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障害者の雇用で知っておきたい6つのこと

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2020年2月、厚生労働省が驚くべき発表をしました。

 

中央省庁などで新たに「5197人の障害者が採用され雇用率が平均で2.85%になった」というものでした。(去年末時点)

 

いやいや、ちょっと待って。

このニュース手放しでは喜べない裏事情があるのです。

 

 

 

①大型採用の裏に障害者の「雇用数水増し」問題あり

 

実は国の行政機関では、一定の割合以上の障害者を雇う義務があります。

 

しかし2年前、中央省庁で水増し問題が発覚しました。職員に占める障害者の割合が法律で義務づけられた2.5%を下回っていたのです。

 

「障害者に優しい社会を」と声高に叫んでいた行政機関の化けの皮が剝がれたわけです。

 

これに慌てた安倍総理は「組織全体として障害者雇用を推進するという意識を徹底する」と語りました。

 

この発言で尻に火が付いた行政機関が慌てて障害者を雇用した……というのが実際のところではないでしょうか。

 

 

障害者の「働き方改革」は置き去りになっている

 

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障害者雇用促進法で定められている法定雇用率。

守らなくてはいけないのは国の機関だけではありません。民間企業も対象です。

 

具体的には、45.5人以上の常勤従業員がいる会社は従業員の2.2%以上の障害者の雇用が義務づけられています。

 

2021年4月までに、さらに2.3%にまで引き上げられることも決まっています。

 

障害者の雇用状況は、ここ10年間で大きく変化

 

厚生労働省によると、

2009年の障がい者の雇用状況は、

合計で33万2,812人でした。

当時の内訳は下記になります。

  • 身体障害者は、26万8,266人。
  • 知的障害者は、5万6,835人。
  • 精神障害者は、7711人。

 

では、10年後の2019年はどうか。

雇用者数は、56万609人で、

23万人も増えています。

下記、内訳です。

  • 身体障害者は、35万4,134人。
  • 知的障害者は、12万8,383人。
  • 精神障害者は、7万8,092人。

 

ここでも注目したいのは精神障害者。

伸び率は、なんと10倍です!

 

しかしここに数字のマジックが隠されているんです。

 

②精神障害者はほとんど働けていない!

 

18歳から65歳未満の在宅障がい者は、350万人を超える

 

現在、日本に障害者はどれくらいいるのでしょう。

 

全体の概数では、

「身体障害者」は436万人、

「精神障害者」は392万4千人、

「知的障害者」は108万2千人。

合計で約936万人に上ります。

 

そのうち在宅にいる18歳~64歳。

いわゆる働き盛りの人は、

340万人を超えるとされています。(参考:厚生労働省資料

 

なかでも注目は精神障害者の数。

中高年を中心に急増しています。

現在、精神障害者の人数は

392万4千人ですが、

雇用されているのは、

7万人

 

つまり・・・

精神障害者のわずか0.02%しか雇用されていないのです。

 

ストレスでうつ病になり心が病む。いまや珍しくない精神障害者が増える一方で、働く場所は殆ど得られていない。

 

これでは日本の財政もひっ迫するし本人にとっても暗やみから抜けられない不幸な状態が続くだけです。

 

うつ病などの精神障害者は、まだまだ増える

 

障害者の中でも精神障害の割合は今後も増えることが予想されています。

大きな理由は「範囲の拡大」です。

 

近年、精神障害と指定される症状が増えています。

また今回のコロナウイルスをきっかけに経済的不安などでうつ病になる人は少なくないかもしれません。

 

将来は健常者と障害者はボーダレスになり、どこで分けられるのか判断は難しくなりそうです。

 

 

 

 

③障害者雇用で悩む企業の本音

 

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障害者を雇う側の企業の本音としては、

「精神疾患の人がどのくらいの仕事ができるのか見えない」

「うつ病の人は雇いづらい」

「障がい者を雇うと新たな仕事を作ったり、ケアする人が必要になる」

 などがあります。

 

知的障害者や精神障害者は症状の不安定さや意思疎通が十分にできないなどの理由から、企業側としても雇いにくい面は確かにあります。

 

国内初の障がい者のための労働組合、ソーシャルハートユニオンでも「手探り状態の企業が多い」と現状を明かしています。

 

サポート体制の課題

 

障害者5人以上を雇用する場合は、彼らをサポートする障害者職業生活相談員を選任することが義務付けられています。

 

例えば、従業員1000人の企業では障害者を22人以上雇いますが、それに伴い相談員も雇用することになります。

 

相談員を雇い専門の仕事を生む出すには企業側にとっても負担は大きいのです。

 

雇用したい気持ちがあっても負担の大きさで板挟みになる現状。そうした課題に向き合うにはどうすればいいのか。

  

障害者の仕事は別会社へ

 

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最近は、障害者のサポートを他社にゆだねる企業も出てきています。

 

千葉県に障害者を受け入れている農園があります。そこでは多くの障害者が朝から夕方まで働き、汗を流しています。

 

農作業は作業に没頭できて収穫の達成感も得られます。

また人との関わりの中で社会性の向上やスキルの習得にもつながることから、精神・知的障害者に適している仕事のひとつとされています。

 

この農園で働く障害者は、雇用関係にある企業から給料を貰っていますが、勤務先はその企業ではなく農園を運営する会社です。

 

つまり本来の雇い主である企業は、彼らを農園に派遣して仕事をしてもらい、給料を与えているわけです。

 

農園にはサポート役もいますので業務もスムーズに行えます。業務も生み出す農園には業界を問わず280以上の企業が参加しているそうです。

 

ビジネスモデルではなく福利厚生の一環

 

障害者がイキイキと働ける農園は働き場所として素晴らしいと思います。

しかし残念なのは、障害者が生み出す農作物は売り物ではありません。

福利厚生として雇用先企業の社員らに配られるケースが殆どなのです。

 

障害者の新たな職場としてお金を生むビジネスになれば企業にとってもメリットは大きいのではないでしょうか。

 

④障害者と仕事「罰金」を選ぶ企業も多い

 

障害者雇用促進法が誕生して今年でちょうど60年。

現在、日本で法定雇用率2.2%を達成している企業は48%と半分にも満たない状況です。

 

この雇用率を達成すると1人超過すれば月に2万7千円が国から会社に支給されます。しかし未達成の場合は1人不足で月5万円の罰金を納めなければなりません。年間にすると60万円です。

 

罰金で納められたお金は雇用率を超えた企業に支払われる原資となります。

つまりペナルティの額が満たしたところに支払われる仕組みです。

 

雇用率を満たさない場合は行政から指導されます。最悪の場合は厚生労働省のホームページに企業名が掲載されます。

 

それでも障害者を雇うより罰金を選ぶ企業が多いのです。

 

⑤海外における障害者雇用の状況とは?

 

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海外の障害者雇用者促進制度は日本よりも進んでいます。

 

✅フランスは従業員20名以上の事業所ごとに全従業員の6%の障害者を雇用。

✅ドイツは従業員20名以上の企業ごとに全従業員の5%に該当する数の障害者を雇用。

 

アメリカでは援助付雇用により障害者が労働市場に参入しています。

その特徴は健常者とともに働けるノーマルな場が多いこと。

 

適切な収入を得ることが重要なカギだとの認識が広まっています。

 

⑥現代の「幸福の職場」はあるのか

 

そもそも働きたい障がい者と雇いたい企業をマッチングさせる仕組みは機能しているのでしょうか?

 

原則、窓口となっているのはハローワークです。最近では民間の転職エージェントもありますが数は多くありません。

 

昔「幸福な職場」という演劇が話題になりました。

 

これは昭和30年代、日本理化学工業が初めて知的障害者を雇用した時の物語を描いた物語です。日本理化学工業といえば、チョークが有名ですよね。

 

大切なのは障害者の適正、個性を見極めて採用することですが、現在そこまで取り組んでいる企業はどのくらいあるのでしょうか。

 

ビジネスチャンスは障害者の隠れた才能を活かすこと

 

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障がい者の中には隠れた才能を持った人が多いです。

 

そういう方たちをどうやって発見して、能力を発揮してもらう機会を作るか。

これこそが企業の腕の見せ所かもしれません。

 

しかしまだまだ規制のハードルも高く、貧困ビジネスだと批判の声も上がることもあります。

 

障害者の働きたいというニーズを汲み取って、利益を生む枠組みを考える。そして共存共栄の「幸福な職場」を提供していく。

 

理想論かもしれませんが、助成金を与え続けるだけの障がい者雇用はもう限界にきているのではないでしょうか。