく百聞は一見にしかずということわざがありますが、視覚障害者にとっては「百聞は一触にしかず」といわれます。言葉で伝わらない場合は、実際に手に触れてもらうとわかることも多いです。

ガイドをしているときに気をつけたいのは、道路です。道路面の素材や状況、グレーチングやマンホールのある滑りやすい路面は危ないです。また横断歩道や縁石、坂道など段差のある場合は「階段がありますよ」だけでなく「上がる、下がる」の言葉を付け加えると親切です。

外出時の注意点

利用者の背の高さを考慮することも大切です。のれんや車に乗るとき、店では商品棚にも気をつけたいです。明るい暗いは視覚障害者でもわかる方が多いです。急に暗いところから明るいところに出る場合は、その変化を早めに伝えます。森の間などは「木漏れ日が10時の方向からさしていますよ」など伝えるのも良いです。視覚障害者の方はビルの天井の張りなどの圧迫感を感じるそうです。

ガイドヘルパーの禁句

ガイドヘルパーの禁句に「気をつけてくださいね」があります。気をつけるのはガイドヘルパーなので、気をつけないで欲しいという意識が利用者さんにはあります。また「あっち、そっち、こっち、目の前」という言葉も禁句です。「ご覧のように」という言い方も目から情報が入ってこない方には不適切な表現です。

ではどう言えばいいのか。目が不自由な方には、「正面におきますね」と言い換えたりします。こうしたことは経験を積むことで覚えていくことが多いようです。

本日もありがとうございました。