ツナガレ介護福祉ケア

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家族信託と成年後見人のメリットとデメリット・上手な資産管理と相続対策とは~ツナガレケア

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認知症資産「215兆円」時代へ

高齢社会の今、多発しているのが巨額な「認知症マネー」をめぐるトラブルです。第一生命経済研究所によると、認知症患者の金融資産は2030年度には「215兆円」に膨れ上がるといいます。そしてこの莫大な資産が凍結される問題が指摘されています。

一般的に認知症になるとお金を使うという意思表示が難しくなります。そして判断能力なしと診断されると資産は凍結。つまりおカネをおろせなくなる可能性は高いです。家族が認知症になり、資産が“凍結”されないためには、どのような手を打っておけばいいのでしょう。

 

認知症で資産凍結のケース

親が認知症になり、銀行口座が凍結され「預貯金を引き出せない」「実家を売ることができない」というケースが増えています。認知症が進めば介護費用は膨らんでいきます。当事者の預貯金をおろせない状況は家族にとって切実な問題です。

例えば要介護度で介護施設に入所した場合、費用は月15万~40万円近くかかることもあります。加えて入居金は一人当たり数百万円~数千万円に上ることも珍しくありません。特養や老健であればそれほどかかりませんが、比較的入居しやすいサービス付き高齢者住宅であれば相応の出費は覚悟しなくてはいけません。その時、あてにしていた預貯金が凍結されて手続きに時間がかかれば家族の負担は大きくなります。

しかし 突然、認知症になることは殆どありません。予兆ともいうべき症状があります。そのサインを見逃さないことが大切です。そうした兆候が見られた時には予め準備をしておくと最悪の事態は防げます。

家族信託の5つのメリットとは

親が元気なうちに財産の運用や管理の方法を話し合い、信用する家族に委託する契約を結ぶのが「家族信託」です。家族信託を行えば、財産の所有権は子どもに移転されるので、親が認知症になっても自宅などの売却は行えます。

また認知症が進む前に契約するので資産が凍結状態になることはありません。しかも家族信託には贈与税がかかりません(生前贈与では多額の贈与税が発生します)。各保険会社も家族信託には力を入れています。認知症になる前の有用な手段として注目される「家族信託」ですが、その5つのメリットをまとめてみました。

  1. 生前贈与と比べると非常にリーズナブルにできる。
  2. いつでも開始できる。
  3. 親が認知症になっても「意思確認手続き」が本人に行われないので、事実上「資産凍結」されることはない。
  4. 遺言の代わりに使える。本人が死亡しても相続者(継承人)を契約書の中で指定できる。
  5. 子供から孫への相続(二次相続)がコントロールできる。

家族信託の4つのデメリット

家族信託にもデメリットはあります。なんといっても一番は費用です。ほかにも家族信託における4つのデメリットをまとめてみました。

  1. 裁判所などの公的機関が監督していないので不正が発覚しづらい。
  2. 専門家が少ない。
  3. 一般的に費用が60~70万円かかる。
  4. 親への説得が難しい

家族信託の専門家も増えていけば手続き費用も低くなっていくと思いますが、現在はそれほど安くありません。また生前贈与ほど費用はかかりませんが、それでも専門家に依頼すると相応の出費がかかります。

家族信託の課題

実際に家族信託の手続きを進めていく上でネックになるのが当事者への説得です。家族信託は「遺言」とは違いますが、家族に言い出せないケースは多いです。認知症について家族で話し合いをしても「まだ認知症じゃない」「年寄扱いするのか」など、もめるケースも少なくありません。重要なのはタイミングと切り出し方です。「もし介護が必要になったときのお金の使い方や、管理の仕方を決めたい」と相談形式で進めるのも効果的です。

無料のセミナーに家族で参加してみるのもひとつの手です。第三者の専門家から客観的な話を聞くとスムーズに話が進むことがあります。親しいからこそ言いずらいことはあります。家族とはいえお金が絡むことだけに慎重な対応が必要になります。

成年後見人のメリットとデメリット

認知症になった家族の資産管理に成年後見人を立てる方法もあります。むしろこちらの方が一般的かもしれません。成年後見制度は、認知症など判断能力がなくなった人の資産を管理する方法として知られています。簡単にいえば、備える準備ができずに家族が認知症になった場合に資産を管理する方法です。

成年後見制度では「財産管理」や「身上監護」ができます。「身上監護」とは病院や介護保険、施設入所や退所等に関する「身の上」の手続きをすることをいいます。多くのご家族がこの成年後見制度を利用していますがメリット、デメリットもあります。

成年後見制度の3つのメリット

認知症になった場合、正常な判断をすることは難しくなります。そこで心配されるのが悪質な訪問販売や詐欺被害です。「成年後見制度」はこうしたトラブルを防ぎます。主に3つのメリットがあります。

  1. 後見人によって財産を安心安全に管理処分できる。
  2. 業者に騙されて不利な契約をしても、取り消せる。
  3. 親族などによる財産の使い込みを防ぐことができる。

オレオレ詐欺、なりすまし詐欺など悪質業者は巧妙な手口で高齢者を狙います。個人的には認知症と診断される前が、詐欺グループのカモにされる危険性が高いように思います。認知症傾向の高齢者は「オレオレ、分かるでしょ?」と電話口から話されると「わかるよ。どうしたの?」と本能的に答えてしまいます。そして騙されても恥ずかしくで相談できないケースは少なくありません。

後見人制度の4つのデメリット

現在、後見人は認知症になった方の家族ではなく専門家がつく可能性が高いです。家族同士だと金銭トラブルが発生しやすい側面があります。ただし弁護士などの専門家が後見人となった場合、月額の費用を支払う必要があります。4つのデメリットをまとめてみました。

  1. 当事者の判断能力が不十分と言える程度に低下することが必要。
  2. 手続きに時間がかかる(家庭裁判所の面談等)
  3. 家族ではなく、専門職後見人や成年後見監督人がつく可能性がある。
  4. 上記3が付く場合、月額の費用が発生する。

家族ではなく専門後見人などがつく場合、手続きは結構大変です。親の資産を第三者が管理するので自由にはなりません。それだけに財産が守られる訳ですが……。第三者が後見人になった場合のコストは月額数万円といわれています。これは認知症になった親が亡くなるまで払い続けなければなりません。また家の処分にも家庭裁判所の判断が必要になるなど手間と時間はかかります。

まとめ

家族が認知症になった場合、成年後見制度は第三者が管理する方法として確立されています。しかし家の処分ひとつとっても家庭裁判所の判断が必要で、手続きに手間や時間はかかります。また月々の費用がかかり、一度はじめたら途中でやめることはできないことは知っておきたい情報です。

認知症の資産凍結問題が注目されていくと「家族信託」を利用する人は増えていくかもしれません。しかし家族信託は公的機関が監督していないためトラブルが起こる危険性はあります。比較的新しい制度なので専門家が少なく相談する窓口が限られているなどの課題もあります。

どちらも一長一短ですが、家族が認知症になり「資産凍結」という最悪の事態に陥らないためにも、早めの備えは必要かもしれませんね。本日もありがとうございました。