パーソナリティ障害
最近よく聞くパーソナリティ障害。恋人の行動がどうしても理解できないとき、職場で困った行動ばかりとる人…。もしかしたら、その人は、パーソナリティ障害かも知れません。どのような種類や特徴があるのかまとめてみました。
凶悪犯罪とサイコパス
2016年、知的障害者の施設で19人が殺害された事件。殺人罪などに問われた元職員は、パーソナリティ障害と診断されました。もちろん障害のある人が凶悪事件を起こすわけではありません。しかし犯罪の背景には、複合的なパーソナリティ障害である「サイコパシー」が関連している可能性も指摘されています。
サイコパシーは「冷酷性や希薄な感情、利己性、無責任、衝動性、表面的魅力などの特徴」を有するパーソナリティ障害と定義されています。罪悪感や後悔の念もなく、平然と他者を騙したり裏切る。平気で「うそ」をつくことがその病理の中核をなしていると考えられています。
パーソナリティ障害の定義とは
厚生労働省はパーソナリティ障害について、次のように説明しています。
パーソナリティ障害は大多数の人とは違う「反応や行動」をすることで本人が苦しんでいたり、周りが困っているケースに診断される精神疾患。認知や感情、衝動コントロール、対人関係といった広い範囲のパーソナリティ機能の偏りから障害(問題)が生じるもの。
パーソナリティ障害は「個性」という捉え方もできます。ただし、その個性によって周りの人や本人が苦しむのが問題です。また、ほかの精神疾患が前面に出ることが多いです。対処には心理職などの専門スタッフと協力することが重要です。
ひとりで悩みを抱え込んでしまう方がいます。最近の研究ではパーソナリティ障害は経過中に大きく変化する、対策によって改善する可能性が高いことが分かっています。困ったら専門家の力を借りるようにしましょう。
パーソナリティ障害の診断テスト
アメリカでは、人口の15%がパーソナリティ障害であるという研究報告もあります。この数字を見ると決して他人事ではありません。 パーソナリティ障害にはいくつかのタイプがあり診断基準は大きく3つに分類されています。
A群(奇妙で風変わり)
- 妄想性(広範な不信感や猜疑心が特徴)
- 統合失調質(非社交的で他者への関心が乏しい)
- 統合失調型(会話が風変わりで感情の幅が狭く、しばしば適切さを欠く)
B群 (感情的で移り気)
- 境界性(感情や対人関係の不安定さ、衝動行為が特徴)
- 自己愛性(傲慢・尊大な態度を見せ自己評価に強くこだわる)
- 反社会性 (反社会的で衝動的、向こうみずの行動が特徴)
- 演技性(他者の注目を集める派手な外見や演技的行動が特徴)
C群 (不安で内向的)
- 依存性(他者への過度の依存、孤独に耐えられない)
- 強迫性(融通性がなく一定の秩序を保つことへの固執、こだわりが強い)
- 不安性(自己の不安や緊張が生じやすい)
パーソナリティ障害の共通の特徴は、発達期からその徴候が認められることです。認知、感情、衝動コントロール、対人関係といったパーソナリティ機能の広い領域に障害が及んでいます。家庭や職場などで、その兆候を見過ごさないことが必要です。
統合失調症の特徴
統合失調症の特徴として妄想や幻覚といった症状が多く見られます。自分を襲おうとしている敵がいる、誰かが自分を見張っているなどの被害妄想の他、自分の考えが人に知られている、自分には特別な力があるといった考えが現れることもあります。
感情コントロール方法
問題行動を改善する手軽な方法がゴムボールを使用したトレーニングです。次のようなやり方で感情をコントロールしていきます。
- 怒りを感じたらゴムボールを握りしめる。
- 掌(てのひら)の感覚を味わうようにする。
- カッときたら、ぐっと握りしめる。
- この感覚をずっと味わうようにする。
衝動的な怒りの感情に襲われると心は知らず知らずのうちに「怒り」の渦に支配されます。そこで起こっていることをゴムボールを握ることで、もう一人の自分が客観的に見られるようにするわけです。
パーソナリティ障害を改善するのは簡単ではありません。しかしその人の障害はそのひとの一部であり、特性だと理解することも必要です。本日もありがとうございました。
文献
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