「自分のケアは間違っていないか……」
そんな心配や疑問を抱く、介護職は多いかもしれません。
介護や福祉の現場でも使える、簡単な効果測定はあります。
今回、紹介するのはシングル・システム・デザイン。
これは事例やデータを集積し、実践効果を測定する簡単な方法です。
シングル・システム・デザイン法とは
シングル・システム・デザイン(単一事例実験計画法)は質的方法の1つです。
1つの事例(ケース)をもとに、援助を行う前と後を比較します。
効果測定を行うことで、支援効果を明らかにできます。
分かりやすくいえば、ダイエットをする前に体重をはかり、1か月後の体重と比較して、効果があったかどうかを検討する方法です。
測定方法
まず、支援を開始する前に利用者さんや家族に現在の困りごとや心配、不安などを聞いて、メモをします。
質問内容は、シンプルなものでかまいません。たとえば、「現在、不安な気持ちは10段階でどれくらいでしょう?」と聞きます。
こうした質問をいくつか用意してメモしておきます。
そして、1か月、3か月など時間が経ってから、同じ質問を利用者さんに伺います。
支援前と支援後での結果を比較しながら、利用者さんの気持ちはどのように変化したのか、それらの支援は適切だったのかを観察します。
こうした「見える化」によって、利用者さんの変化を知り、分析できます。
また、アカウンタビリティ(説明責任)にも役立てることができます。
適用対象
シングル・システム・デザイン法は、1つの事例をもとに効果測定を行う方法で、個人の支援に効果的ですが、家族など小集団に対しても効果的です。
同様の質問を、支援の前後に家族にも伺い、時間経過とともに比較することで、自身のケアが役立っているかどうかを確認することができます。
ベースライン期
効果測定法は難しいやり方ではないのですが、研究として行う場合、知っておきたい用語があります。こうした専門用語は、他の研究論文などを読むときに役立ちます。
ベースライン期(A期)とは、支援を実施する前の段階のことを指します。
つまり、利用者さんが介護スタッフからケアを受ける前の段階です。
介護スタッフによる支援(介入)を受けた時期を、インターベンション期といいます。この2つの時期の比較によって「A-Bデザイン」が構成されます。
ABデザイン
ABデザインを整理すると、「A」をベースライン期(介入前)、「B」をインターベンション期(介入)と捉え、A期とB期を比較します。
利用者さんにケアをしているときに、こうした意識をすることは少ないと思いますが、介護に悩んだ時に見直すことで、振り返りや分析に役立ちます。
シングル・システム・デザイン法では、一定期間、継続的に測定する必要があり、測定期間中に支援を中止する必要はありません。
まとめ
介護の質を高めることは大切です。
そのためには、感覚だけではなく、数値として「見える化」し、支援が適切であったかを確認する。
こうした取り組みが、今後は当たり前になってくるかもしれません。
本日もありがとうございました。