ペットと暮らせる介護施設が増えています。高級老人ホームではサービスとしてペット可のところも多くなっています。しかし、行政が運営している老人ホームではまだまだ珍しいかもしれません。この記事ではペットがもたらすメリットとデメリットをまとめてみます。
特養老人ホーム「さくらの里」
特養老人ホーム「さくらの里」では、2012年4月からペット共存型の施設運営をしています。看板犬とかセラピー犬などの動物を飼っている施設はありますが、ペットと一緒に暮らせる施設はまだまだ少ないです。この施設ではペットが利用者様に数々の奇跡を起こしたといいます。
認知症〜奇跡の物語とは
介護施設で飼い主と暮らすペットは様々な奇跡を起こします。認知症の70代の女性を救ったのは、愛犬のプードルでした。旦那さんを亡くして一人暮らしをしていた女性にとってペットは子供以上の存在。施設での寂しさや悲しさを癒してくれる大切な存在でした。
複雑骨折で入院
入所して1年後。女性は廊下で転倒して大腿部を複雑骨折し入院することに。3ヶ月後、退院して施設に戻りましたがペットの存在を忘れてしまうほど認知症が進んでいました。「ペロペロ」と愛犬が手を舐めても不思議そうな顔で見ているだけ。昔のように笑顔で呼びかけることはありません。入院前と比べて元気のなくなった女性を心配するスタッフ。愛犬との思い出を伝えますが、反応はありませんでした。
女性の変化
それでも愛犬は毎日、女性のもとに駆け寄ります。いつか思い出してくれると信じているように、クンクンと寄り添い続けました。そんなある日、女性に変化が起こります。愛犬がベッドに上がると、これまで無反応だったサ手の先が動き出しました。そして笑顔で優しくなで続けました。大好きな愛犬の名前を呼びながら、、、。
幸せホルモン「オキシトシン」
なぜ認知症の女性が愛犬の名前を思い出せたのか?科学的な裏付けとされるのが、幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」の存在です。オキシトシンは母親が子供と触れ合うときに分泌されるホルモンで、ストレスを軽減し多幸感を与えてくれることでも知られています。実はオキシトシンはペットと見つめあっていると通常の3倍も分泌量が増えるそうです。認知症が進んだ女性が起こした奇跡には、このオキトシンが関係しているのではないかと専門家はみています。
ファシリティドッグ
小児医療の現場でもワンちゃんは活躍してます。これらは「ファシリティドッグ」と呼ばれて病院に常駐し、入院生活でストレスを抱えている子供に寄り添いながら闘病生活を支えています。海外では病院や教育機関などでも活躍しているファシリティドッグですが、日本で導入している施設は少ないです。ペットの癒しの効果については、残念ながら日本はまだまだ遅れています。
介護ペットでQOLが改善
介護施設は利用者の「QOL 」(Quality Of Life=生活の質)を向上させる場所でもあります。ペットは生活の質を高めるのにも、一役かってくれます。ある認知症の80代の女性は不眠症に悩んでいました。夜になると怖い夢で起きてしまうのです。そこでスタッフは上層部に掛け合い、愛犬と眠ることを許してもらいました。そしてペットと眠れることになった女性は安心したのか、不眠症は改善したそうです。
人手不足の解消へ
ペットと暮らせる介護施設では人材募集をした際に職員が集まりやすいそうです。ペットのお世話などで職員の負担が多くなるので敬遠されると思いがちですが、逆に「それでもいいから働きたい」というスタッフが集まってくるそうです。
ペットのデメリットは?
介護施設でペットと暮らすデメリットに、飼い主がペットより先に亡くなるケースがあります。飼い主に先立たれた場合、親族の元に引き取られるケースと、施設で暮らし続けるケースがあるそうです。施設でペットを育てる場合、エサ代もかかります。最悪の事態も想定して事前に話し合っておくことは必要です。最近では「ペット信託」というサービスもあるそうなのでチェックしておくと良いかもしれません。
まとめ
今後、介護が必要になるのは団塊の世代のシニアです。この世代はペットと暮らしている方も多いため「ペットOK」の介護施設のニーズは高まりそうです。その際は入所前に施設側とペットの取り扱いについてしっかり話し合っておくことが重要かもしれません。本日もありがとうございました。